• 公開日:2026.02.02
2025年CDP評価で日本企業が躍進 環境分野で世界をリードする存在に
  • 茂木 澄花

企業や自治体による環境への取り組みを評価する国際的な非営利団体CDPはこのほど、2025年の各企業のスコアと、最高評価である「A」を獲得した企業のリストを公表した。日本企業は「気候変動」「森林保全」「水セキュリティ」全ての分野で健闘し、243社がいずれかの分野でA評価を獲得した。また、開示企業の傾向などを分析した報告書「コーポレート・ヘルスチェック」も発表された。この中で、高い透明性と卓越した実績を認められた「リーダーシップレベル」に達した割合は、日本企業が世界トップだった。

日本、A評価企業の割合が世界トップタイ

CDPは毎年、評価対象となる企業に「気候変動」「森林保全」「水セキュリティ」の3分野について質問票を送り、その回答を基に分析・評価している。2025年は、世界の時価総額の半分以上に当たる約2万2100社が回答した。2024年の約2万4800社と比べると減少したが、CDPは「企業や自治体から提供される高品質な環境データに対する世界的な需要は依然として高いままだ」と強調する。

各企業の2025年のスコアと「Aリスト」は1月8日に公表された。Aリストとは「気候変動」「森林保全」「水セキュリティ」のいずれかで、最高評価である「A」を獲得した企業の一覧で、2025年は全世界で877社だった。そのうち243社は日本企業で、スコアを付与された日本企業の12%に当たる。この割合は、トルコ・フランスと並んで世界最高だった。続いてポルトガル・スペインの9%、台湾の8%が高く、アジアと欧州の存在感が目立った。

さらに3分野全てで「A」を獲得した「トリプルA」の企業は、全世界で23社だった。そのうち日本企業は、大和ハウス工業、積水ハウス、豊田通商の3社だ。

積水ハウスは、2023年以来2度目のトリプルA選定となった。同社は、A評価獲得につながったとみられる取り組みについてウェブサイトで説明している。気候変動分野では、SBTiなど国際イニシアチブへの参画、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みに沿った情報開示などが挙げられている。また、エネルギー消費量の収支を実質ゼロ以下にする住宅「ZEH(ゼッチ:net Zero Energy House)」の普及も評価されたと見る。森林保全分野では、独自の木材調達ガイドラインにのっとり、森林減少や土地転換のない木材調達を目指している。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の指針に沿った情報開示も評価につながったようだ。水セキュリティについては、生産拠点で循環水の利用などに取り組んでいるという。

欧州を抑えトップに、日本企業の取り組みに高評価

1月14日には、報告書「CDPコーポレート・ヘルスチェック2026」も発表された。世界的なコンサルティング会社であるオリバー・ワイマンとCDPが共同で2025年から年に一度作成しているもので、今回が2度目の発行となる。同報告書では、2025年にCDPの質問票の全項目に回答した1万397社を下記の4段階に分類し、分析している。

  • レベル1:開示(Disclosure)

環境に対する取り組みを始めているが、開示内容が不十分である

  • レベル2:認識(Awareness)

環境問題が自社の事業とどう関連しているかを認識している

  • レベル3:管理(Management)

適切な環境マネジメントの取り組みを実行している

  • レベル4:リーダーシップ(Leadership)

環境問題に関して、高い透明性と卓越した実績を有する

対象となった日本企業のうち、気候変動対策で「リーダーシップ」のレベルに分類された企業は22%で、これは世界最高の割合だった。2位以下は、英国(17%)、EU(16%)、インド(11%)と続く。中国は8%、米国は5%にとどまった。また、森林保全、水セキュリティを含めた全分野を合わせても、対象となった日本企業の10%以上がリーダーシップレベルとなっており、こちらも世界一の割合だ。こうしたことから、報告書は「日本がリーダーとして台頭している」と評価する。

また同報告書によれば、日本企業は、気候変動や自然保護の課題に関連した機会をつかむことで、直近1年で約760億ドルを生み出したという。主な要因としては、売り上げの増加、新規市場開拓、グリーンボンドなどの金融商品がある。

業種別に見ると、気候変動と水セキュリティに関する情報開示企業数が特に多かったのが製造業で、リーダーシップレベルに分類された日本企業の3分の1が製造業だった。気候変動に関してリーダーシップレベルの企業の割合が高かった業種は、金融サービス(40%)、バイオテクノロジー・医療・製薬(33%)、インフラ(29%)、アパレル(29%)だ。

日本企業のこうした躍進について、ロイターがCDPのシェリー・マデーラCEOの見解を紹介している。日本企業の「細部への注意を重視する」ビジネス文化に加え、SBTi認定企業数が世界最多であることが背景にあると、同氏は見ているという。

環境リーダーシップ企業、4つの特徴

コーポレート・ヘルスチェックでは、環境分野でリーダーシップを取っている企業に見られる4つの具体的な特徴がまとめられている。

①役員報酬を、環境に関する実績と連動させている

気候変動分野でリーダーシップレベルに属する企業では、経営陣の報酬を環境に関する実績と連動させている割合が100%だったという。また、森林保全と水セキュリティのリーダー企業でも78%が同様の措置を講じている。リーダーシップレベル以外の企業におけるこの割合は、気候変動分野で32%、森林保全で20%、水セキュリティで18%と比較的低かった。

②環境への依存と影響、リスクと機会を管理する強固なプロセスがある

自社の事業とサプライチェーンの両方をカバーする強固なプロセスを有する割合は、気候変動分野のリーダー企業で83%、森林保全のリーダー企業で93%、水セキュリティのリーダー企業で90%だった。リーダーシップレベル以外の企業におけるこの割合は、気候変動分野で33%、森林保全で27%、水セキュリティで24%と比較的低かった。

③1.5度目標に沿った気候移行計画と野心的な環境目標がある

信頼性の高い気候移行計画を策定している割合は、リーダー企業で約90%だったのに対し、下位3レベルでは37%にとどまった。さらに、移行計画を策定している企業の中で、1.5度目標に沿った全社的な排出削減目標を有する割合はリーダー企業で93%、それ以外では36%だった。

④バリューチェーンに関与している

顧客・サプライヤーの両方と関わりを持っている割合は、気候変動分野のリーダー企業で97%、森林保全分野のリーダー企業で91%、水セキュリティ分野のリーダー企業で98%と非常に高かった。一方、リーダーシップレベル以外の企業でも83%がバリューチェーンと関わりを持っており、メリットが広く認知されていることが分かった。

 

2025年は世界的に、気候変動対策や環境保全の取り組みに逆風が吹いた1年だった。しかし、これらをリードする企業の取り組みは経済的な利益にも結び付いている。リスクを可視化し、事業成長の機会を見つけられるためだ。米国企業が厳しい状況に置かれる中、今後も日本企業のリーダーシップが期待される。

参照サイト

CDP
https://www.cdp.net/en

積水ハウス
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/topics_2025/20251212

ロイター
https://www.reuters.com/sustainability/cop/japanese-companies-lead-climate-leadership-cdp-data-shows-2026-01-14
https://www.reuters.com/sustainability/sustainable-switch-climate-focus-celebrating-companies-still-prioritizing-2026-01-17

written by

茂木 澄花 (もぎ・すみか)

フリーランス翻訳者(英⇔日)、ライター。 ビジネスとサステナビリティ分野が専門で、ビジネス文書やウェブ記事、出版物などの翻訳やその周辺業務を手掛ける。

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