
2009年にドイツ・ベルリンでスタートした、利益の100%を地球のために還元する検索エンジン「Ecosia(エコジア)」が2025年末に検索インターフェースの日本語(版)をローンチした。このユニークな検索エンジンは、検索広告から得られる利益を植林や再生可能エネルギーに活用し、これまでに世界中で2億4000万本以上の木を植え、カーボンネガティブで運営されている。Ecosiaは収益や植林数などを公開して、事業の透明性を徹底するとともに、環境負荷を抑えたAIの提供も行っている。今回の日本語版導入は、昨年末に施行された「スマホ新法」(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)による規制改革を見据えたものだ。創業者であるクリスチャン・クロルCEOにEcosiaのビジネスモデルの革新性、持続可能性などについて聞いた。(環境ライター 箕輪弥生)
利益の100%を気候変動対策へ投資するビジネスモデル
AIなどの検索エンジンが膨大なエネルギー利用を伴うことが問題視される一方で、Ecosiaは、カーボンネガティブを実現している。同社によれば、再生可能エネルギーを必要量の2倍生産し、植林による炭素固定を行っていることから、利用者が1回検索するごとに大気中からおよそ0.5kgのCO2が除去されるとしている。

Ecosiaのビジネスモデルとして最も革新的な点についてクロルCEOに聞くと、「利益の100%を地球のために使うという選択。そして植林、グリーンエネルギーへの投資、重要な生物多様性ホットスポットの保護」という答えが返ってきた。
そもそもEcosiaは、クロルCEOが大学卒業後の旅行中に、環境と人々の暮らしにとって樹木が持つ重要性を目の当たりにして、収益を植樹と再エネプロジェクトに寄付する検索エンジンのアイデアを思いつき、ベルリンの自宅アパートで起業した。検索エンジンは収益性が高いことが分かっていたからだ。
基本的な収益構造は他の検索エンジンと同様で、Ecosiaではユーザーが検索結果に表示される広告をクリックすることで収益を得ている。そこから運営費などを除いた利益の100%が気候変動対策に使われ、世界35カ国以上での植樹や森林保護活動などに充てられている。
その使い道については、毎月ウェブサイトで利用者に向けて公開されている。例えば2025年11月のレポートを見ると、気候変動対策に約151万8000ユーロが使われ、そのうち植林には約99万3000ユーロ(430万本の植林)、再エネや再生型農業などに約52万4000ユーロが充てられていることが分かる。もちろん、運営のためのコストも可視化されている。
<例:Ecosia2025年11月のファイナンシャルレポート>

https://blog.ecosia.org/ecosia-financial-reports-tree-planting-receipts/
このようにEcosiaが収益や支出を公開している理由について、クロルCEOは「私たちのミッションを信頼して使い続けてくれているユーザーのためであると同時に、利益を社会のために使うことが企業の成功を妨げるものではないことを業界に証明するためだ」と説明する。
現在、同サイトには世界で約2000万人のアクティブユーザーが存在し、2025年10月には2億2700万回のアクセス(SimilarWeb調べ)が記録されている。
専門の植林チームを編成し、世界で木を植える

2025年8月までに、Ecosiaは35カ国以上で2億4000万本以上の植林を支援しており、平均すると0.8秒ごとに1本の木を植えている計算になる。マダガスカル、ブラジル、トーゴ、ウガンダ、マリが支援先の上位5カ国である。支援地域や植林方法についても、最大の効果が得られるよう選定しているという。
「Ecosiaには森林・自然保護やソーシャルビジネスの専門家、経済学者、社会科学者から成る専任のツリーチームがある。専門知識を生かすと同時に地域社会と連携し、最適な樹種を植えることに注力している。なお、生物多様性を重視するため単一樹種の植林は行っていない」とクロルCEOは話す。
気候変動対策の中でも植林を中核に据えている理由については、「植林は、炭素を固定するだけでなく、生態系を守り、支えることにつながるから」と説明する。
「実際、在来種の最適な樹種が植えられた場所では、農家の収穫量が増えたり、水リスクが低減したり、野生動物が森に戻ってくるなどの効果を確認してきた」とクロルCEOはその効果を評価する。
植林後も、最低3年間は、衛星技術、ジオタグ(GPS座標)、写真、現地訪問を通じてモニタリングを行い、その効果を確認しているという。
検索やAIに関わる電力は再生可能エネルギーを利用

Ecosiaは再エネへの投資も積極的だ。2017年から太陽光発電所の建設を進め、現在は専用の太陽光発電パーク、商業施設の屋上設置、そしてドイツにおける住宅用システムへのソーラー設置などを行い、同サイトでの全ての検索に必要な電力の2倍以上のエネルギーを生産している。
その理由は明解だ。「化石燃料への依存から脱却するために、価格が手ごろになった太陽光や風力発電を活用することは、極めて自然な選択だった」
さらに、Ecosiaは技術開発においても独自の道を探っている。Googleなどの大手検索エンジンに依存しない「EUSP(European Search Perspective)」と呼ばれる検索インフラを構築し、環境負荷の少ないAIの提供を昨年12月から開始した。
この点についてクロルCEOは、「AIの性能と効率のバランスを取るため、意図的に小さく高速なモデルを使用し、動画生成のようなエネルギー集約型の機能は避けている」と説明する。
AI機能が消費するよりも多くの再エネを生み出しているため、利用者は環境負荷を心配する必要はなさそうだ。
また、企業としても非営利目的のみとする法的契約を結んでおり、ドイツ初の「Bコーポレーション」に認定されていることからも、持続可能性や社会貢献を重視する企業だということが証明されている。
Ecosiaは単なる社会貢献活動を超え、検索エンジンという日常的に使われるデジタルプラットフォームを通じて環境投資に結び付ける「プロフィット・フォー・プラネット」を確実に実現している。
| 参照サイト Ecosia:https://www.ecosia.org/ |
箕輪 弥生 (みのわ・やよい)
環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/














