• 公開日:2025.12.24
第26回グリーン購入大賞 スーパーホテルやスタートアップのamuなどが受賞
  • 眞崎 裕史

「持続可能な調達」を通じて、グリーン市場の拡大やSDGsの目標達成に寄与する取り組みを表彰する「グリーン購入大賞」の2025年度の受賞企業・団体がこのほど決定した。宿泊に伴うCO2排出量をカーボンオフセットする活動を実践するスーパーホテルに加え、スタートアップのamuと一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会が大賞・大臣賞を受賞。2025年12月17日に都内で表彰式が開かれ、受賞した計13団体がさらなる活動の拡大を誓った。 

「波及力の高いモデル」に期待 

グリーン購入ネットワーク(GPN)の主催で、今年で26回目。審査委員長を務めたGPN会長の梅田靖氏は、今回の応募傾向としてカーボンニュートラルの深化や、プラスチックを中心とした資源循環の広がりを指摘。漁網や生コンクリートの再資源化、園芸用土の水平リサイクルなど、多角的な事例が登場している点に触れ、「原材料調達における自然環境や生産者の権利への配慮は、サプライチェーン全体の環境負荷削減において最も重要なポイントの一つ」と総括した。 

また、新たなビジネスに挑むスタートアップの台頭や、自治体間の共同調達といった「波及力の高いモデル」が示されたことにも期待感を示した。 

25年の歩みが結実した「21世紀型のラグジュアリー」

大賞・環境大臣賞 スーパーホテル(大企業部門) 

国内176店舗を展開するスーパーホテルは、年間700万人以上の宿泊客とともに取り組む脱炭素プロジェクト「CO2実質ゼロ泊」を実践している。同社の活動は、2000年に熊本県水俣市での気付きから始まったという。当時は「非日常のぜいたく」こそがホテルの価値とされていたが、同社は「省資源・省エネルギーこそが21世紀型のラグジュアリーである」というパラダイムシフトを提唱。再生可能エネルギーの活用やカーボンオフセットにより、顧客が宿泊するだけで環境保全に寄与できる仕組みを構築した。 

代表取締役社長の山本健策氏は「サービス業において技術革新による大幅なCO2削減は難しいが、お客さまとの小さなグリーン選択の積み重ねが、大きな未来社会の形成につながっていくと信じている」と語り、この取り組みを業界のスタンダードにしたいという決意を込めた。 

「環境にいい」を「欲しい」に変える事業戦略 

大賞・経済産業大臣賞 amu(中小企業部門) 

amuは、宮城県気仙沼市を拠点に廃棄漁網のリサイクルを手掛けるスタートアップだ。同社のスタンスは明快で、「『環境にいい』だけでは売れない」という前提に立つ。代表取締役CEOの加藤広大氏は「右脳に語りかけて左脳で深める」というブランド戦略を掲げる。まずはデザインやクリエイティブを通じて「かわいい、欲しい」という直感的な欲求(右脳)に訴えかけ、手に取った後に製品タグを通じて「実は魚網からできている」という背景(左脳)を理解してもらうストーリーだ。 

気仙沼の4歳の女の子が同社のトートバッグを「かわいい」と手に取ったエピソードを引き合いに、加藤氏は「魚網だから買うという人はほぼいない。事業として成功し、商売を成立させることがグリーン購入の拡大につながる」と力説した。 

未来のシェフが描く「ネイチャーポジティブ」 

大賞・農林水産大臣賞 日本サステイナブル・レストラン協会(農林水産特別部門) 

一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会は、30歳以下の若手料理人を対象とした「未来のレシピコンテスト」などを通じて、サステナブルな食の普及と次世代育成を推進。代表理事の下田屋毅氏は「飲食店やシェフがサステナビリティをどう進めればいいか悩む中で、おいしさと環境配慮を両立させる教育の場が必要だった」と振り返る。 

コンテストではレシピだけでなく、調達や社会貢献といった多角的な基準(FOOD MADE GOODスタンダード)をベースに評価を行う。全国の調理専門学校と連携する考えを示した下田屋氏は「若手の方々がサステナビリティを理解し、ネイチャーポジティブにつなげていく流れを作りたい」と、食の未来を担う人材育成へ意気込んだ。

表彰式ではこのほか、「今日いただいた賞は通過点」「志を同じくする同志がいることに感動した」といった声が相次いだ。 

上記以外の受賞結果は次の通り。 

【大賞】 
・国際航業(大企業部門) 
・三和石産(中小企業部門) 
・雪ヶ谷化学工業(中小企業部門) 
・カインズ(農林水産特別部門) 

【優秀賞】 
・セイコーエプソン(大企業部門) 
・八千代エンジニヤリング(大企業部門) 
・ウッドプラスチックテクノロジー(中小企業部門)  
・奈良県地域デジタル化推進協議会(行政・民間団体部門)  
・山形市(行政・民間団体部門)  
・ナチュラファーム(農林水産特別部門) 

written by

眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。

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