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約80000000本。
日本で1年間に消費され、そのほとんどが廃棄されてしまうビニール傘の本数である。ビニール傘は分解することが難しいため、リサイクルではなく、その多くが埋め立てや焼却処分されており、世界的な環境課題となっているプラスチック廃棄問題の一要因にもなっている。
この「PLASTIC」の問題を抱える 「CITY」にフォーカスを当て、今後解決されるべき環境問題が近い将来に解決されるという思いを込めて「10年後になくなるべきブランド」を宣言し、2020年に誕生したのが「PLASTICITY」。廃棄されたビニール傘を再利用するアップサイクルブランドだ。
廃材を使ったモノづくり
PLASTICITYを展開するモンドデザイン(東京都・港区)は、「日本にも環境にもやさしいデザイン」をコンセプトとする。商品やサービスを通じて驚きや喜び、感動を提供し、環境や社会に貢献できる企業を目指すという理念のもと、洗練されたデザインと機能を持つリサイクル商品を提供している。代表的な「SEAL」は、廃棄されるであろう素材を見つけ出し、リサイクルして、再び商品として再利用するブランドだ。モンドデザインの長谷川雛氏にお話を伺った。
「モンドデザインは2006年に設立し、2007年にSEALを立ち上げました。代表の堀池(洋平氏)がもともと廃材でモノをつくることを考えており、タイヤチューブやトラックの幌(ほろ)など、いろいろな素材を検討した中で、鞄(かばん)をつくる場合は防水性や耐久性など、使用時の機能的な部分にもマッチしているタイヤチューブを選びました。
PLASTICITYは2020年にスタートした、ビニール傘を再利用した商品ブランドです。もともとは、ある女性デザイナーがビニール傘で生地をつくって作品を制作されており、私たちの理念と合致する部分があったことで商品量産化の話が進みました。リサイクルとは違って、アップサイクルの商品は素材そのものを使って新しく生まれ変わらせるので、考え方はSEALと同じです」
独自の素材と職人の技が光る
PLASTICITYにはさまざまなデザインの鞄や小物があるが、その素材は廃棄されたビニール傘だ。材質やサイズ、厚みの異なる素材を人の手で選別、解体、洗浄し、生地として再生させ、商品に使わない骨部分はリサイクルに戻される。

再生した生地は傘の形のまま何層にも重ねられ、1mm以下の精度で独自のプレスを行うことで、窓ガラスに流れる雨のような表情が現れる。雨の日のCITYらしい表情を持つこの生地が「GLASS RAIN」だ。傘の持つ防水性や汚れに強い特性は残り、すりガラスのように淡く光を通す乳白色の素材になっている。


廃材からつくられるGLASS RAINはそれぞれ大きさが異なるため、素材の使いどころを見極めながら、すべて手作業で検品、裁断されている。しかもビニール傘の部位により厚さも異なることから、熟練した技術が必要となり、一針ごとに慎重な縫製も行っているという。回収される傘は多くとも、生み出せる商品は少ないのが現状だが、人が安心して毎日使う商品を届けるには必要な工程で、すべて日本国内でつくられている。
「アップサイクル商品といっても、高品質はもちろん、適正な価格で、しかもデザイン性にも優れたものをお届けしたいと思っています。それを実現するには、各生産工程でプロフェッショナルな技術を持つ人たちと連携しなければなりません。原材料となるビニール傘は、駅や商業施設で忘れ物となり廃棄処分されてしまう傘を中心に回収し、埼玉県の工場で傘の分解、洗浄作業を行っています。ビニール部分の生地は、栃木県の工場でプレスされ、GLASS RAINがつくられます。東京都の縫製工場ではGLASS RAINを検品して、パターンを考え、裁断し、縫製を行います。どの工程にも職人の技が必要なのです」
安心して使ってもらうための品質を担保する商品と、それをつくる側も幸せになれるものづくりを目指すPLASTICITY。可能な限り環境負荷のかからない生産方法を選択し、つくり手の労働環境にも配慮しながら、素材づくりから縫製まで動物性の素材や副資材も一切使用していない。一つひとつに人の感覚と想いを込めながら、使われなくなったビニール傘がPLASTICITYの商品に生まれ変わっていく。
なくなるべきブランドを目指す


今後の課題は、PLASTICITYがあるからビニール傘を廃棄しても良いとか、再利用されるから大丈夫とするのではなく、ゴミを減らすことが一番の目的だということを、なるべく多くの人に知ってもらうこと。そして、課題に対してどう行動すべきか、どんな取り組みができるのかをさまざまなパートナーとともに一緒に考えたり、未来を担う子どもたちの教育に少しでも関わっていきたいという。
「廃棄される傘の量は相変わらず多く、しかも新品同様のものが多いのです。また、PLASTICITYの取り組みに賛同していただくのは嬉しいのですが、逆に、PLASTICITYに傘を送ったら資源が循環され無駄にならずに良いとされては、そもそもの目的である廃棄量を減らすことから離れていってしまいます。
私たちは廃棄されるビニール傘を減らしたいと思って、それを使った商品を世に送り出していますが、それだけの行動だと十分ではないことも分かってきました。PLASTICITYを知っていただき、プラスチック廃棄量を減らすことが重要だというメッセージを多くの方々に伝えること、その取り組みを一緒に広げていけるパートナーと協働することが必要だと感じています」
今では、企業や団体などから回収された傘を受け入れる際は、傘を受け取るだけではなく、何か還元できるものを一緒につくる取り組みをしたり、中学生のSDGsに関する授業の一環で、解体してもらった傘の素材を使ってオリジナルグッズをつくるというプロジェクトも進行しているそうだ。
いろいろな可能性を探り、少しずつでも実現していけば、いつかは素材が手に入らなくなり、本当になくなるべきブランドになるのかもしれない。
| 【参照サイト】 PLASTICITY https://plasticity.co.jp/ モンドデザイン https://www.mondodesign.jp/ |














