
キリンビールとセブンイレブン・ジャパンは、「キリン 氷結mottainai」シリーズ初となるコラボレーション商品「氷結mottainai キウイのたまご」を共同開発した。同商品は9月24日から全国のセブンイレブン、イトーヨーカドー、ヨーク、ヨークベニマルなどの店舗で期間限定発売される。
セブンイレブンが、新商品の原材料候補となる規格外果実を同社のネットワークからリサーチし、香川県の特産「キウイのたまご」に注目。キリンビールとともにフレーバーを開発した。企業の垣根を越えて果実のフードロス削減と農家支援を目指す「モッタイナイ!を、おいしい!に。プロジェクト」での協働事例となり、今後も取り組みの拡大が期待される。
好調なシリーズ販売、ブランドイメージにも寄与
キリンビールが展開する「氷結mottainai」シリーズは、気候変動や後継者不足といった課題を抱える果実農家を支援するため、味に問題がなくとも形や傷などが理由で廃棄されてしまう規格外果実をチューハイとして生まれ変わらせる取り組み。商品の売上1本につき1円が日本の果実農家支援のために活用される仕組みも導入されている。
2025年6月に発売されたシリーズ第3弾「尾花沢すいか」は、チューハイとしては珍しいフレーバーが話題を呼び、発売初週で販売目標を達成。また、2024年に続き2025年にも再発売された「浜なし」は2年連続で販売目標を達成するなど、シリーズは大きな成功を収めている。
キリンビールマーケティング部の加藤麻理子ブランドマネージャーによると、これらの商品は特に若年層からの支持が厚く、20~30代の購入者比率が他の「氷結」商品平均と比較して約2倍に上る。さらに、「氷結mottainai」の認知者は非認知者に比べて氷結ブランドへの好意度が約2倍高く、シリーズの展開がブランド全体のイメージ向上にも寄与しているという。

こうした成功を受け、同社は引き続き単独で商品開発を進める一方で、企業間の協働による「モッタイナイ!を、おいしい!に。プロジェクト」にも注力。一社だけでは商品化が難しかった果実にも光を当て、フードロス削減の取り組みを加速させることを目指している。加藤ブランドマネージャーは、「取り組みの輪を拡大していくことで、社会課題の自分ごと化につなげたい」と語る。プロジェクトは2027年までに年間250トンの規格外果実削減、延べ1200万人の顧客と100軒の生産者の参加を目標に掲げている。
セブンイレブンの生産者ネットワークと販売網を活用
今回の新商品は、こうした企業コラボレーションの第1弾。セブンイレブン・ジャパン商品本部の畠中拓志マーチャンダイザーは「農家の皆さんが心を込めて育てられた果実を生かす取り組みに大きな価値を感じ、是非ご一緒させていただきたいと考えた」と経緯を語る。
キーフルーツとなった香川特産のブランドキウイ「キウイのたまご」の発見は、セブンイレブンが持つ全国の生産者との強固なネットワークによって実現したものだ。キリンビールマーケティング部の山岡加菜・氷結ブランドマネージャーも、「キリンビールだけの販路では、『キウイのたまご』に出会うことはできなかった。セブンイレブンさんだからこそ見つけられた」と連携の価値を述べた。

「キウイのたまご」は、香川県で有機肥料のみを使って栽培される希少なブランドキウイ。一口サイズのかわいらしい見た目で、手で割ってブドウのように吸って食べることができる。味わいは酸味が少なく、上品な甘さが楽しめるのが特徴だが、年間約40トンの生産量のうち、約10トンが規格外となってしまう現状もある。
その理由には、生産者が高い品質基準を設けていることと、気候変動による高温化と年間降雨量の不足、ゲリラ豪雨などが挙げられる。少しでも形がいびつなものや、表面に傷があるもの、そして収穫後や輸送中に柔らかくなってしまった「軟化果実」は、味に問題がなくとも廃棄されてしまう。

生産者であるキウイバードコーポレーションの島田満沖代表は、「食べればおいしいのに捨てないといけない。生産者としてこれ以上の苦しみはない」と胸の内を明かす。その上で、「今回のお話をいただき、飛び上がるほどうれしかった。果物を再び陽(ひ)の当たる場所へ導いていただけることに感謝している」と商品化の喜びを語った。
こだわりの新商品と未来への展望
「氷結mottainai キウイのたまご」は、この希少なキウイの魅力を最大限に引き出すことに注力して開発され、セブンイレブン側も商品開発に参加。味わいはもちろん、パッケージデザインにも意見を反映させ、キウイのイラストや特徴を伝えるコピーを盛り込むなど、キリンビールと共同で商品を磨き上げた。17万ケース分の販売を予定しており、「キウイのたまご」約16万個分に相当する約5.7トン分のフードロス削減、そして約370万円の農家への寄付を目指す。

新商品の記者発表会で、セブンイレブン・ジャパンの上條智シニアマーチャンダイザーは「覚悟を持ってプロジェクトをやり抜きたい。お客様一人ひとりに、フードロスの現状と、この商品の社会的意義をお伝えしていきたい」と力強く述べた。1本のチューハイが、消費者においしさを届けるだけでなく、社会課題解決への意識を高め、持続可能な未来へとつながる大きな一歩となることが期待される。
横田 伸治(よこた・しんじ)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。