
世代を超えて愛され続けている着せ替え人形「リカちゃん」(発売元:タカラトミー)。廃棄予定だった生地を活用し、リカちゃん用の衣装を制作しながらアップサイクルを学べるワークショップ型のプログラム「リカちゃんのアップサイクルアトリエ」が話題だ。リカちゃんの着せ替えを通して、楽しみながら資源や環境について学べるもので、学校や自治体への導入が期待される。2025年6月に開催されたワークショップ体験会に、記者も参加してみた。
廃棄予定生地を華やかにアップサイクル

ワークショップは、参加者が楽しみながら「アップサイクル」(廃棄されるはずだった物に付加価値を加え、新たに生まれ変わらせる取り組み)を学ぶことが狙いだ。難易度と対象年齢別で5段階に分かれており、協力企業から提供を受けた廃棄予定の生地を使い、リカちゃんに着せるスカート、ケープ、セットアップなどを制作できる。このうち6歳以上が対象の「リカちゃんのスカートをつくろう」では、使用する生地のほか、生地同士を貼り付ける両面テープやマジックテープなど必要な材料が全て揃っており、15~30分ほどでリカちゃん用のスカートを制作することができた。
完成したスカートはカラフルで、作り手によっても個性がはっきりと表れる。記者は「夏っぽさ」をイメージして、明るい色味で涼し気に仕上げてみた。体験会で完成した作品はいずれも、廃棄予定の生地から生まれたとは思えないほど華やかだ。


企業同士の「共感」から「共創」が始まる
ワークショップを企画・運営するのは、「STORY & Co.(ストーリーアンドカンパニー)」(東京・千代田区)。一企業や個人では解決できない社会課題に対し、「共創」やクリエイティブの力でアプローチする「NewMake」事業の一環だ。同社はリカちゃんを製造・販売するタカラトミーの監修の下、ワークショップキットの制作・提供や、導入団体へのオリエンテーションなどを一貫して行っている。

「リカちゃんのアップサイクルアトリエ」は、リカちゃんとNewMake事業の共創プロジェクトとしては第3弾となる。第1弾は、2023年5月に開催された「100 My Licca わたしのクローゼット」展。この企画では、不要になった洋服や生地を活用したリカちゃんの衣装を、全国から一般公募。選ばれた作品が渋谷ヒカリエで展示され、クローゼットにしまっている洋服や過去を振り返る機会となった。
Story&Co.で広報を担当する牛込怜子氏は、タカラトミーとの共創について「アップサイクルへの考え方についてNewMakeと共通する部分があり、『共感』から連携が始まった」と振り返る。また、ワークショップに使用する生地の提供にはワコール、豊島、ベルアート・オンダといったアパレルや手芸関係のメーカーらが協力。資源循環の実現に向け、多くのステークホルダーを巻き込んだ動きを実現している。
「かわいい」をきっかけに、サステナブルに愛される取り組みへ
ワークショップはこれまでに、「東京おもちゃショー」や「遊びの創造ランドおもちゃ王国」(岡山県玉野市)、島根県立隠岐島前高校での出前授業など、さまざまな場所でトライアルが実施されてきた。牛込氏はトライアル時に参加者から寄せられた感想を振り返り、「 (廃棄予定だった生地が新たな作品に)変わるんだ!と感じてもらえたことで、身近な廃棄物も何か新しいものに変わるかもしれないという意識が芽生えていた。それが新たなワンアクションにつながると思う」と、ワークショップだけで終わらない、中長期的な行動変容に期待を寄せた。
今後も、継続的なプロジェクトとして実施実績を拡大していく予定で、学校や自治体、商業施設など、連携団体を募っている。牛込氏はワークショップを「サステナビリティへの入り口」と表現し、「子どもだけでなく、幅広い年代の人々にワークショップを体験してほしい。かわいいという感情をきっかけに、サステナブルな行動を自然に育んでくれるはず」と強調する。「かわいい」から始まる「リカちゃんのアップサイクルアトリエ」は、サステナブルに愛される取り組みとして各地に広がっていきそうだ。
山口 笑愛(やまぐち・えな)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 インターン
ミネルバ大学在籍中。ユースコミュニティ「nest」に参加したのがきっかけで、高校1年生からSBに関わる。今はファッションと教育を主軸に、商品制作、メディア、イベント企画を通して発信活動中。