• 公開日:2025.07.10
未来へつながるワカメの可能性。世界のおいしい栄養源に、そして徳島の海を育む循環型一次産業構築へ
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国際自然保護連合(IUCN)が発表した「世界の侵略的外来種ワースト100」。その一つに挙げられているのが、日本の食卓ではお馴染みの食材であるワカメです。

日本や韓国、中国以外の地域では海藻を食べる文化がほとんどなく、ワカメは各国で海岸や漁港で旺盛に繁殖する害藻として扱われていました。しかし、気候変動などの影響で世界的食糧危機が深刻化するにつれ、海洋生物を栄養源にしようという動きが活発化。改めて、海藻も貴重なタンパク源として期待され始めています。

ワカメを世界が認めるおいしい栄養源とするために、そしてワカメが持つたくさんの可能性を広げるために、さまざまな挑戦を行っている有限会社うずしお食品(徳島県鳴門市)を紹介します。

・うずしお食品
https://uzushioshokuhin.co.jp/
・シーコックトモエ
https://seacook-tomoe.com/

ブルターニュの海藻養殖会社への技術支援。ワカメのおいしさを海外へ伝え、新たな栄養源に

ワカメが外来種として繁殖してしまった地域の一つが、フランス・ブルターニュ地方です。約50年前、ブルターニュのカキが伝染病で全滅しかけた時、日本から輸入した稚貝にくっついていたワカメの胞子が繁殖。以来、海の厄介者と化していましたが、それを良い栄養源にできないかと取り組み始めたのが、ブルターニュの西端にある街・レスコニールに拠点を置くAlgolesko社でした。Algolesko社は自然保護区に指定されるほど豊かなビスケー湾で、高品質なワカメを養殖していましたが、それを新鮮でおいしい状態で出荷するための加工技術に課題を抱えていました。

うずしお食品の代表取締役社長である後藤弘樹氏は、ワカメ輸出の可能性を探る海外視察の一環で、初めてブルターニュの海で海藻養殖の現場を見た時のことを、こう振り返ります。


「Algolesko社の養殖場でワカメを引き上げた瞬間、『なんだこれは』と思いました。ものすごく良質なワカメが次々に揚がってくるんです。フランスにもワカメがあるらしいというのは30年以上前から聞いていましたが、まさかここまでのランクとは思わず、驚きました。そしてそんなワカメを、ただ塩をまぶしただけで保管していたことにも驚きました。それは日本では50年も前からやっていない方法で、正直に言って、おいしくはならない。とてももったいないと思いました。そしてこれではワカメを食べてくれる人は増えない、ワカメ輸出のためにもまずは『ワカメはおいしい』という認識を海外で広げなければ駄目だと気づきました」

うずしお食品とAlgolesko社は互いの養殖現場や加工場を視察しあうなどの協力を続け、2022年には技術支援契約を締結。この支援により、ブルターニュでおいしさと鮮やかな色味を保つ海藻を生産できるようになりました。その成果もあり、現在、ブルターニュ産のワカメや昆布はフレンチのシェフからも注目される食材となっています。


ワカメを食材として広げるための次の課題は、食べ方・レシピの開発であると後藤氏は言います。日本でも、ワカメの食べ方といえば味噌汁、酢の物、サラダと、あまり幅広いとはいえません。しかしこれまでワカメを知らなかった食文化の中で生かされれば、全く新しい発想による食べ方・レシピが生まれるかもしれない。そうしてワカメの食材としての可能性を逆輸入できれば、日本国内でのワカメ消費量も増え、ワカメ養殖業の活性化にもつながると、後藤氏は期待を寄せます。

畜産業・農業と連携して海を育み、ワカメ養殖業を未来へつなげる


うずしお食品では、ワカメ養殖業をより持続可能な産業へと発展させるため、食用以外の可能性も追求しています。

現在、瀬戸内海では、環境保全施策により水質が改善され透明度が高まった一方で、海の3大栄養素である窒素が減少し、植物プランクトンが育ちにくくなる貧栄養化が課題となっています。これを解決する施策の一つが、陸上で行われる畜産業・農業を通じて豊かな土壌をつくり、そこから栄養素が海へと流れ出る仕組みをつくること。そのために活用できるのが、うずしお食品が開発したワカメの根を発酵させてつくる飼料です。これを豚に与えることで、飼料効率が向上し病気にもかかりにくくなるという実証結果が得られています。さらに、この飼料で育った豚のふんは化学物質の少ない良質な堆肥となり、畑にまくことで作物を育てるとともに土壌を肥沃(ひよく)化します。肥沃な土壌から海へ流れ出た養分は、ワカメやその他の海藻を含め海に暮らす多様な生物を育てていきます。

※ 窒素、リン、ケイ素の3つ

「このような畜産業や農業が水産業に貢献するという考え方は、欧州の方が進んでいます。実際にフランスの農家の方と話して、意識の高さ・視野の広さに感銘を受けました。100年先も食糧に困らない土地であり続けるために、海外を含めいろいろな場所で進む取り組みを参考にしながら、私たちも新たな挑戦をしていきたいと思っています」と、後藤氏は語ります。

ワカメの持続可能性は、世界の食糧危機解決や循環型一次産業の構築にもつながっているのです。

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