• 公開日:2025.05.23
  • 最終更新日: 2025.05.21
脱フロン・賃貸型・無人化の拠点が物流網を支える――霞ヶ関キャピタル 
  • 笠井 美春

Sponsored by 霞ヶ関キャピタル株式会社

「物流2024年問題」で浮き彫りになった深刻なドライバー不足に加え、フロン規制、カーボンニュートラルの実現など、物流業界には立ち向かわなければならない課題が山積している。そんな現状に対して冷凍冷蔵領域を中心にさまざまなプロジェクトや新サービスを打ち出している不動産コンサルティング企業・霞ヶ関キャピタルに取材。同社が挑む「サステナブルな物流サービスの構築」について、ロジスティクス開発本部建築チームの野中耕大氏に聞いた。 

 

Interviewee  
野中 耕大・霞ヶ関キャピタル ロジスティクス開発本部 事業企画部 建築チーム シニアヴァイスプレジデント 

脱フロン・賃貸型の倉庫で中小企業をサポート 

霞ヶ関キャピタルは、「その課題を、価値へ。」を経営理念に掲げ、事業領域を「成長性のある事業分野×社会的意義のある事業」として、社会課題をビジネスで解決に導いてきた。「物流・ホテル・ヘルスケア・海外」の4事業を展開し、2023年10月には東証マザーズ市場(現:東証グロース市場)から東証プライム市場に上場市場区分を変更。今回の取材では、同社が主導する「物流課題の解決に向けた取り組み」を深掘りした。

霞ヶ関キャピタル ロジスティクス開発本部 建築チーム シニアヴァイスプレジデント 野中耕大氏

「私たちが物流事業で展開しているのは、低炭素化・脱フロン化を取り入れた環境配慮型の物流施設の開発および展開です。『物流2024年問題』やフロンの規制強化、倉庫設備の老朽化など、日本の物流業界はたくさんの課題を抱えています。これらを解決するために『LOGI FLAG(ロジフラッグ)』という環境配慮型の物流倉庫を開発し、日本各地で運用してきました」。こう語るのは、これらの設備の計画を担う野中氏だ。 

日本の冷凍冷蔵倉庫においては、モントリオール議定書およびオゾン層保護法の改正により、現在広く冷媒に採用されているHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)の生産が、2020年時点で補充用を除いて全廃、2030年には完全に生産停止となることが決定している。このため多くの倉庫で設備の更新や建て替えなどの脱フロン対応を行わなければならないが、これが思うように進んでいないのが現状だ。この理由について野中氏に聞いた。 

※冷暖房装置の創生期から使用されてきたクロロフルオロカーボン(CFC)が、オゾン層保護のため廃止になり、その代替として登場した当時の代替フロン 

LOGI FLAG HPより 

「大きな理由は建て替え・改修コストの高さです。例えば東京都では、築30年以上の古い倉庫が40%ほどを占めており、その多くは中小企業が経営しています。昨今の建築費増加もあり、倉庫の建て替えや設備改修を行うことは容易ではありません」 

この問題に対応するべく生まれたのが、冷凍・冷蔵・常温と3温度帯のシリーズを持つ物流施設「LOGI FLAG」だ。冷却設備の冷媒にはフロンではなく、オゾン層を破壊せず、温室効果ガスの排出量を最小限にとどめられる自然冷媒を採用。また、冷凍冷蔵帯の倉庫では珍しい賃貸型の倉庫とすることで、中小企業が自社で建て替えをすることなく脱フロン化を実現でき、低コストでの事業継続を支えている。 

LOGI FLAGの施設タイプ概要

 

「『LOGI FLAG』で採用している自然冷媒は、CO2やアンモニアです。CO2そのものには毒性・可燃性がなく安全。またアンモニアを冷媒とした場合には、使用冷媒量が少量で済み、エネルギー効率良く温度を下げられるというメリットがあります」 

これに加えて、屋上に太陽光発電装置を設置することで温室効果ガス排出量、電力使用料金を削減。さらに冷却設備から出る熱を、冷凍倉庫で必要となる温熱源として再利用するなど、エネルギーを捨てることなく使い、よりサステナブルな物流施設として運営できるという。 

「日本では2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2030年度には温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すことをマイルストーンとしています。これに向けて業界では脱フロン対策、温室効果ガス削減に力を尽くしていかなければなりません。物流業界を支えているのは中小企業だからこそ、私たちは、自社での建て替えが難しい中小企業の倉庫の脱フロン化、事業継続をサポートし、物流のラストマイルを守りたいと考えています。そしてこれにより日本の物流サービスの維持に貢献していきます」 

労働環境改善・効率化に向け、施設の自動化や中継拠点の構築も 

同社では、2024年から新たなシリーズとして「LOGI FLAG TECH」の運用をスタートした。これは物流業界の労働環境改善および業務効率化に向けて、これまでの「LOGI FLAG」を進化させたオートメーション型の物流施設だ。 

「『LOGI FLAG TECH』は自動倉庫の技術を導入し、冷凍倉庫区画を無人化した次世代物流施設です。-25℃にもなる冷凍倉庫内での作業は本当に過酷で、凍傷の危険があるだけでなく、どうしても人為的なミスも出やすくなってしまいます。これらの課題を自動化によって解決し、スタッフの労働環境改善を図るとともに、倉庫スタッフの省人化も実現しました」 

オートメーション型次世代物流施設「LOGI FLAG TECH」の特徴 

 

また国土交通省によれば、トラックドライバーの長時間労働の要因の一つは、発着場所での長時間の荷待ちや荷物の積み下ろしであり、この改善が課題とされてきた。同社では荷造りの効率化を図るために在庫管理システムを導入。各トラックの需要データを集め、事前に荷物を準備しておくことで荷待ち時間の短縮も実現しているという。 

中継輸送拠点開発プロジェクトの概要

  

さらに、ドライバーの労働時間の制限により、1人のドライバーによる長距離輸送が難しくなったことを踏まえ、複数のドライバーで分担し貨物を輸送する「中継輸送」の拠点施設ネットワーク構築も進める。中継地点での適切な引継ぎにより復路のトラックも活用して効率的に荷物を輸送できるなど、メリットは大きいという。 

「現在、東京と大阪の中間地点である静岡県袋井市に中継輸送拠点を建設するプロジェクトを進めています。施設内容はまだ構想段階ではありますが、冷凍冷蔵の自動倉庫を作り、ドライバーが休めたり、仮眠できたりするスペースも設けたいですね。倉庫設備と中継拠点を構築し、それぞれをスムーズにつなぐ仕組みづくりをすることで、日本のコールドチェーン、物流サービスを支えていきたいと考えています」  

設備と仕組みの両面から、サステナブルで便利な物流サービスを支えていく 

物流業界の課題にあらゆる角度から策を講じてきた同社。今後はAIやIoT技術を活用した業務の最適化にも力を注いでいくという。2023年に設立したグループ会社のX NETWORK(クロスネットワーク)社では、すでにこの実現を視野に新たな冷凍保管サービスをスタートしている。 

「クロスネットワークが担うのは、『必要な時に』『必要な分だけ』冷凍保管スペースを利用することのできるシステムです。実は、クリスマスケーキやおせちなど、冷凍の荷物には季節性の高いものが多く、ある時期だけ荷物を追加で預けたいという要望も多数あります。そこで、小スペースの1日単位での寄託または荷物の預かりを可能にすることで、コールドチェーン全体の作業・コストの効率化を実現できます」 

クロスネットワークが展開するサービスの概要 同社HPより

 

クロスネットワークが展開する冷凍保管サービス「COLD X NETWORK(コールドクロスネットワーク)」では、予約から在庫管理、入出荷依頼などまでを全てWEBで行うことができる。また、荷物はオートメーション型の「LOGI FLAG TECH」内で管理されるため、倉庫側の管理も全てコントロールルームでのシステム操作で完結。まさに物流サービスの省人化、効率化を体現したサービスと言えるだろう。フードロスの観点からも保存期間の長い冷凍食品などの需要はますます高まる傾向にある中、同社はこうしたサービスの拡充、浸透を進めていく考えだ。 

野中氏は、このクロスネットワークのサービスを「新たな冷凍物流プラットフォームへと成長させていく」という将来的な構想も明かす。まずはサービスの拠点となる「LOGI FLAG TECH」を全国に置き、それらをネットワークでつないで稼働状況を管理する。そして「どこで、何を、いつまで預かることが最も効率が良く、環境負荷が少ないか」を試算して可視化し、顧客に提案できるような仕組みを構築するというプランだ。 

同社が目指す、新たな冷凍物流プラットフォームの構想概要 

「新たなプラットフォームの構想においては、他社の倉庫と情報を連携して倉庫の稼働状況をまとめ、必要とするユーザーに効率よくレンタルしたり、トラックの手配をしたりできないか、とも考えています。物流サービスは多くの企業が連携して成り立っているからこそ、新たなプラットフォームの構築には企業同士の連携が必要不可欠。何が社会に求められていて、何が課題なのかを見極めつつ、新しい『サステナブルな物流サービスの構築』をけん引し、日本の物流サービスを支えていきたいと考えています」 

持続可能な社会を実現するために企業に求められるのは、社会課題の解決とビジネスの成長を切り離さず両者を絡み合わせる仕組みを作り、共にかなえていくことだ。霞ヶ関キャピタルが取り組む新たな物流サービスの構築は、今後どう進んでいくのか。これからの物流業界の動向に注目したい。 

written by

笠井 美春(かさい・みはる)

愛媛県今治市出身。大学にて文芸を専修。卒業後、株式会社博展において秘書、採用、人材育成、広報に携わったのち、2011年からフリーライターへ。企業誌や雑誌で幅広く取材、インタビュー原稿に携わり、2019年からは中学道徳教科書において創作文も執筆中。

Related
この記事に関連するニュース

フィッシュ2.0:保守的な産業でサステナブル・イノベーションを起こすには
2019.10.24
  • ワールドニュース
  • #イノベーション
  • #サプライチェーン
ユニクロのジーンズ、加工時の水を90%以上削減
2018.11.19
  • ニュース
  • #イノベーション
  • #サプライチェーン

News
SB JAPAN 新着記事

丸の内のビルから出た生ごみが循環 ビールから「まちの未来を考える」
2025.05.23
  • ニュース
  • #フードロス
  • #エシカル
  • #行動変容
脱フロン・賃貸型・無人化の拠点が物流網を支える――霞ヶ関キャピタル 
2025.05.23
  • ニュース
  • スポンサー記事
  • #イノベーション
  • #サプライチェーン
藻類、水素、洋上風力……次世代エネルギーが描く未来図
2025.05.22
  • ニュース
  • #再生可能エネルギー
  • #リジェネレーション
【ビジネスと人権コラム】第10回「攻め」の人権対応が持つ可能性(後編)
2025.05.22
  • コラム
  • #人権
  • #ダイバーシティー

Ranking
アクセスランキング

  • TOP
  • ニュース
  • 脱フロン・賃貸型・無人化の拠点が物流網を支える――霞ヶ関キャピタル