
古着販売サイト「スレッドアップ(ThredUp)」が米古着市場に関する調査報告書を発表した。トランプ政権の関税方針やAIの影響で手頃な価格の古着を優先的に購入する消費者が若者を中心に増加しており、今後もさらなる成長が予想されている。ただし、持続可能性に向けた取り組みを巡っては、消費者と企業側の間に考え方のずれが生じているようだ。(翻訳・編集=遠藤康子)
世界有数の古着販売プラットフォーム「スレッドアップ」は2025年3月19日、古着市場に関する調査結果をまとめた「2025年リセール報告書」を発表した。13回目となる今回は、米小売業界専門の分析会社グローバルデータ(GlobalData)が第三者として調査を実施し、古着の世界市場と米国市場を幅広く包括的に評価しているほか、2034年までの見通しも述べられている。
報告書には、グローバルデータによる市場評価と成長予測、18歳以上の米消費者3034人を対象にした調査、米アパレル分野の小売店とブランド上位50社に自社の持続可能性目標と循環型ファッション目標について尋ねた調査の結果が盛り込まれた。以下、調査結果に基づく5つの注目ポイントを掲載する。
(1)古着市場は従来の小売業をしのぐ勢い
- 世界の古着市場は、年平均成長率(CAGR)10%で拡大し、2029年には3670億ドル(約55兆1600億円)規模に達する見込みである。
- 米国の古着市場は2029年に740億ドル(約11兆1200億円)に達すると予想される。2024年の成長率は14%と、2021年以来最大の伸びとなり、アパレル市場全体の成長率の5倍となった。
- 2024年、オンライン古着販売は2年連続で加速度的に伸び、成長率は23%だった。今後5年で2倍近くに達し、2029年には400億ドル(6兆90億円)になると見られている。
- 「中古品があるなら新品は購入しない」と答えた消費者は全体の46%(ミレニアル世代とZ世代は55%)を占めた。
(2)米政権の関税方針が古着市場を後押しする見込み
- 「米新政権の関税と貿易を巡る措置でアパレル価格が上昇するなら、お手頃価格で手に入る古着などを探す」と答えた消費者は59%(ミレニアル世代は69%)に達した。
- 消費者は今後12カ月で洋服用予算の34%を古着購入に充てようと考えている。Z世代とミレニアル世代は「予算のほぼ半分(46%)を古着購入に充てる」と回答した。
- 小売企業の幹部の80%は「米新政権の関税と貿易を巡る措置で世界のサプライチェーンは混乱すると思う」と回答した。こうした状況を受けて「輸入品への依存度を下げるつもりだ」と回答した割合は44%だった。「関税は変動する可能性があるが、古着は商品供給源としてより安定度が高く予測可能だと思う」という回答は54%を占めた。
(3)再販は小売企業の競争力維持と新規顧客の獲得に有効
- 小売企業の幹部を対象にした調査では、「自社の顧客はすでに古着を購入している」と回答した割合が94%と、2024年から4ポイント上昇して史上最高を記録した。
- 2024年に古着を購入した消費者の32%が「ブランドから直接購入した」と回答した(Z世代とミレニアル世代は47%)。
- 「古着を持ち込んで割引クーポンをもらった場合は、そのブランドで初購入する確率が高くなる」と答えた消費者は47%で、2024年から25ポイント上昇した。
(4)AIが古着市場の活況に一役買っている
- 「パーソナライズ(個別最適化)が進んでいることや、検索のしやすさと商品の見つけやすさが向上したことで、古着の購入は新品と同じように簡単になる」と回答した消費者は48%(Z世代とミレニアル世代は59%)だった。
- 小売企業の幹部の62%は「AIには古着購入体験の魅力を向上させる力がある」と回答した。また、58%が「今後1年でAIを活用したツールを導入する計画がある」と回答した。
(5)消費者と企業では持続可能性に関する考え方に温度差
- 小売企業の幹部を対象にした調査では、74%が「再販することで、価格の手頃さと持続可能性を両立できる」と回答した。にもかかわらず、半分近く(48%)が「顧客が持続可能性の重要性を十分に認識していないため、経営トップは再販などの循環型ビジネスモデルを後回しにしている」と回答した。
- 一方、ミレニアル世代とZ世代の56%は「アパレルブランドや小売店は持続可能性に向けた取り組みが不十分だ」と考えている。アパレル小売店の大半が返品された商品を再販せずに廃棄しているという事実が広まれば、この割合は上昇するだろう。
- 「安価で低品質のアパレル商品は再販価値が低いので購入を減らした」と回答した消費者は49%(ミレニアル世代とZ世代は64%)だった。
「ここ10年、経済見通しの不透明さや市場の細分化という問題があっても、アパレル再販市場が真の持続力を持っていることが一貫して証明されてきました」。スレッドアップの最高経営責任者(CEO)ジェームズ・ラインハルト氏はそう話す。「古着を優先的に購入する消費者が増えているため、小売業界では強力で新しい再販ルートを導入しています。古着販売がなぜ加速度的に成長しているのかは言うにおよびません。この先の1年を前に、今回の報告書で示された見通しに勇気づけられました。ファッション業界のより良い未来を形作るべく、目的意識を新たに全力で取り組んでいきたいと考えています」