• 公開日:2024.10.28
既存の政策続けば、最大3.1度の破滅的な気温上昇も――COP29前にUNEPが「排出量ギャップ報告書」を通じて警告
  • 廣末 智子

Image credit: shutterstock

国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29) が11月11日からアゼルバイジャンで開かれるのを前に、国連環境計画(UNEP)は、各国の排出量削減目標や現状の政策と、2050年にネットゼロを目指す、パリ協定の1.5度目標との間にどれほどの“ずれ”が生じているのかを示す最新の報告書を発表した。それによると、2023年の世界の排出量は過去最多を更新しており、各国が既存の政策を続けるなど最悪のシナリオが取られた場合、「最大3.1度の破滅的な気温上昇につながる」と警告。COP29を経て、各国が来年2月までに策定する、2035年に向けた「NDC(Nationally Determined Contributions、国が決定する貢献)」で大幅に削減目標を引き上げ、直ちに行動に移すことを求めている。(廣末智子)

2023年の世界の排出量は過去最多の57.1ギガトン

最新の報告書は、世界トップの気候科学者らが温室効果ガス排出の将来的な傾向を考察し、地球温暖化に対する潜在的な解決策を提示する、「排出量ギャップ報告書(Emissions Gap Report) 2024」で、今回が第15版となる。

それによると、2023年の世界の温室効果ガス排出量は前年比1.3%増の57.1ギガトンで、過去最多を記録した。その増加率は、パンデミック前の10年間(2010〜2019年)の平均0.8%を大きく上回り、セクター別では電力(26%)、運輸(15%)、農業(11%)、工業(11%)の順に多かった。中でもパンデミック時に大幅に減少した国際航空からの排出量は、2023年には前年比19.5%と最も高い伸びを示した。

大きな太陽の下、氷山の上で溶ける雪だるまのイラストが描かれ、「熱い空気はもう要らない!(No more hot air …please)」の文言が目を引く、「排出量ギャップ報告書(Emissions Gap Report) 2024」の表紙

報告書は、各国が5年ごとに排出量削減の公約として提出するNDCの内容に焦点を当てて書かれており、現行の2030年までのNDCでは、「各国が仮にそれを達成できたとしても、世界の平均気温は今世紀中に2.6〜2.8度にまで上昇する」と指摘。さらに、各国が、2030年までのNDCすら達成できないような既存の政策を続けた場合は、「最大3.1度の破滅的な気温上昇につながる」と予測し、世界が2.6〜3.1度の気温上昇に向かうことで、「人々、地球、そして経済に壊滅的な影響をもたらすだろう」と警告を発する。

そうした最悪のシナリオを踏まえた上で、報告書は「技術的には1.5度の道筋をたどることは可能であり、太陽光や風力発電、そして森林が大幅かつ迅速な排出削減を実現する真の可能性を秘めている」と強調。そのためには、「G20諸国が重い腰を上げ、社会経済と環境のコベネフィット(一つの政策や戦略、行動計画の成果から生まれる複数の恩恵を指す)を最大化し、気候変動の緩和への投資を最大でも6倍に増やすことが必要だ」などと具体策にも言及し、間近に迫ったCOP29で、各国が2035年に向けたNDC(来年2月が提出期限)を「劇的に強化するための舞台を整える」ことの必要性を強くアピールする内容となっているのが特徴だ。

「It’s Climate Crunch Time. It’s Time to Level Up(気候対策は正念場、排出量のレベルアップを) #EmissionsGap(排出量ギャップ)」の文言を掲げ、UNEPが発信する報告書の内容を踏まえた動画

報告書によると、1.5度目標を達成するには、世界全体で排出量を2030年までに2019年比で42%、2035年までに57%削減することが必要とされる。しかしながら、主要国の2030年までのNDCは、欧州連合が「2030年までに55%削減(1990年比)」、英国が「2030年までに68%削減、2035年までに78%削減(1990年比)」、米国が「2030年までに50〜52%削減(2005年比)」、日本は「2030年までに46%削減(2013年比)、さらに50%の高みを目指す」と、いずれも1.5度どころか、2度にも削減目標が足りていないのが現状で、2035年のNDCで各国がどこまで目標を引き上げ、それを行動に移していくかは、地球の未来を左右する重要な鍵だ。

※2023年のCOP28では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の科学的知見を踏まえて世界全体の進捗を評価する「グローバルストックテイク」が初めて行われ、同じく2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%削減する必要性が示されている

事務総長「排出量ギャップを埋める。COP29から着手する」

COP29は、各国の野心的なNDC策定を後押しする場になりうるのか――。今回の報告書に関して、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「排出量の増加と、ますます頻繁、かつ激化する気候災害の間には直接的な関連があり、排出量ギャップは抽象的な概念ではない。世界中で人々が恐ろしい代償を払っている」とした上で、「本報告書に書かれていることは明白であり、私たちはこれ以上時間を稼ぐことはできない。排出量ギャップを埋めるということは、野心のギャップ、実施のギャップ、資金のギャップを埋めることを意味する。COP29から着手する」とするメッセージを発している。

written by

廣末 智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年から2025年までサステナブル・ブランド ジャパン編集局でデスク兼記者を務めた。

Related
この記事に関連するニュース

物流の脱炭素をどう実現するか――スカニアが提唱する、既存インフラを生かした現実解
2026.01.16
  • ニュース
  • #気候変動/気候危機
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
2050年ネットゼロ実現でも1.5度超え IEA「世界エネルギー見通し」が描くシナリオ
2025.12.25
  • ニュース
  • ワールドニュース
  • #気候変動/気候危機
  • #カーボンニュートラル/脱炭素
国連工業開発機関が「持続可能性賞」を設立 記念すべき第1回受賞者をチェック
2025.12.22
  • ニュース
  • ワールドニュース
  • #イノベーション
  • #気候変動/気候危機
  • #リジェネレーション
カーボンニュートラルから適応へ ブルーボトルコーヒーが進める再生型農業と品種開発
2025.12.16
  • ニュース
  • #気候変動/気候危機
  • #カーボンニュートラル/脱炭素

News
SB JAPAN 新着記事

10周年を記念する「サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内」、参加登録受付中
2026.01.28
  • ニュース
  • SBコミュニティニュース
    「奪い合わずシェアする地方創生へ」 2025年度SB-Japanフォーラム最終回
    2026.01.27
    • SBコミュニティニュース
    • #地方創生
    「練馬をサーキュラーエコノミーの先進地域に」 住宅街からボトムアップで挑む
    2026.01.26
    • ニュース
    • #サーキュラーエコノミー
    • #まちづくり
    【編集局コラム】平和を祈ったその日に――混沌の時代に、私たちが伝え続けたいこと
    2026.01.23
    • コラム
    • #人権

    Ranking
    アクセスランキング

    • TOP
    • ニュース
    • 既存の政策続けば、最大3.1度の破滅的な気温上昇も――COP29前にUNEPが「排出量ギャップ報告書」を通じて警告