• 公開日:2023.06.29
  • 最終更新日: 2025.03.28
人類が直面する4つの「生存ボトルネック」の解消を―― 日本発、6大陸の若手起業家と企業を結ぶ共創が加速

SB国際会議2023東京・丸の内

Day2 ブレイクアウト

終わりの見えないウクライナ侵攻などを背景に、持続可能な未来に向けて、世界は2030年の目標年にSDGsの17のゴールを本当に達成できるのかが危惧されている。そうしたなか、SDGsが掲げる課題のうち、食糧と水、資源循環、エネルギーの4分野に的を絞り、それらを人類が直面する「生存ボトルネック」として捉えて解決を目指す、日本発のグローバルなプラットフォームが共創を加速している。2020年にスタートし、世界6大陸の若手社会起業家やサステナビリティの実践者らと企業や公的機関を結びつける、『4Revs(Revolusionsの略)―a co – creative ecosystem=以下、4Revs』だ。2月に行われたサステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内には、その主要メンバーが登壇し、取り組みの方向性や活動の現状について報告した。(木野龍逸)

ファシリテーター
ピーター D. ピーダーセン・NPO法人NELIS 代表理事
パネリスト
クリスチャン・シュミッツ・PDIEグループ創業者 Aventa CEO
駒木亮伯・東芝 CPSxデザイン部 デザイン開発部 共創推進担当 スペシャリスト
サラーム・アル・カティーブ・NELIS中東 コアメンバー Social Value Arabia 創立者
ジョヴィン・ハリー・NELISモーリシャス 4Revsプログラムマネージャー
フェリックス・イジオモー・NELISアフリカ 4Revsプログラムマネージャー
横林夏和・日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 社会イノベーション 事業統括本部 次世代事業開発本部 パートナリング部

一世代のうちにどう振る舞うかで未来が決まる

ピーダーセン氏

『4Revs』の発起人で、セッションのファシリテーターを務めたピーター D. ピーダーセン氏は冒頭、「発端はSDGsに対するモヤモヤ感だった」と話し、次のように続けた。「SDGsの中でまず解決すべき課題を整理したところ、4つの生存ボトルネックに直面していること、それに対して革命的なイノベーションが必要だということがわかり、『4Revs』が生まれた」。

その「4つの生存ボトルネック」とは、食糧、水、資源循環、エネルギーの4分野であり、ピーダーセン氏は、「この4つをなくしては、平和や教育、福祉やジェンダー平等といった他のSDGs目標の達成は絶対に不可能だ」と強調。「日本が国際社会における新たな役割を果たせるのであれば、この分野に対してイノベーションを加速させることだ」という考えのもとに、イノベーターと実践者、企業、公的機関などをつなぐ「4Revs」を構築した背景や、活動を通じて「2020年から2050年の『一世代』のうちに我々がどう振る舞うかで未来が決まる」と決意していることなどを語った。

「4Revs」で生まれる業界横断の取り組みと思考

横林氏

『4Revs』に参加する日本企業26社の一つ、日立製作所の横林夏和氏は、例えば資源循環でもグループ企業の中だけで取り組むのではなく、他業種と横につながることで、より消費者が手に取りやすい製品が生まれたり、必要な規制改革が可能になるという考えを示した。経済価値、社会価値、環境価値のすべてを取りこぼさない形で事業をつくっていく上で、『4Revs』とは親和性が高く、「熱意を持って、社会課題を素早くアクションにつなげる人たちとつながるフィールドがあること」の意義は大きいという。

駒木氏

東芝の駒木亮伯氏は、「4Revs」で得られた情報をデザインに落とし込んだ活動について具体例を紹介した。その一つ、「Think a new dayプロジェクト」では、例えば地球温暖化に歯止めがかからない場合に「もし人類が冬眠するようになったら」など、未来の価値観に合わせたアプローチを提起して議論を深めているという。
駒木氏は「サステナビリティは難しいというイメージを持っている人を含めて、いかに巻き込めるか、ワクワクさせられるかにデザインが寄与できないかを考えて活動している」と、コラボレーションの醍醐味を話した。

イノベーションセンターを東京に創設する計画の意義とは

カティーブ氏

『4Revs』には次の取り組みとして、東京にグローバルイノベーションセンターを創設する計画がある。その意義についてNELIS中東コアメンバーのサラーム・アル・カティーブ氏は、「4つの課題に絞ってイノベーションを起こしていく上で、実質的なインパクトにつなげていくための中心的な役割を担う」と説明。その上で「4課題のイノベーションのフロンティアがどこにあるかというと、2050年に人類の9割が住む南米やアフリカ、中東、アジアだ。欧州や北米ではない」とする考えを強調した。

シュミッツ氏

また同センター創設に向けて協力している一般社団法人PDIE(パーパス・ドリブン・イノベーション・エコシステム)グループCEOのクリスチャン・シュミッツ氏は、「日本政府の関係者から、日本はもっとグローバルにならないといけない、インパクトをつくらないといけないという意見を聞いた。そこは日本が今遅れているところだ」と指摘。サステナビリティに特化したイノベーションセンターを日本につくることで「イノベーターを核融合させ、共創によってより良いエコシステムをつくりたい。日本に眠っているイノベーションを世界に持っていくこともできる」と意欲を示した。

「ローカルに根差しながらグローバルとつながる」が強み

オンライン登壇したハリー氏(左)とイジオモー氏

セッションには、リサーチチームの一員として『4Revs』のプログラムに参画するモーリシャスとナイジェリアの次世代リーダー二人もオンラインで登壇。このうちジョヴィン・ハリー氏は『4Revs』の特徴を「世界各地でコミュニティの現状を知り、サステナビリティを実践するエキスパートと共にプロジェクトを推進できる。ローカルに根差しながらグローバルとつながることができるところにある」などと話し、「これはおそらく世界にふたつとないやり方ではないか」とその意義を強調した。

一方、アフリカで今、急成長している都市の一つであるナイジェリアのラゴスに暮らすフェリックス・イジオモー氏は、2050年には2017年比で人口が2倍になる可能性があるアフリカでは、「いま現在もネット環境が悪く、電力インフラも脆弱であるのに、人口が倍になった時にはどうなるのか」と危機感をあらわに。「サステナブルなイノベーションなしには未来が描けない」という思いから「まさにアフリカの社会起業家がどうスケールアップを図るか。若者世代を巻き込んで危機に対応し、コミュニティー保全や生態系修復に貢献する具体的なアクションを起こす」と『4Revs』にかける思いを語った。

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