• 公開日:2023.02.08
エンターテインメントの力で海洋環境の保全を――ディズニーが水族館関係者らと社会課題を議論
  • 松島 香織

ウォルト・ディズニー・ジャパンは6⽇、「サステナビリティ メディア ラウンドテーブル『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』公開記念Keep Our Oceans Amazing(わたしたちの素晴らしい海を未来に残そう)〜“地球”の海、海洋⽣物がかかえる社会的課題に関する現状と、今後への展望〜」と題した意見交換会を開催した。ウォルト・ディズニーは、海を舞台にした映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の公開に合わせてグローバルで海洋環境の保全に力を入れており、ラウンドテーブルではウォルト・ディズニー・ジャパンのディレクターや水族館関係者らが、海洋保全に関する社会的課題や取り組みの現状・課題について議論した。(松島香織)

<パネリスト>
公益社団法人日本動物園水族館協会 事務局長 岡田尚憲 氏
沖縄美ら海⽔族館 統括 佐藤圭⼀ ⽒
ウォルト・ディズニー・ジャパン エグゼクティブ・ディレクター(CSR担当)秋⽉希保 ⽒
<ファシリテーター>
サステナブル・ブランドジャパン ESG プロデューサー ⽥中信康

昨年12 ⽉に開催されたCOP15(国連⽣物多様性条約締約国会議)では、2030 年までに世界全体で陸域と海域のそれぞれ 30%以上を保全地域とする「30by30」という⽬標について協議された。企業においては、⽣物多様性に関する情報開⽰のフレームワーク TNFD(⾃然関連財務情報開⽰タスクフォース)への対応が必要となる。

ラウンドテーブルでは、初めに、ファシリテーターを務めたサステナブル・ブランドジャパン ESGプロデューサーの⽥中信康がこうした世界的な背景を説明。「環境は地球のトップリスク。前例のない速度で進行し人為的な要因が大きい」と危機感をあらわにし、「今、海で起きていることを知り、どうしたら健全な海洋環境を未来へ残すことができるかを考えたい」と呼びかけた。

ウォルト・ディズニーは、映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の公開に合わせて海洋環境保全への⾏動を喚起するグローバルキャンペーン「Keep Our Ocean Amazing(わたしたちの素晴らしい海を未来に残そう)」を実施中だ。アプリを使って「アバター」をモチーフにした生物を1体作ると米国の自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシーへ5ドルが寄附される仕組みで、100万ドル(約1億39百万円)の寄付を目指している。

佐藤氏

ウォルト・ディズニー・ジャパンはグローバルキャンペーンと連動して、昨年12月に沖縄美ら海⽔族館(沖縄県国頭郡本部町)と共催し、地元の小学生90人を⽔族館に招待。沖縄の海に生息し同館でも飼育されているタイマイ、マンタ、ジンベエザメについて説明する特別講座を実施した。この講座を企画した同社エグゼクティブ・ディレクターの秋⽉希保氏は「ごみの排出が海洋生物に大きな影響があると子どもたちに理解してもらえた。友人や家族に伝えたいという意見もあった」と手応えを話した。

ラウンドテーブルには沖縄美ら海⽔族館から統括の佐藤圭⼀⽒も登壇し、「これまで子どもたちに海洋環境について関心を持ってもらったことがなかったので、いい機会になった。30by30を達成するのは難しいが、前に進むには子どもたちに理解してもらう必要がある」と教育の重要性を強調した。さらに「美ら海⽔族館は観光施設として捉えられているが、社会に対してメッセージ性のあるものを伝えていきたい」と意気込みを語った。

岡田氏

『アバター』の海洋生物の監修を担当した公益社団法人日本動物園水族館協会 事務局長の 岡田尚憲氏は「アバターは娯楽作品だが社会問題を訴えており、考えさせられた」と感想を述べた。また「エンターテインメントの良いところは、見ることによって知り、自発的な学びにつながること。水族館や動物園も社会問題を考えるきっかけになる」とエンターテインメントの可能性に言及した。

岡田氏が同協会に水族館と関係のない企業から「連携したい」と問い合わせがあることを紹介すると、佐藤氏は「異業種とのつながりは活動の間口を広げていく良い機会。同じ業界の中で何とかしようと常識にとらわれていたが、業界に関係なく同じ問題意識を持った人との連携が必要だと実感した」と続けた。

映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
全国の劇場で公開中
© 2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
秋月氏

秋月氏はこうした取り組みをいかに継続的にしていくかを課題に挙げつつ、「当社らしくストーリーテリングを通して、企業としてできることからやっていきたい」と今後もエンターテインメントの力を用いて、多くの人に向けて海洋環境への関心・理解を深める活動を続けていくことを表明し、ラウンドテーブルをしめくくった。

written by

松島 香織(まつしま・かおり)

2016年株式会社オルタナ在職中に、サステナブル・ブランド ジャパン ニュースサイトの立ち上げメンバーとして運営に参画。 2022年12月株式会社博展に入社し、2025年3月までデスク(記者、編集)を務めた。

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