• 公開日:2022.08.31
サステナビリティと向き合うために、日本の消費者・企業それぞれが抱える課題とは
    • 横田 伸治

    青木茂樹氏、田中宏昌氏、田中理絵氏

    企業のサステナビリティを、消費者はどのように認識し、評価しているのか。そして、企業はどのようなコミュニケーションにより、サステナブルな社会を作るのか。サステナブル・ブランド国際会議 2022 横浜では、2021年11月に実施された意識・行動調査を題材に、日本の消費者・企業の特徴や今後の展望を議論した。(横田伸治)

    ファシリテーター:
    青木茂樹・サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサー / 駒澤大学 経営学部 市場戦略学科 教授
    パネリスト:
    田中宏昌・インテージ 生活者研究センター センター長
    田中理絵・電通 グローバル・ビジネス・センター シニアマネージャー/電通グループ DJNサステナビリティ推進オフィス

    ファシリテーターを務めたのは、サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサーの青木茂樹氏。インテージの田中宏昌・生活者研究センター長が、同社がまとめたレポート「Brands for Good+」を紹介し、電通グローバルビジネスセンターの田中理絵シニア・マネージャーがコメントする形で進行した。生活者の価値観、行動を評価し、そのギャップを測定する同レポートは、アメリカで実施された同調査のアジア版として、インテージが日本・韓国・マレーシア・タイの4カ国、18歳以上の男女各1000人ずつに調査を実施したもの。

    まず各国の意識調査結果として、田中宏昌氏は「地球、人々、資源を守るための行動をどれくらい心掛けているか」との問いに対し、韓国・日本は調査対象者の2割弱しか心掛けておらず、他2国よりも低く出たことを報告。田中理絵氏は「日本と韓国は経済先進国で、(サステナビリティを)『国がやるべき』と考えているのでは」と述べる。また、日本では環境問題と社会問題を切り分けて考える傾向が強いという結果も紹介された。
    一方で、日本でのSDGs認知が大きく進展していることも話題になった。田中宏昌氏は1年前のデータと比較し「28%から52%に急増している。コロナ禍で、自分だけでなく社会にどう良いインパクトを生むか、中高年世代にも理解が進んだ」と分析する。

    また、消費者のサステナブル・アクションの取り組み状況を調べたレポートでは、環境に配慮した商品や原材料を選ぶ意識が、他国と比べ低くなったことに焦点が当たった。青木氏は「どれが自然に優しい原材料なのか、企業が正しく伝えられていないのでは」と投げかけ、さらに「メルカリのようなサービスも循環型だが、消費者にはそう伝わっていない。オーガニックについても『赤ちゃんの肌に優しい』と伝えることが多い」と日本のマーケティングの特徴を指摘する。
    一方、消費者側の課題も。田中理絵氏は、電通が過去に実施した意識調査を踏まえ、日本の消費者はあくまでも意識的にサステナブル・アクションに取り組むのではなく、「誰かが何とかしてくれる」「経済的なロスがあるなら(サステナブル・アクションを)やる」性質があることを紹介した。節水や詰め替えについては日本でも肯定的な結果が出やすいことに触れ「『お得だからやる』意識が強い。取り組みのメリットが自分以外にもあることを、企業も消費者も改めて認識してもよいのでは」と課題意識を述べた。

    ブランドに対する評価の観点については、企業の人権意識とその企業への評価が結びつかないことに対し「日本では不買運動があまりなく、ブランドを支持する・しないという意識が浸透していない」(田中理絵氏)、また社会的責任・環境的責任別の評価で、高い評価を受ける企業に大きく差が無いことには「分けて考えず、『良いブランド』という捉え方があるのかもしれない」(田中宏昌氏)といった意見が飛び交った。

    青木氏は最後に、「日本の中ではリーダーでも、グローバルのトレンドとは乖離している可能性がある。企業がグローバル発信を強化し、どうリジェネレーションしていくかが問われている」と述べ、セッションを締めくくった。

    written by

    横田 伸治(よこた・しんじ)

    サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

    東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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