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  • 公開日:2022.06.08
  • 最終更新日: 2025.03.28
アジアのアート文化をNFTを使って世界へ――TBS 秋沢淳子氏
  • 三谷 真依子

最新のテクノロジーを使ってアーティストを育て、アジアの持続可能な社会を築く力に――。TBSでアナウンサーを務める傍ら、20年以上にわたってアジアの子どもたちとの交流を続ける秋沢淳子氏がサステナブル・ブランド国際会議2022横浜に登壇し、2020年にカンボジア、スリランカ、タイの3カ国からスタートさせた、才能あるアーティストをデジタル技術を通して発掘・支援するプロジェクトへの思いを語った。秋沢氏がいま、アジアのアーティストの作品を世界に発信する理由とは?(三谷真依子)

壇上のスライドにカラフルな色彩と生きる力に溢れた作品が次々と映し出される。

「友達の似顔絵です」

「喜びと幸せに満ちた、戦争のない平和な世界をイメージしてみました」

初めて作品を世に出した若いアーティストたちが顔を輝かせる。アジアの国々では急速な経済発展とともにいまアート文化が開花しているという。

秋沢氏は1991年にTBSに入社。28年間アナウンサーとして勤務し、現在はCSR推進部部長を務める。一方、プライベートでは2000年に任意団体としてスプートニクインターナショナルを設立し、スリランカを中心に、日本語教育や児童養護施設の運営を通じて国際交流の大切さを訴える活動を続けてきた。

そのなかで発見したのが「多くの人たちが絵を描くのが大好きだということ」だったという。同じように各地域で活動する仲間とも「素晴らしい技術があり、才能を持ったアーティストがたくさんいるのに、世の中に出ていかない」と話は広がった。そうして誕生したのが、アジアの途上国のアーティストが、世界の表舞台に出るチャンスを作り出すことを目的に最新テクノロジーで絵画を発信する「ホワイトキャンバスプロジェクト(White Canvas Project)」だ。

その最新のテクノロジーの一つは、ネット上で絵を楽しむVR技術。発表された作品は、カンボジア発のVRプラットフォーム「COMONY」内のバーチャル美術館で鑑賞でき、空間内を訪れた人(アバター)同士がコミュニケーションをとることもできる。さらには作品をブロックチェーン証明書となるICタグ付きで販売することで、作品が二次使用される場合にも作家に売り上げが還元される仕組みを構築することに成功した。

秋沢氏によると、このような、いわゆるNFT(非代替性トークン)と呼ばれるブロックチェーン技術を活用してアートを世界に広める動きは「東南アジアのような後進国の方が実は力が入っている」という。状況的には「見渡す限り田んぼが広がり、画廊はないが、みんな携帯電話は持っている」という中から、「良い作品を見つけ出してまずはアジアの仲間に提示し、そこからインターナショナルにもっていく」ための、最先端の取り組み。重要なのは最新のテクノロジーを使って文化を盛り上げ、それによってアジアに持続可能な社会をつくることだ。

2020年にカンボジア、スリランカ、タイの約900点から始まったプロジェクトは、2021年にはそれぞれの隣国を合わせた6カ国の約2000点にまで拡大するなど、その輪が広がり続けている。

「絵画というとヨーロッパの評価が高いイメージがあるが、当然ながらアジアにも素晴らしいクリエイターがたくさんいる。そういう人たちをアジアのネットワークで底上げし、次にその人たちが地域の子どもたちに絵を教えるといった活動につなげていきたい。石を投げると波紋が広がるように、いくつもの波紋が重なって大きな活動に広がっていくのがこのホワイトキャンバスだ」

プロジェクトの未来をそう語り、アジアのアーティストたち同様に目を輝かせる秋沢氏。近い将来、アジアから世界的なアーティストが生まれるのも夢ではない。

written by

三谷 真依子(みたに・まいこ)

高知県出身。文芸創作を経てフリーライター。都内の大学に在学中、友人の誘いで、関東で高知をPRすることを目的とした学生団体の立ち上げに参加。同団体で、高知の食文化をはじめ地域で働く人々の想いや地方の持続性に触れ、記事執筆を始める。

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