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  • 公開日:2021.01.27
  • 最終更新日: 2025.03.02
世界で最も持続可能な100社:1位は仏シュナイダー、日本はエーザイなど5社がランクイン
    • 小松 遥香

    2021 Global 100 ranking

    カナダのメディア・投資調査会社『コーポレート・ナイツ』は毎年恒例の「世界で最も持続可能な100社(グローバル100インデックス)」を発表した。8080社の中から1位に選ばれたのは産業用電機大手の仏シュナイダーエレクトリック。脱炭素社会への移行に貢献するソリューション事業や人種・性別の多様性などへの取り組みが高く評価された。日本企業は、国内トップ16位のエーザイをはじめ5社がランクインした。今回のランキングでは、深刻化する気候変動や新型コロナウイルス感染症、ブラック・ライブズ・マターなどの世界情勢を背景に、新たに「クリーンな投資」「有給病気休暇制度」「役員の人種多様性」が評価指標に加わった。(小松遥香)

    コーポレート・ナイツは、現在の世界の動きについて、2008−2009年の世界金融危機とは異なり、経済が停滞する中でも持続可能な脱炭素社会を見据えた再建の方向に進んでいると見ている。そして、グローバル100に選ばれた企業は、パンデミックからの復興という困難に直面する中でも、将来を見据え、持続可能性につながる取り組みを維持してきた企業だという。

    トップ10

    1位:シュナイダーエレクトリック (フランス・電気機器)
    2位:オーステッド (デンマーク・電力)
    3位:ブラジル銀行 (ブラジル・金融)
    4位:ネステ (フィンランド・エネルギー)
    5位:スタンテック (カナダ・コンサルティング)
    6位:マコーミック・アンド・カンパニー (米国・食品)
    7位:ケリング (フランス・アパレル)
    8位:メッツォ・オートテック (フィンランド・建設およびエンジニアリングサービス)
    9位:アメリカン・ウォーター・ワークス (米国・水道)
    10位:カナディアン・ナショナル・レールウェイ (カナダ・鉄道)

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    日本企業5社

    16位:エーザイ
    32位:シスメックス
    41位:コニカミノルタ
    51位:積水化学
    71位:武田製薬

    地域別では、米国・カナダが33社、欧州からは全体の約半数にあたる46社がランクインしている。アジア太平洋地域では、日本の5社のほかTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)やシンガポールのシティ・デベロップメンツ、韓国のサムスンSDI、中国のレノボなど17社。南米からは2社、アフリカ1社、中東1社という内訳になっている。

    注目企業として取り上げられているのは、低価格の新型コロナワクチンを開発・販売し、今後、世界的危機の解決に貢献するとされる英製薬大手アストラゼネカ(82位)。このほか、米オーウェンスコーニングやトレイン・テクノジーズといったグリーンビルディングや不動産空間関連の事業を行う企業もランク内に増えてきているという。

    一方、昨年、グローバル100に入った企業のうち、今回は26社がランク外になった。代表例として挙げられているのがトヨタ自動車と独化学大手BASFだ。前者は内燃機関車への依存度の高さ、後者は気候変動対策に反対するロビー活動を行っていると英シンクタンクInfluenceMapから指摘されていることが理由として挙げられている。

    Corporate Knights

    ランキングの調査対象は、総売上高10億米ドル以上の株式会社8080社。企業が開示する財務報告書やサステナビリティ報告書、ウェブサイトの情報をもとに、24のKPI(重要業績評価指標)から各社を評価している。

    評価指標に含まれるのは、エネルギー生産性、温室効果ガス排出量、水生産性、廃棄物生産性、揮発性有機化合物生産性、窒素酸化物生産性、硫黄酸化物生産性、微小粒子状物質生産性、クリーンな収益(環境・社会への貢献度の高い製品やサービスから得た収益)の割合、クリーンな投資(R&D、設備投資、買収など)の割合、負傷者、死者数、離職率、有給病気休暇、CEOの報酬と従業員の平均報酬の比率、サステナビリティ目標と連動した役員報酬制度、男性以外の執行役・取締役の割合、執行役・取締役の人種多様性、サプライヤーのサステナビリティ・スコア、納税率、企業年金の質、罰金・違約金などの制裁の24項目。

    「サステナビリティはビジネスの中心になっている。新たなKPIの導入は、サステナビリティが常に進化するもので、企業もそれにあわせて進化しないといけないことを示している」――コーポレート・ナイツ

    調査した8080社のクリーン投資の割合の平均は22%、グローバル100企業は33%という。また100社のうち60社は「SBT(科学に基づく温室効果ガス削減目標)イニシアティブ」に署名している。

    トップのシュナイダーエレクトリックは、この20年間で脱炭素社会への移行を促進する事業に注力し、現在では収益の7割を持続可能なソリューション提供事業から得ており、また投資においてもその7割を同事業に充てているという。こうした取り組みで重視しているのが、顧客のソリューションの一部になること、株主価値からステークホルダー価値への転換だ。一次サプライヤーには二酸化炭素排出量の50%カット、人権の尊重を求めている。高く評価された指標は、クリーン収益・投資の割合、エネルギー生産性、炭素排出量、廃棄物量、安全性、役員のジェンダー・人種の多様性に関するもの。

    コーポレート・ナイツによると、グローバル100が始まった2005年2月から2020年12月末までの期間において、グローバル100インデックスの投資収益は263%で、ベンチマークのMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)の220%よりも高いという。企業の平均寿命についても、MSCIが53年なのに対してグローバル100は74年とより長い。このほか、グローバル100インデックス企業は、クリーンな収益の割合、男性以外の取締役の割合、サステナビリティ目標と連動した役員報酬制度、10日以上の有給病気休暇を与える企業の割合においても、MSCIインデックス企業に比べて取り組み割合が高い。

    written by

    小松 遥香(こまつ・はるか)

    アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。一般企業で働いた後、出版社に入社。2016年から「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。前Sustainable Brands Japan 編集局デスク。

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