• 公開日:2020.10.15
イケアが世界27カ国で家具買い取り、11月に#BuybackFridayキャンペーン実施へ
  • 廣末 智子

1年で最も盛大に買い物が行われる日「ブラックフライデー」。この日に衝動買いとは対極に、ある物を大切にする消費行動を促そうと、日本を含む世界27カ国のイケアストアで来月の第4金曜日、「#BuybackFriday(バイバックフライデー)」と銘打った家具の買い取りキャンペーンが一斉に実施される。不要になった家具を買い取り、新たな消費者へとつなぐもので、販売が難しい製品についてはイケアが責任を持ってリサイクルするという。コロナ禍での年末商戦における消費喚起に期待が高まる中、「サーキュラーエコノミー(循環型経済)と気候変動対策」をサステナビリティ戦略の柱に据えるイケアが打ち出した販売戦略に注目が集まりそうだ。(廣末智子)

イケア・ジャパン(千葉・船橋)の親会社で、30カ国380のイケアストアをフランチャイジーとして運営するIngkaグループ(オランダ)が14日、発表した。日本では11月26日から12月6日までを「サステナブルウィーク」と称してキャンペーン期間とする(詳細は後日公開の予定)。

ブラックならぬバイバックフライデー

11月の第4金曜日は、米国では感謝祭翌日に当たり、毎年、この日に大規模なセールが始まり、年間でいちばん売り上げが多いとされてきたことから、黒字を想起させる意味合いで「ブラックフライデー」と呼ばれてきた。これが徐々に世界に浸透し、最近では日本や欧州でも年末商戦の幕開けとともに1年で最も消費が喚起される日のような意味でこの言葉が用いられている。今回、同社がこれになぞらえ、「ブラックフライデー、ならぬバイバックフライデー」というキャッチコピーによるキャンペーンをこの時期に打ち出すことになったとみられる。

同社によると、イケアは、消費者が「新しい家具をどのように家に取り入れ、どのように愛用し、そして不要になったらどのように次に生かしていくか」という視点で、規模の拡大にも対応可能で、ビジネスとしても採算の合う、新しいビジネスモデルの確立を目指している。今回のキャンペーンもその一環で、27カ国のストアで数千点におよぶ不要になった家具を買い取る見込み。家具の買い取りサービスは日本をはじめ一部のストアですでに行っているが、世界中の店舗で大規模かつ一斉に行うのは、77年にわたるイケアの歴史で初の試みとなる。

1.5度目標へーー企業超えて活動

商品のすべてを再生可能、またはリサイクルされた素材で製造することを含め、2030年までに循環型でクライメート・ポジティブなビジネスの実現を目指すイケア。ここで言うクライメート・ポジティブとは、イケアのバリューチェーンで排出される温室効果ガスを上回る量のガスを削減することを指し、コミットメントでは、パリ協定に沿って産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるよう、一つの企業の枠組みを超えて活動することを表明している。根本にあるのは、廃棄物をなくし、修理、再利用、修繕、そしてリサイクルという循環をつくり上げるには、消費者と企業、地域コミュニティ、そして政府の協力や投資が不可欠という考えだ。

Ingkaグループでは循環型の消費行動をより身近で便利にするためのソリューションを模索中で、昨年はグループ全体で4700万点の商品を回収し、再梱包、再販売につなげた。各国の店舗の取り組みとしては、古い家具の再販や修理、返品、慈善団体への寄付などを行うイケア・ベルギーや、今秋、ストックホルム市内に世界初の中古品専門イケアストアをオープン予定のイケア・スウェーデンなどのほか、イケア・ジャパンでも家具買い取りサービスを実施しており、すでに1万3千点以上の商品を次の持ち主へとつないだ実績がある。

衝動買い促進より、第二の人生の手助けを

同グループによると、現在、世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量の45%は家具などを含む日用品の生産および使用方法が原因とされており、このことからも、イケアとして「人々にサステナブルな消費行動を促し、モノの消費から生まれる環境への影響を考える機会を提供していく」考え。同社のStefan Vanoverbeke ・リテールオペレーション副マネージャーは、「今年のブラックフライデーは、商品の衝動買いを促進するよりも、お客さまが持っている家具に第二の人生を与える手助けをしたい」と話している。

欧米を中心に、新型コロナウイルスによって影響を受けた社会や経済を、脱炭素や循環型経済など持続可能な方法で復興しようとする「グリーン・リカバリー」の機運が高まる中、イケアは、各国政府に対し、2050年よりも早期にCO2の排出量を実質ゼロにする気候変動対策を踏まえた復興策を求める共同声明にも加わっている。今後も、2030年までの温室効果ガス排出量の半減に向け、「お客さま、地域コミュニティ、コワーカー、そして地球全体のために常にソリューションを模索しながら、クライメート・ニュートラルと循環型経済への変革をサポートし、より一層注力していく」としている。

written by

廣末 智子(ひろすえ・ともこ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局  デスク・記者

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年より現職。サステナビリティを通して、さまざまな現場の思いを発信中。

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