• 公開日:2018.06.18
「海洋プラごみ」問題に逆行、日本はPET増強
  • 瀬戸内千代

写真提供:NPO法人OWS

プラスチックごみが海に累積して2050年には魚の総重量を上回るという推計もある中、国内市場では缶からペットボトルに切り替えた商品が消費者に浸透している。サントリーは2017年に缶コーヒー商品の一部をペットボトル入りに変更。アサヒビールはこの夏、初のペットボトル入りノンアルビールを販売すると発表した。ただ、リサイクルは完璧ではなく、海で分解されるペットボトル素材も未開発で、大きな課題を残している。(瀬戸内 千代)

サントリー食品インターナショナルは2017年4月、「缶コーヒーやボトル缶コーヒーに馴染みがない『第3世代』」を意識してペットボトル入り「BOSS」を発売。初年度2億4000万本のヒット商品となり、2018年は自動販売機にも投入し、前年比1.5倍の販売を目指すと宣言した。

アサヒビールは環境NGOの指摘を受けてペットボトルビールの発売を2004年に見合わせたが、2018年は夏季限定でペットボトル入りノンアルコールビールを販売予定だ。前年の自社調査で顧客の約7割が「(ペットボトル入りなら)飲用量が増える」と回答したことが背中を押した。

容器包装リサイクル法により、日本のペットボトル回収率は約9割、リサイクル率は約8割と世界的に見ても高い。しかし、2016年の出荷本数は前年より約22億本多い227億本に達し、未回収のうち億単位の本数が海に出た可能性がある。

日本コカ・コーラ「い・ろ・は・す」の「環境にやさしいボトル」は原材料の5~30%が植物由来の「バイオプラスチック」だが、「生分解性プラスチック(以下、生プラ)」ではない。

もし土に還るペットボトルが実現しても、条件の異なる海には還らない。海底のペットボトルごみの画像などを「深海デブリデータベース」で公開している海洋研究開発機構は、2010年に低温・高圧の深海でも生プラを分解できる微生物の単離に成功したが、応用はこれからだ。

日本では2000年以降の度重なる法改正により、乳飲料や調味料までペットボトル入りに切り替わってきた経緯がある。消費者の多くも軽くて扱いやすいペットボトルを歓迎してきた。

欧州の国々や米国の州などでは販売時にPETボトルに課金するデボジット制が導入されている。デポジット制を今年から導入した英国政府は、来年にはストローなど使い捨てプラスチックの販売禁止に踏み切る。

日本政府は6月11日のG7首脳会議で「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった。海ごみ問題は国境のない海洋をめぐる世界の課題であり、規制を待たず、企業や個人が対策を始める必要がある。

written by

瀬戸内千代(せとうち・ちよ)

海洋ジャーナリスト。雑誌「オルタナ」編集委員、ウェブマガジン「greenz」シニアライター。

1997年筑波大学生物学類卒、理科実験器具メーカーを経て、2007年に環境ライターとして独立。自治体環境局メールマガジン、行政の自然エネルギーポータルサイトの取材記事など担当。2015年、東京都市大学環境学部編著「BLUE EARTH COLLEGE ようこそ、「地球経済大学」へ。」(東急エージェンシー)の編集に協力。

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