• 公開日:2018.06.13
広がるソーラーシェアリング、農地転用も10年に
  • 環境ライター・箕輪 弥生

植物の光合成の特性である「光飽和点」を利用したソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)

営農しながら発電事業を行うソーラーシェアリングが全国で1500を超え、広がりをみせている。農林水産省は、ソーラーシェアリングが担い手の所得向上や荒廃農地の解消につながる効果が見えてきたとして農地転用期間を3年から10年に延長した。さらに、事業者や関係者が情報を共有するために、一般社団法人「ソーラ-シェアリング推進連盟」が今年5月に発足。設立シンポジウムでは担い手の収入増加や若手後継者の組織化の事例も報告された。(箕輪弥生)

昨年の4月、ソーラーシェアリングのメッカとも言われる千葉県匝瑳市の「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」の落成式には小泉純一郎、細川護熙、菅直人の元首相らが駆けつけ話題となった。

ここは長い間耕作放棄地だった土地だったが、農地として再生しただけでなく、発電事業による収入により、環境保全基金として毎年200万円が地域のために使われる。さらに、地域の若手農家が合同会社を作って農作業を請け負う。地代は地元地権者に支払われ、市も固定資産税による税収増加となり、地域を循環する経済が生まれつつある。

このプロジェクトを運営管理する市民エネルギーちば合同会社(千葉県匝瑳市)の東光弘代表は「見学者だけでもここ1年で1000名以上が訪れ、移住者も増えている」と話す。今後は太陽光パネルの下で有機栽培した大豆や大麦を使い味噌・醤油やビールなどの加工品を作る6次産業化や、農村民泊など「パークファーム事業」も手がけていくという。

この例に代表されるように、これまで採算性が悪く耕作放棄地になっていた土地がソーラーシェアリングによる売電で安定収入を得て、農業を続けられるようになったり、地域活性化につながる事例は5月末に行われた「ソーラ-シェアリング推進連盟」でも報告された。

農林水産省ではこれまでの事例を分析し、条件が整えば3年の農地の一時転用許可を10年に延長することを発表した。担い手が営農を行う、2割以上の農作物の減収がないなどいくつかの条件があり、これまでと同様に再申請して認められれば続けられる。

匝瑳の事業にも融資を実行した城南信用金庫は、ソーラーシェアリング事業に力を入れており、関連会社を通じてリース事業を始めるなど、ファイナンスのスキームだけでなく統合的な事業支援を始めている。

*ソーラーシェアリング:地表から2.5m~4mの位置にソーラーパネルを間隔を空けて設置し、地上で農作物を育てる方法。太陽の光を植物の光合成と太陽光発電で分け合う(シェア)という意味。2013年に農水省が条件付きでの農地転用を許可した。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。

東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/

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