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  • 公開日:2017.11.06
  • 最終更新日: 2025.03.21
グッド・ライフの再定義は、消費者の幸せの探求から
    • JENNIFER ELKS

    9月末に第3回サステナブル・ブランド国際会議2017ブエノス・アイレスが開催された。金融、教育、大企業、ヘルスケア、都市計画、消費者、アクティビスト・ブランドなどの世界のさまざま組織が、変化する「グッド・ライフ」の定義をどう認識しているかを説明した。今回は後編をお伝えする。(翻訳:梅原 洋陽)

    前編はこちら

    コカ・コーラのグローバル・ウォーター・ステュワードシップ部長のグレッグ・コック氏は、コカ・コーラ南米で取り組むウォーター・ステュワードシップ(水資源保護)について紹介する予定だった。しかし、国際環境NGO「グリーンピース」の礼儀正しくもしつこい「いつ森林を再生させるの」というプラカードによって脱線した。

    コック氏はグリーンピースの参加者に対して、飲料業界大手のバリュー・チェーンを通して水を保護する取り組みを丁寧に説明し対応した。輸出をしないビジネスモデルを築くことで、流域を保全する取り組みに力を入れていると。

    メインテーマであるグッド・ライフに話を戻す。コック氏は、「全ての人が安全できれいな水を利用できる環境を整えなければグッド・ライフは達成できない」と話した。コカ・コーラは、透明性(流域保全に関するレポート等)、コラボレーション(NGOや政府、そして競合他社との取り組み)、そして地域やグローバルレベルでの問題提起をすることで、数百万リットルの水を守り、数千ヘクタールの森林を再生していると紹介した。

    森林再生(透明性)について付け足すと、コック氏のプレゼンテーション後に、コカ・コーラの南ラテン・ビジネス・ユニット副広報長であるソレダー・イスキエルド氏も、グリーンピースに回答した。グリーンピースは、アルゼンチンのサルタ州でレモンを栽培しスプライトに提供している会社が地域の天然林を破壊していると強く非難している。イスキエルド氏は、コカ・コーラはNGOと問題の根底を現在探っていると伝えた。

    ベン&ジェリーズ、社会に変化をもたらすブランディング

    アクティビズム(現状改革主義)に関連するテーマでは、ベン&ジェリーズの社会運動マネージャーのクリス・ミラー氏が講演を行った。同士は、どのように愛されるアイスクリームブランドが同社のCSRとアイスクリームファンの興味やニーズを合致させながらより良い世界をつくろうとしているかを力説した。

    何世紀にも渡って教会が社会の中で最も力を持ち、その次は政府、そして現在は企業が力を保有している。消費者と関わらないことは企業にとって不利益でしかないとミラー氏は言う。

    アイスクリーム業界の中で、ベン&ジェリーズは社会変革をけん引することで差別化を図っている。ミラー氏は、ベン&ジェリーズの意見広告(issue advocacy)と伝統的なコーズ・マーケティングとの違いを説明した。

    企業は世界に起こしたい変革にまず取り組むことから始めるべきで、ファンが求めることを追求するのではない。それが結果的に、揺るがないファン・ロイヤルティにつながるのだ。

    ミラー氏は5つのルールを伝えた。
    1. 大胆であること
    2. 価値観を共有し、変化を引き起こしていけるステークホルダーと働くこと
    3. パートナーがあなたのために何ができるかを聞くのではなく、あなたが変化のために何ができるかを考えること
    4. リスクがなければ、やる価値はないということ
    5. ブランドが少しの人達に嫌われるかもしれないが、大勢の人達に強く愛されるのであれば、リスクをとる価値はあるということ

    ホロノミクスアプローチとは

    ブラジル・サンパウロのコンサルティング会社「ホロノミクス・エデュケーション」の協同創設者のサイモン・ロビンソン氏とマリア・ロビンソン氏は、カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)に対する画期的な取り組みを報告した。このアプローチは忘れられがちだが重要なサステナビリティの要素を含んでいる。

    彼らのミッションは、ホロノミクスアプローチを基盤にカスタマー・エクスペリエンスを根本的につくり変えることである。ホロノミクス(holonomics)とは、経済(economics)と全体を意味するwholenessとを合わせた造語だ。全体的アプローチ(Holistic approach)は、特に西洋では数量化が最重視されるようになった影響で影を潜めた。ロビンソン氏は再びビジネス界に「全体」というコンセプトをビジネス界に取り戻そうとしている。

    グッド・ライフを活気のあるビジネスモデルと魂のこもったカスタマー・エクスペリエンスで再定義しようという試みだ。(彼らは実際に「魂のこもったカスタマー・エクスペリエンス」という本を出している)

    ロビンソン夫妻によると、「魂」という単語は、イノベーションについて表現する際に最もインパクトのある単語だという。

    そのことを説明するために、彼らはブラジルのヘアケア企業のレイシズ(Laces)について語った。

    同社のビジネスモデルは、従来の外見的な美しさを重点においてはいない。髪を自然な方法で保護することを追求している。サロンはバイオフィリックデザイン(そのままの自然を現在の建築物に融合させるデザイン)で、天然の無害なヘアケア製品を自社内で製造し、従来のヘアケア製品より廃棄物や汚染を引き起こしにくい画期的な方法を採用している。

    南米でのCSRの認知

    カスタマー・エクスペリエンスと言えば、カナダの民間調査会社「グローブ・スキャン」のアルヴァロ・アルメイダ氏はBBMGとの協同研究の調査結果を報告した。この研究は消費者のグッド・ライフの認識を探るものだ。

    アルゼンチンでは、企業をCSRで認識することはあまりない。ブラジルでは、政府や企業、新聞会社等の組織に対する信頼は極めて低く、消費者は企業のCSRの努力を信じていない。

    「グッド・ライフはどのようなものですか」と尋ねられると、南米の人々は世界中の人達と同様に4つの要素をあげた。健康・経済的安定・人との繋がり・目的意識だ。

    企業・ブランドは、「消費者にとっての幸せ」をブランド戦略とコミュニケーションの中心に置く方法を見つける必要がある。これは、世界中の消費者のロイヤルティを保つために不可欠なものだ。

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