![]() AG Socksのデザイナー、ロバート・カーダシアンさん(撮影Giuliano Bekor)
|
全米で展開する高級志向のデパートメントストア「ニーマン・マーカス」。昨年末、同デパートのメンズコーナーの壁一面に、まるでアートのように37パターンの色とりどりのイタリア製ドレスソックスが並べられた。(ロサンゼルス=寺町幸枝)
この「アーサー・ジョージ・バイ・ロバート・カーダシアン」という靴下は、有名なセレブ一家、カーダシアン一族の末っ子長男、ロバート・カーダシアンさんがデザインしている。
人気テレビ番組「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」に出演するなど、モデルやソーシャリストとしての華やかな一面が前面に出ていたが、実は南カリフォルニア大学(USC)のマーシャルビジネススクールを卒業した、ビジネスマインドの持ち主だ。これまでも、パーフェクトスキン、ライバルスポットなどの化粧品やゲーム関連のベンチャー企業と仕事をしてきた。
その彼がここ1年は靴下メーカー「ユニバーサル・ホルスタリー・インク」と組んで、ファッションビジネスに集中して取り組んでいる。ロバートの母、クリス・ジェンナーが、ニーマン・マーカスの上役と知り合いだったことがきっかけで、とんとん拍子に同デパート限定の商品作りが始まったという。エルメスのスカーフの柄や壁紙に使用されるパターンなどにインスピレーションを得て、カラフルなデザインのソックスを作り上げた。
![]() 足裏にもこだわったデザイン
|
1足買うと1足が寄付に
このアーサー・ジョージ・ソックスの特徴は、奇抜なデザインだけではない。1足30ドルとハイエンドな商品だが、1足売り上げるごとに、もう1 足が非営利団体「ファミリー・エマージェンシー・シェルター・コーリション」(FESCO、カリフォルニア州ヘイワード)に寄付される。FESCOは、ホームレスや貧困層向けにシェルターを提供し、自立支援を行うNPOだ。
靴ブランドのTOMSや眼鏡ブランドのワービー・パーカー同様、「ワン・フォー・ワン」スキームのソーシャル・ビジネスとして注目を集める。
同ブランドの広報・HLグループのティナ・ヤグジィアンさんによると、「年末の販売以来、すでに何千足ものソックスをFESCOに寄付している」という。ニーマン・マーカスは、具体的な売上高を公表していないが、販売推移について「非常に満足している」とコメントした。
LAタイムズでロバートさんは、「ソックスは自分にとって、こだわりのファッションアイテムの一つ」と語っている。だが、それ以上に「ソックス業界には、あまり競争相手がいない」と、ビジネスとしての優位性を実感しているようだ。
年内にはボクサーショーツやパジャマ、レディースのレギンスやタイツなど、商品を発展させる予定だ。地道な作業の積み重ねが作り上げるファッションの世界に、どっぷり浸かっている彼の活躍にこれからも期待したい。
寺町 幸枝(てらまち・ゆきえ)
Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。