• 公開日:2014.03.29
  • 最終更新日: 2025.03.21
36号 世界のソーシャル・ビジネス(フランス) ホームレスが運営するおしゃれなブティック
    • プラド・夏樹

    2013年のル・サロン・エマウスでのファッションショー (C)Alex Bonnemaio

    エマウスは、1954年にピエール神父によって創立された、ホームレスや前科者を支援するフランス最大のNGOだ。家具や衣類などの不要用品を回収し、安価で販売したり、スタッフとして雇用したりすることで、社会復帰の場を提供する。(パリ=プラド・夏樹)

    エマウスが運営するパリのブティックは、レトロな家具やヴィンテージなどを破格の値段で買える場として、フランスの現代社会のなかに深く根付いている。

    エマウスでは、前科者や刑務作業に服する人々、不法滞在者から路頭に迷う人すべてを、宗教や国籍の違いは問わず、無条件・無期限に迎え入れ、宿泊する場を提供している。国からいかなる補助金も受け取らないため、政治に翻弄されることもない。

    コミュニティーに参加する人々全員が廃品回収、リサイクルに参加し、自給自足の共同生活を営んでいる。昨年の売上高は4億6900万ユーロ(約660億円)にも上る。

    毎年開催される大エキスポ「ル・サロン・エマウス」では、リサイクルモードのファッションショーも行われ、2009年には、クリスチャン・ラクロワとステラ・カデンテも参加、リサイクル衣類を使ったモードを発表した。

    ピエール神父 (C)Sébastien Godefroy

    衣類リサイクル会社に発展

    ことのはじまりは1949年。刑期を終えて出獄したものの、生活の見通しが立たず自殺未遂をしたジョルジュ・ルゲイを見舞った故ピエール神父が言った。「僕は君に何もしてあげられない。でも、君は僕を助けることができるはずだ。自殺はやめて、僕がこれから困っている人々を援助するのを手伝ってくれないか」この一言が、エマウス・コミュニティーの第一歩となった。

    現在、フランス国内に116件あるエマウス・コミュニティーを支えるのは、47の社会復帰援助組織だ。なかでも最大の支援組織が衣類リサイクル会社ル・ルレである。ル・ルレは、もともとエマウスの幹部が中心となって1984年に立ち上げた会社だ。当時、エマウスのコミュニティーに身を寄せる人々を再就職させることができず、就職先として設立した。そのため、従業員はホームレスや職業資格を持たない人が中心だ。

    ル・ルレは、この30年間で業界のリーダー格としての地位を確保し、現在、市場の55%、年に約10万トンに上る衣類のリサイクルルートすべてを担っている。

    フランス中に設置された約1万6千のコンテナから回収された衣類のうち、再使用できる49%を輸出し、6%は国内の自社リサイクルショップで販売。10%は清掃用布に加工され、25%は自社で開発した 建築用断熱材・断音材「メチス」に加工される。

    1988年から働いているマリー・エレーヌは言う。「メチスは私たち全員の誇り。メチスを開発、生産するようになってから、私たちはただの屑拾いではなくなった」

    ル・ルレは2009年、シュワブ財団とボストン・コンサルティング・グループからソーシャル・ビジネス賞を受けた。

    現在、2200人を雇用し(60%が正規雇用契約)、労働者はすべて、5年後には株主になるワーカーズコレクティブでもある。5年来、年に12%の成長率を維持し続けており、エマウス誕生60周年を迎えた今年、4件の新しい回収センターを建設する予定だ。

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