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  • 公開日:2014.09.29
  • 最終更新日: 2025.03.21
38号 世界のソーシャル・ビジネス(ケニア) キオスクに太陽光未電化地域を照らす
    • 瀬戸 義章

    ケニアのエナジーキオスク

    東京大学が開発した最先端技術「デジタルグリッド」を用いた電力ビジネスが、アフリカの広大な未電化地域で始まっている。デジタルグリッドソリューションズ(東京・文京)が展開するのは、村のキオスクを充電スポットにすることで、コミュニティーに電気を届ける事業だ。(瀬戸義章)

    東京大学の阿部力也特任教授は、特殊なルーターによって電気にIPアドレスを付与し、「デジタルグリッド」を実現する技術を開発した。この技術を使えば、まるでインターネット上でデータを送受信するかのように、発電した電気を特定の場所に送ることや、使っている電気がどこで発電されたのかの判別ができるようになる。

    自然エネルギーによる発電は電圧・周波数が不安定だが、このテクノロジーを使えば、それをコントロールすることも可能だ。

    こうした最先端の技術を用いたビジネスが、意外なことに、アフリカの未電化地域で始まっている。

    東大発のベンチャーであるデジタルグリッドソリューションズが取り組むのは、「エナジーキオスク」による充電ビジネスだ。日用品を販売する雑貨屋、キオスクの店舗にソーラーパネルを設置し、未電化地域の住人に、携帯電話やLEDランタンの充電や貸し出しを行う。

    広大な土地の家々に一本一本電線を引くのではなく、人々が集まるキオスクを充電スポットとすることで、そのコミュニティーをまるごと電化しようというのが同社の発想だ。キオスク一軒当たりの商圏は100-1千世帯であり、そこがエナジーキオスクになれば、一度に数千人の人々が電気を使う事ができるようになる。

    東大が開発した特殊な充電装置

    灯油から電気照明へ

    デジタルグリッド技術を用いた充電デバイスは、スマホアプリで管理する。例えば、100ケニアシリング(約100円)を指定すれば、その分だけ電気が充電される。こうしたデータはオンラインで転送され、誰が、いつ、どこで電気を購入したのか、見える化される。こうした機材一式のリース料と、電気の卸値が同社の収益源となる。

    ケニアではおよそ400万世帯が未電化であり、彼らは照明として灯油を1日に30シリング(約30円)支払っている。これを「明かり」に対するマーケットと考えれば、その市場規模は438億円、アフリカ全土では8200億円と巨大なマーケットになる。

    「そのコミュニティーに電気を届けることで、明かりだけでなく、医療や教育・情報など、多方面の需要を掘り起こしたい」

    デジタルグリッドソリューションズの秋田智司社長はこう語った。

    東京大学エッジキャピタル(UTEC)の投資を受けた同社は、昨年から事業を本格的にスタートさせた。現在は、ケニアの電力会社ケニアパワーと協働しつつ、5カ所のキオスクでパイロット事業を行っている。今年中に、ケニアとタンザニア両国に16カ所のエナジーキオスクを設置する計画だ。2015年の売り上げ目標は5千万円である。

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    written by

    瀬戸 義章(せと・よしあき)

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