![]() ボン・プール・クリマのフランソワ・パストゥ会長
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フランス国内で、レストランやカフェでCO2削減に効果がある料理を出す動きが広がっている。仕掛人は、COP21に合わせて2015年末にレストラン経営者や食のジャーナリストが設立したNPOボン・プール・クリマだ。国の機関や地方自治体の支援を得て、レストランに環境に配慮したメニューにするよう働きかけている。(パリ=羽生のり子)
ボン・プール・クリマの目的は、高級レストランを含む外食産業界に、CO2削減への協力を呼びかけることだ。「ボン」は「良い」「気候のために良い(おいしい)」という2つの意味を持つ。
フランスでは、食べ物から出る温室効果ガスが全体の3割を占める。「ボン・プール・クリマ」に参加することで、化石燃料由来の温室効果ガスの排出を半減できるという。
会長は、パリのレストラン「レピ・デュパン」のシェフ、フランソワ・パストゥさん。ミシュランガイドに「高品質のレストラン」として掲載されている店で、有機性廃棄物をリサイクルに出し、地元イル・ド・フランス地方の野菜果物を使うなど、環境負荷の低減に取り組んでいる。
「ボン・プール・クリマ」では、肉を半分以下の量に減らし、付け合わせの野菜、穀物、豆類を主役にすることを呼びかける。大量の穀物や大豆を家畜に食べさせて肉を作るのは、エネルギーの無駄が多いという考えからだ。
パストゥさんは、前菜には野菜、主菜で肉を使うときは牛よりも鳥か豚、魚の場合は「持続可能な漁法」で獲られた魚をすすめている。デザートでは、乳製品よりも果物を使う。南国の果物の場合は、航空便でなく船便で届いたものかを供給業者に確認するようにも呼びかける。地元産の新鮮な食材と野菜をたっぷり使うことで、地域の農業を発展させることも狙いの一つだ。
事務局長で食のジャーナリストのジャン=リュック・フェサールさんは「対象はレストランだけではなく、カフェ、惣菜店、ホテルも含まれます」と説明する。
![]() CO2削減を考えたダヴィッド・ロワイエさんのレシピ。ウェブサイトで公開している (C)Dion Thomas
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「COP21ラベル」を取得
レストラン会員の数は約150。サイトで会員店として公表されるほか、来店客には公共交通機関をすすめるといったノウハウも指導される。
ヴィエンヌ県にあるホテル・レストラン「レ・ゾランジュリー」は、自家菜園を持ち、ヨーロッパのエコラベルを取得している。同店のシェフ、ダヴィッド・ロワイエさんは「地元の旬の食材でメニューを考え、生産者の名前も出しています。それを気に入る常連客も多い」と言う。
「ボン・プール・クリマ」は2015年、気候変動に対し、独創的な活動をする団体や自治体に国連が付与する「COP21ラベル」を取得した。次はCOP22の開催国モロッコのレストランに加入を呼びかけ、「COP22ラベル」を取得することを目指す。
羽生 のり子(はにゅう・のりこ)
環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。