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今年5月22日―25日に米国ミシガン州デトロイトで開催されたサステナブル・ブランド(略称SB)国際会議2017の報告会が7月4日、東京・築地で開催された。日本から同会議に参加した3人が、会議の様子や今年のテーマ「グッド・ライフの再定義」について約70人のセミナー参加者に報告した。(オルタナ編集部=小松遥香)
SB国際会議は毎年、共通のテーマを決めて、世界11カ国12都市で開催されている。サステナブル・ブランド ジャパンを運営する博展の鈴木紳介取締役は、5月の会議に世界30カ国から2000人以上が来場したことを報告。日本では、2018年3月1-2日にヒルトン東京お台場で「SB国際会議 2018 東京」を開催すると発表した。
これまで毎年新たなテーマで開催されてきた同会議だが、2017年から3年間は「グッド・ライフ」をキーワードに会議が開催される。「『グッド・ライフ』の再定義」の次に準備されているテーマは、2018-2019年では「『グッドライフ』 の リデザイン」、そして2019-2020年は「『グッド・ライフ』の実践」だ。
グッド・ライフに寄与すべき事業とは
![]() 青木茂樹・SB国際会議東京アカデミックプロデューサー
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青木茂樹・SB国際会議東京アカデミックプロデューサーは、企業は昨年のSB国際会議のテーマ「『存在意義』を揺り動かせ」でそれぞれの事業の足元を見つめ直し、これからは実際に自社の存在意義を社会の「グッド・ライフ」に繋げていく段階に入ると説明した。具体例として、米総合化学メーカーのダウや独総合化学メーカーのBASFが、SDGs(持続可能な開発目標)を各事業部に落とし込んでいる事例を紹介した。
さらに、青木氏は、消費に求められるものがマインドレスからマインドフルネス、経験(Experience)から旅(Journey)へと変わる中で、消費者(生活者)の視点はCSRから「グッド・ライフ」に変わっていくと話し、ブランドや製品、サービスがグッド・ライフの達成にどう寄与しているかが人々の関心になるとした。
最後に、2013年に財政破綻し、現在、さまざまな民間企業の力で復興に向けてグッド・ライフのために動き始めた開催地・デトロイトの様子を目にして、「社会的課題の解決をクロスバリューで図り、グッド・ライフを創造することが大切だ」と語った。
「グッド・ライフ」とは地球規模の課題解決への取組
![]() 森 摂・SB国際会議東京総合プロデューサー
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森 摂・SB国際会議東京総合プロデューサーは最初に、多くのグローバル企業がデトロイトの会議に参加している中で、日本企業のプレゼンスが低いと会議の印象をふり返った。続けて、グッド・ライフの「グッド」はソーシャルグッド(社会善)を指し、こうしたテーマが生まれる背景にはグローバル企業に対する社会からの要請があると語った。
さらに、自社のブランドを守っていくためには、ソーシャルグッドへの取り組みが大事であり、「グッド・ライフは大きなビジネスチャンス」になると説明。実際に、米国企業によるパリ協定離脱への反対キャンペーンや難民雇用などの動きが広がっている現状は、大統領に対抗することで社会からの評価を高め、社会を味方につける一つの手法だと話した。また、こうした動きはBtoC企業だけでなくBtoB企業からも高い関心を集めており、社会からのニーズに対応し、その声を聴いて行こうという企業の態度を感じたと言う。
![]() 金光英之・富士通環境CSR本部本部長
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今回の報告会では、SB会議に参加した企業の代表者として、金光英之・富士通環境CSR本部本部長も登壇。財政破綻したデトロイトで民間企業や社会起業家、NGO/NPOが「不屈のチャレンジ精神」を持ち、街を建て直そうとしている様子を振り返り、持続可能な社会を実現するにはこれまで以上に企業やNGOなどの役割と横の連携が重要になると説明。
そして、自社事業の観点から、サイバーセキュリティやプライバシーなどの社会的課題の解決に取り組むことがグッド・ライフを目指す上で重要な柱になると語った。金光氏は、日本でも今後、先進企業を中心に企業の環境・CSR活動はScope3を加味した上でCO2排出量のネットゼロを目指す動きが一般化するだろうと締めくくった。
第二部では、登壇した3人によるトークセッションが行われ、今回のSB国際会議に参加し、マーケティングやブランディングをとりまく潮目の変化を感じたと口を揃えた。そして、企業やNGO/NPOとの連携を日本でもさらに進めていく必要があると説明。こうした流れを受けて、来年3月に日本で開催されるSB会議においても、考えや意見をシェアするワークショップ形式を取り入れたいという構想が語られた。参加者からは、「消費者視点のグッド・ライフについて」や「サステナビリティとグッド・ライフの違い」、「米トランプ政権とビジネス界が掲げるグッド・ライフの定義が異なるが、そうした状況について国際会議ではどのように語られたか」などの質問が投げかけられた。
7月11日(火)には大阪で同セミナーを開催いたします。
参加登録・詳細はこちらから↓
http://www.sustainablebrands.jp/event/seminar/dt_report17/
小松 遥香(こまつ・はるか)
オルタナ編集部
アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。