• 公開日:2017.01.31
仏大手スーパー、野菜・果物の農薬量の半減を宣言
    • 羽生 のり子

    リモージュ市のルクレールの店舗  (C)site e-leclerc.com

    仏大手スーパー、「E.ルクレール」は2016年12月、販売する野菜と果物の農薬量を2020年に半減すると宣言した。その背景には、国際環境NGOのグリーンピース(GP)が始めたキャンペーンがある。GPは、大手スーパーの中で唯一、農薬についての質問に無回答だった同社をターゲットにし、果物の残留農薬が許容量ぎりぎりであると発表していた。(羽生 のり子)

    E.ルクレール(通称ルクレール)は、カルフールに次ぐフランス第2のスーパーだ。2016年は業績が良く、カルフールとの差は微小だった。この2社が市場の約4割を占めている。

    2015年5月、GPは「農薬ゼロ」キャンペーンを開始し、フランスの6大スーパーに対し、野菜・果物の中で年間の消費量が一番多いが農薬処理の回数も多いリンゴとジャガイモの農薬を減らすよう要求した。5社は何らかの回答をしたが、ルクレールは一貫して無回答だった。

    そのため、GPはルクレールの出荷センターの入り口を封鎖するなどのアクションを起こしたり、ルクレールの広告をもじって、「農薬入りのジュースをどうぞ」と勧めるパロディビデオをネットで流し、「農薬を減らすよう、ルクレールに手紙を書こう」と消費者に勧めた。

    キャンペーンから1年半後の2016年12月、ルクレールは2020年に野菜・果物全般の農薬を半減することを宣言した。キャンペーン中、GPは水面下でルクレールの幹部に面会を要求しており、2016年の夏以降それが実現、キャンペーンの影響を重く見たルクレールが、GPの要求以上の実現を約束したという結果になった。

    GPのロール・デュコス農業キャンペーン担当は、「2020年までという短期間に本当に実現できれば素晴らしいことだ」と言う。実現に向けて、農家への技術的、経済的援助や、栽培方法の決定などクリアすべき問題が残っている。計画の進行状況ついてルクレールに問い合わせたが、答えられる人が1月末まで忙しいとの理由で返答は得られなかった。

    大量に農作物を仕入れるスーパーが農業に与える影響は大きい。大手が変われば、業界全体へのインパクトが大きく、農業が変わる、とGPはみている。

    written by

    羽生 のり子(はにゅう・のりこ)

    環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。

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