![]() ヘミングス・ハウス・ピクチャーズのヘミングスCEO Image credit: Albert Chau/Sustainable Brands
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ミレニアル世代の出現によって市場が変わってきている。2000年以降に成人を迎えたミレニアル世代は、既存の価値観ではなく、個人の価値観に合う企業を支持し、働きたいと考える。では、どうすればその世代の価値観に影響を与えられるのだろうか。(編集・翻訳:オルタナ編集部=小松遥香)
いま注目を浴びているのは、映画を使ったストーリーテリング「フィルムストーリーテリング」だ。ブランド価値を高め、企業の意図に共感してもらう効果があり、社会の批判から企業を守る役割もあると考えられている。
サステナビリティが市場で欠かせないものになってきた昨今、企業はどう新たな強みを見つけていくのか。これは、今年11月にボストンで開催されたサステナブルブランド国際会議でも重要なテーマとして取り上げられた。
なぜフィルムストーリーテリングなのか
映画製作会社ヘミングス・ハウス・ピクチャーズ(カナダ・ニューブランズウィック)のグレッグ・ヘミングスCEOは、自社ブランドの社会的意義を上手く伝え、結果を出している企業例をいくつか挙げ、「知的でパワフルかつポジティブなストーリーテリングが求められている」と語った。
多くの企業が抱える最大の課題は、信頼を得ることだ。今や消費者は簡単に企業のサプライチェーンや従業員の待遇、製品品質に関するありとあらゆる情報を聞くことも調べることもできる。もし企業のブランディングが消費者の価値観とずれていたら、ブランド価値が大きく下がることもある。
企業が社会課題への認識を高め、情報を発信することで消費者に企業価値を伝えられれば、社会的価値も効果的に共有でき、消費者と企業の距離も近づく。広告のように企業が製作を主導するのではなく、実力のある作家に脚本をゆだねることで、ブランド価値を向上するストーリーテリングを行うことが可能になる。
ヘミングス氏と戦略的提携パートナーのジョン・ロバートソン氏は、例として、企業が製作したブランド価値にあった社会課題や環境問題を取り上げた長編ドキュメンタリーをいくつか紹介した。
・パタゴニア製作: 機能していないダムの撤去を訴えるドキュメンタリー映画『ダムネーション』
・俳優のヒュー・ジャックマンがチャリティーで運営するコーヒーブランド「ラフィングマン」製作:フェアトレードコーヒー農家を取り上げた『デュカリの夢』
・エスプレッソコーヒーブランドのイリー制作:コスタリカの女性のコーヒー豆生産共同体を扱った『世界の片隅で』
・ヘミングス・ハウス・ピクチャーズ製作:ミレニアル世代のアメリカンドリームを撮った『ミレニアルドリーム』
映画だから生み出せるものがある
これらは消費者の価値観と企業の価値観を一致させたフィルムストーリーテリングの一例だ。企業が主導権を握るコマーシャルのような手法ではなく、製作会社が主導して映画をつくることで、企業は結果的にブランディングを成功させられる。
ヘミングス・ハウス・ピクチャーズは、ブランドのストーリーテリングの方法として、企業の価値に沿った映画を製作することを薦める。
「映画は多くの人の考え方に影響を及ぼすことができ、大衆文化を生み出せる優れた技術だ」とヘミングス氏は話した。