• 公開日:2016.11.15
  • 最終更新日: 2025.03.21
オランダ企業が来秋、ココナッツの殻で輸送パレット生産
    • 川崎 陽子

    ココナッツの殻でできた輸送用パレット(C)CocoPallet

    アムステルダムのベンチャー企業、ココパレット(CocoPallet)社は、大量に廃棄されているココナッツの殻を原料に、輸送パレットをインドネシアで来年9月から量産する。このココパレットは100%生物分解可能とされ、従来の木材パレットにかかる害虫消毒処理のコストや時間を省けるうえ価格競争力もあるという。同社は今後、アジア地域を対象に需要を見極めながらこうした木材不要のパレット生産工場を順次増設していく計画。

    ココナッツの年間収穫量は、FAO(国際連合食糧農業機関)によると700億個を超えるが、その殻は15%ほどしか利用されず廃棄されているという。オランダのワヘニンゲン大学では、ココナッツの殻を使った製品を開発するため、FAOなどの助成の下で2000年から研究成果を蓄積しながら、産業界とも協力してきた。

    そのような産学共同プロジェクトから生まれたのが、ココパレット社だ。2017年9月からインドネシアの工場で年間500万枚の量産を開始する。原料となるココナッツの殻を買い取ることで農家の収入が増え、工場の雇用でも地元に貢献できる。

    農薬も合成接着剤や釘も使わない100%植物性のココパレットは細断が可能で、堆肥化やリサイクルなど使用後の用途研究も進められている。エコロジーが特長だけではない。20枚のココパレットを重ねた高さは0.75mで、従来のパレット2.70mに比べて保管場所も節約できる。

    毎年生産される50億枚の木材パレットのために、5億本の木が伐採されるといわれる。ココナッツの殻が大量に廃棄される一方で、パレット用木材を輸入しているアジアの国々。同社は、この地域で年間10万パレット以上輸送する大企業が、検疫コストも時間も省けるうえサステナブルなココパレットを利用することを期待し、工場の増設を目指している。

    written by

    川崎 陽子(かわさき・ようこ)

    欧州ドイツ語圏在住の環境ジャーナリスト。

    横浜国立大学卒業後、日本企業の研究職、米国企業の顧客エンジニアを経てドイツに留学。アーヘン工科大学で応用工学修士(環境学・労働安全)を取得。(株)バイエル社本社の労働安全部署、ケルン市役所環境行政部署で実習も経験した。ドイツ連邦経済省直属消費者研究所の通信教育「環境コンサルタント」修了。 公害大国日本が、なぜドイツのような環境先進国になれなかったのかを追究中。主な要因として、中央集権制官僚主導金権政治の問題、地域主権のドイツと行政や教育、メディアなどの大きな違いがある。また、「核兵器と原発の廃絶」、「低線量被ばく問題」、「将来世代のための持続可能な社会」というテーマにも取り組んでいる。共著「福島原発事故の放射能汚染 問題分析と政策提言」(世界思想社 2012年)、共著「公害・環境問題と東電福島原発事故」(本の泉社 2016年)。

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