• 公開日:2016.11.01
仏シェフ、バイエル・モンサント合併に危機感表明
    • 羽生 のり子

    仏で著名なシェフ、オリヴィエ・ロランジェ氏は農薬や遺伝子組み換えの使用に危機感を表明した

    農薬・医療の大手企業、独バイエルは9月、遺伝子組み換え種子の世界最大手、米モンサントの買収を発表した。両国での独禁当局の承認が得られれば、この合併で巨大な農薬・遺伝子組み換え企業が出現する。仏飲食業界のウェブ有力誌「アタビュラ」は、合併に危機感を表明する飲食業界人247人の合同公開状を発表した。同誌発行人の発案によるもので、ミッシェル・ブラス氏ら著名シェフも署名している。同誌は英仏西語でネット署名を呼びかけている。

    「アタビュラ」は、問題提起をする飲食業界誌として、業界内で有名だ。発行人のフランク・ピネー・ラバルスト氏が公開状を書き、知り合いのシェフたちに署名を呼びかけた。「この合併で新しくできた種子・農薬メーカーが目指すのは、土に生える種から食卓まで、我々の食糧をすべてコントロールすることだ。その野望は、生物の多様性や住民の健康を無視して、全大陸で利益を上げることである」と糾弾している。

    「シェフもその他の飲食業界人も、質の良い安全な食材と文化の多様性なくして才能を発揮することはできない」とし、この合併に対する不安を公に表明する必要があると主張している。

    署名者の筆頭は、高級ホテル・レストランの連絡網「ルレ・エ・シャトー」副会長でシェフのオリヴィエ・ロランジェ氏だ。ロランジェ氏は、「料理人の役割は、おいしい料理を作ることだけではない、良い生産者を擁護することも大切だ」と言い、一握りの人に世界の食を支配されることに反対している。

    日本人シェフで唯一、公開状に署名した田中淳氏は「遺伝子組み換えには反対だ。大量に食料を作るためのものだが、大量に作って食料廃棄を増やすような技術はよくない」と、署名の動機を説明した。

    公開状には、このほか、ヤニック・アレノ氏、ミッシェル・ゲラール氏らの三つ星シェフや、仏大統領官邸のシェフ、ギヨーム・ゴメス氏も署名している。

    written by

    羽生 のり子(はにゅう・のりこ)

    環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。

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