![]() 風況のいい秋田県にかほ市にある生活クラブ風車「夢風」(ゆめかぜ)
|
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(本部東京・新宿)(以下、生活クラブ生協)は、自然エネルギーによる電気の提供を10月から全国に広げる。6月から首都圏の組合員向けに自然エネの供給を始めていた。同組合はCO2削減や脱原発を目指し、現在では供給電力量のうち自然エネが6割を占める。将来的にはこの比率を10割にまで高めたい考えだ。
全国に約35万世帯の会員をかかえる生活クラブ生協は、組合員も参加して食品などの消費材を開発し共同購入をする団体である。同組合は、食だけでなくエネルギーにおいても自給率を高めたいと早い時期から自然エネルギーの開発についても検討を重ねてきた。
これまで各地の事業所に太陽光発電装置を設置したり、北海道や秋田に自前の風車を建設するなどして全国39カ所に自然エネ発電所を開発。同組合の事業所への高圧電力の提供に加え、今年6月から首都圏の組合員対象に電力供給をスタートした。
6月の応募では、限定1,500世帯への提供のところ3,500件の応募があったが、10月からはこれを全国の組合員に広げ、13,300世帯の募集を行う。同組合の半澤彰浩専務理事は、「風力や小水力発電なども増やし、将来的には100%自然エネを目指したい」と話す。
同組合は電力だけでなく、産地の素材を使った商品開発を進めるなど自然エネの生産地との連携を強めているのが特徴だ。半澤専務によると、「風車を建設した秋田県にかほ市では、組合員が開発に参加した特産品の売上などが大きく伸び、約2,000万円の経済効果があり、今年はその倍の効果が期待できる」という。
にかほ市では組合員と共に開発した加工用のトマトを使ったケチャップや鱈のしょっつるを使った麺製品、調味料などを含む「夢風ブランド」の売上が顕著に伸び、地域経済を潤している。
にかほ市企画課の佐々木俊哉課長は「地域経済への効果は市民の風車への意識を変え、市に新しい風が吹いている」と説明する。これに対してある組合員は、「自分たちのエネルギーという意識が生まれ、風車にも親近感を覚える」と話す。
同組合では地域、消費者双方に好影響を与えたにかほ市での取り組みの成果を受け、今後も自然エネ産地との交流や地域資源の開発を継続していく意向だ。
箕輪 弥生 (みのわ・やよい)
環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/