サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
コミュニティ・ニュース

持続可能な調達から「生物多様性」に取り組みを――2023年度第3回SB-Jフォーラム

  • Twitter
  • Facebook
サステナブル・ブランド ジャパン編集局

サステナブル・ブランド ジャパン主催の2023年度3回目のSB-Jフォーラムが、昨年11月、「生物多様性×調達」をテーマに開かれた。持続可能な社会のために、企業は「カーボンニュートラル」と「ネイチャーポジティブ」への取り組みが求められるが、生物多様性を考慮した時に基本となるのは、持続可能な調達でサプライチェーンの影響を低減することだ。森林、パーム油などの認証制度に対応し、調達部門からサステナビリティを実践しているマクドナルドの講演を受け、参加者は自社でできる生物多様性への取り組みを考察した。

冒頭、サステナブル・ブランド国際会議アカデミック・プロデューサーで、駒澤大学教授の青木茂樹氏がオンラインで登壇し、前回のフォーラム「パーパス×マーケティングコミュニケーション」について振り返りをした。「共感が大事なキーワードだったが、情報伝達の方法は30代が分岐点になる。コミュニケーションは世代によってツールを変える必要がある」と青木氏は改めて話し、ソーシャルメディアを活用したコミュニティづくりを紹介。一度、消費者とのつながりができ信頼が得られると、企業にとって非常に貴重なものになると話した。

企業の存続にかかわる生物多様性に対応を

足立氏

サステナブル・ブランド国際会議サステナビリティ・プロデューサーの足立直樹氏は、「生物多様性×調達」について講演し、まず生物多様性(自然資本)の上に原料や燃料などの生態系サービスが成り立っており、生活や企業活動はそれらに依存し影響を与えていると説明した。84兆ドルの世界GDPのうち、半分以上が自然に依存しており、対応を講じなければ、2030年には2.7兆ドルの損失があるという。

また生物多様性の損失は進行しており、4種のうち1種は絶滅の危機に瀕している。その原因となっているのが、人間活動だ。食肉用の牛を放牧するために森林を伐採したり、エビの養殖場を作るためにマングローブ林を伐採している。また携帯端末やパソコン製造に用いられる鉱石(タンタル)は、多くはゴリラの住む地域にあり、採掘のためにゴリラの生息を脅かしている。さらに「すでに9割以上の水産資源は危機的状況にある」と足立氏は危機感を募らせた。

(当日資料より)

こうした世界的背景から、生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)では、世界生物多様性枠組(GBF)が採択され、2030年までに生態系の損失を止めて回復に向かわせる緊急行動を取り、2050年までには生態系を大幅に増加させる「ネイチャーポジティブ」を定めた。この取り組みには、23の行動目標があり、企業にも大きく影響を与える。

「ネイチャーポジティブ実現のためには持続可能な消費と生産を考え、自然の保全を強化する企業努力が必要だ」と足立氏は強調した。EUは来年12月30日から、森林破壊防止を目的にした森林コモディティのデューディリジェンス(DD)を義務化する。例えば、パームオイルやカカオなどの原料と、その原料からできたチョコレートなどの商品まで対象になる。違反した場合、年間売上4%の罰則や公共調達や公的資金へのアクセスの除外などが課されるという。

足立氏は「調達はまさにネイチャーポジティブに大きく関わっており、対応しないと事業が続かなくなる。自社がどういう原材料を使用し、それが生物多様性にどういう影響を与えているかを把握してほしい」と訴えた。

サプライチェーン全体で実現したMSC認証の「フィレオフィッシュ」

ギレン氏

ゲストスピーカーとして、日本マクドナルド サプライチェーン本部 ストラテジックソーシング部 マネージャーのギレン巧氏が登壇し、自社が取り組んでいる持続可能な調達について講演した。まず、サプライヤー、フランチャイジー、マクドナルドの3者が支える「Three Legged Stool(3本脚の椅子)」という同社の強固なパートナーシップを紹介。それがあってこそ、“お客さま”が安心してこの椅子の上に座れる(食べられる)のだという。

(当日資料より)

同社はパーパスに「おいしさと笑顔を地域のみなさまに」を掲げ、4つの領域から取り組んでいる。その1つ「おいしいお食事をいつまでも」では、品質の見える化、衛生管理、持続可能な食材の調達から進めている。FSC認証やRSPO認証などを取得しているものの調達について、「第三者機関から認められたものをアピールすることによって、お客さまに安心していただき、環境、社会にも配慮している商品を食べているのだとご認識いただける」とギレン氏はメリットを挙げた。

メニューの一つである「フィレオフィッシュ」は、天然のスケソウダラを使用している。2019年にMSC認証を取得して日本で販売。漁業から最終的に消費者に提供する場まで全てに認証が求められたため、物流センター、店舗と多くのステークホルダーが認証を取得し実現した。だが、過剰な漁獲が世界的な傾向として発生しており、ギレン氏は、「水産資源や海洋生物の減少、生物多様性にも悪影響が出てしまう可能性がある。弊社は将来にわたってお客さまにフィレオフィッシュを含むハンバーガーを提供し続けたいという思いがあり、そのために持続可能な原材料の調達は重要であると考えている」と話す。

一方、同社では消費者とのコミュニケーションを大事にしており、店舗で使っているトレイマットやモバイルアプリなどで認証制度を説明したり、サステナビリティについて発信している。「いろいろな会社がそれぞれアクションを起こしていかないと、大きな社会問題を解決できない。弊社では、持続可能な原材料の調達を継続していく」と意気込みを語った。

続いての対談では、「お客さまに認証を取った商品の価値を分かってもらわないと、取り組みはなかなか進められないが、御社はコミュニケーションによって価値に昇華している」と足立氏が話すと、ギレン氏は「社内でも、なぜこうした取り組みをしているか理解することはとても大切。年に1回、MSC認証への取り組み意義を確認する機会がある」と続けた。

さらに足立氏は、「講演の中で何回も仰ってたが、『調達できなくなったら結局商売が成り立たない』という発想が素晴らしい。ギレンさんは調達担当だが、サステナビリティ担当者と話をしているようだ」と賛辞を送った。

それを受けてギレン氏は「サステナビリティ担当部署と調達部署は、必ずしもKPIが完全に合致するわけではない。結局サステナビリティを業務に落とし込むとなると、全ての部署が同意した上で進めないと難しいと思う。お互いの業務領域への影響を理解していくことが大事なのではないか」と話した。

また、参加者からサプライヤーとのエンゲージメントで重要なポイントを聞かれ、ギレン氏は「弊社の状況を細かく説明している」と回答。「日本ではこういうCMが流れて、こういうふうにお客さまに喜んでいただいていると話すと、サプライヤー自身が自分事化して考えてくれるようになる」という。

その後、参加者はグループごとに「自社の事業と生物多様性の関係」について意見交換した。あるグループでは、半導体の製造から水の利用や水質汚染、紛争鉱物でないかのトレーサビリティをどうするのかについて話し合っていた。また、消費者として生活の中から考えると、「電力が関連している」といった意見も出ていた。

最後に足立氏は「生物多様性に関係しない事業はない」と断言。さらに、毎日の食事からの環境負荷が大きいことを指摘し「まず食べ物を無駄にしないことが大事」だと力を込める。そして「ぜひ、今日のマクドナルドの事例を社内で共有してほしい」とまとめた。

フォーラム後の交流会の様子