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創業1872年、近江商人の心意気を大切に未来の種をまく「たねや」

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コミュニティ・ニュース

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創業1872年、150年を超える歴史を持つ老舗、たねやグループの原点は、本社を置く滋賀県近江八幡市にある。その経営理念は、 “商道は人道である”という精神を表した「天平道(てんびんどう)」と、柿を黄色く熟して売るように、自然に学びながら商売を育てる心を表した「黄熟行(あきない)」、そして、顧客に接する基本的な心構えを意味する「商魂(しょうこん)」の3つの言葉からなり、まさに琵琶湖畔の自然と、日本のサステナビリティ思考の原点ともいわれる「三方よし」を源流としていることがよく分かる。翻って現代。和菓子の「たねや」と、洋菓子の「クラブハリエ」のフラッグシップ店、「ラ コリーナ近江八幡」では、近江商人の心意気を引き継いだビジネスをよりサステナブルに進化させようとしているようだ。

ラ コリーナ近江八幡 https://taneya.jp/la_collina/
たねや https://taneya.jp/
たねや サステナビリティ「大切にするきもち」 https://taneya.jp/sustainability/

琵琶湖のほど近く、小道を抜けると低い笹の植栽が一面に続き、その先に屋根まで植物に覆われた大きな建物が見えてくる。「自然に学ぶ」をコンセプトにした、たねや・クラブハリエのフラッグシップ店「ラ コリーナ近江八幡」だ。ラ コリーナ(La Collina)とはイタリア語で「丘」のことで、2015年にオープンした。

ここはもともと近江八幡市の厚生年金施設があった場所で、新たに人々が集う、つながりの場をつくろうと、コンクリートを剥(は)がし、この地域に生きてきた植物、生物が育成する近江八幡の原風景を考えてつくられたという。後ろにそびえる八幡山とつながる里山をイメージしている。

あらためて全体を見渡すと、一面芝で覆われたメインショップの“草屋根”、本社は“銅屋根”、栗の木を100本以上使用したというカステラ専門店の“栗百本”と、すべてが植物と戯(たわむ)れている。回廊の屋根から銀色の糸になって落ちてくる滴に触れて子どもたちがはしゃいでいた。

1872(明治5)年創業の「たねや」は今年で創業151年目を迎えた。材木業から始まり、種苗業、そして和菓子屋になった。和菓子屋を始めたときに、もともと種を売っていた関係で地元では「たねや、たねや」とよばれていたことから、屋号を「たねや」にしたという。

「近江八幡の地元のみなさまにつけていただいた名前です」というのは、同社経営企画室の大村啓子氏。クラブハリエの創業は1951(昭和26)年だが、洋菓子をつくるようになったきっかけは近江八幡をベースに活躍していた建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏にあるようだ。

「近江八幡で病院や学校などをつくっていらした建築家のヴォーリズさんが、たねやの近所にお住まいだったそうです。ヴォーリズさんは西洋の方ですから、ティータイムやアフタヌーンティーなどの習慣があったんですね。その洋風文化を知ったたねやのお菓子職人が、これからは洋菓子も必要だと感じて始めたんです。ヴォーリズさんには直接お菓子のつくり方を教わったわけではなく、西洋の文化に触れさせていただくきっかけをつくっていただいたんですね」

以来、和と洋の両輪でお菓子をつくってきた「たねや クラブハリエ」には、近江商人の経営理念が息づいている。「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の精神が守られているのだ。

「私たちは『天平道(てんびんどう)、黄熟行(あきない)、商魂(しょうこん)』という三方よしを掲げています。一つ目の『天平道』。天秤棒というのは近江商人の商売道具でした。近江商人は天秤棒を担いで行商したんですね。天平道というのは、単に商品を売るのではなく、お客さまに喜んでいただくために人間性を磨くことがもっとも大切だという考えです。『商道は人の道』ということです。二つ目の『黄熟行』は、黄色く熟してゆく商い。昔、お菓子といえば果物で、なかでも柿だったんです。柿を手塩にかけておいしく育てて売る。それが大切なんですね。三つ目の『商魂』とは商売の心持ちのことで、今日はいかにお客さまに喜んでいただけたか、つねにお客さまのことを考える気持ちが大切ということです」

この「たねや・クラブハリエ」の三方よしの精神は、現在、社会的なムーブメントにもなっているSDGsへの取り組みに活かされている。いま、たねやのサステナビリティは「わたしたちの大切にするきもち」という言葉で表され、お菓子づくりを通して次世代へと、自然や人の営みを伝えていくことの大切さを呼びかけているのだ。

「私たちは自然の恵みをいただいて、おいしいお菓子にして皆さまにお届けしています。でも今の地球を思うと、ずっと続けていけることではないのかもしれないという不安もあります。食卓に不自由なくさまざまな料理が出てくことは決して当たり前ではない。それがいつまで続くのかなと考えたとき、やっぱり何かをしなければと思ったんです。それで私たちのサステナブルな取り組みとして『大切にするきもち』を掲げました」

〈2030年に向け、大切にすること〉では、未来へつながるビジョンを5つの柱に、サステナブルなお菓子づくりやカーボンニュートラルの実現、地域の伝統や文化の継承活動などを幅広く展開している。なかでも最近の取り組みとして力を入れているのが「ラ コリーナ」での活動だ。

泥まみれになって田んぼの土を掘り起こし、水を張り、苗を植え、雑草を取り、そして稲を刈る。地域のさまざまな人々が集まり、土に触れ、土に学び、楽しむ。ここはサステナブルな未来への具現のカタチを発見する場であり、発信地といえるだろう。それは近江八幡というこの地に連綿と続いてきた人々の絆と、大地の感触、色、味から生まれるのかもしれない。

「若い私たちにとって里山の風景とは、懐かしい風景ではありません。なぜなら里山を知らないから。そういう意味で、里山は最先端の風景なんです」と大村氏は語る。
失われた美しい環境をもう一度取り戻し、持続可能なビジネスを実現していくために、たねやグループは、大切な気持ちをつなぎながら、未来の種をまいている。