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デザインの力で循環型社会をーー「SB'23東京・丸の内」特別企画 「循環のレシピ サーキュラープロダクトデザインの現在地」開催中

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

2月14・15日に開かれる「サステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内」の特別企画として、サステナブル・ブランド ジャパンを運営する博展が主催する無料のエキシビジョンが、東京・丸の内のGOOD DESIGN Marunouchiで開かれている。タイトルは「循環のレシピ サーキュラープロダクトデザインの現在地」。会場ではバイオマスポリエチレンを原料とし3Dプリンターを使って製作された家具や、不要になったカシミヤを回収し再度カシミヤ製品にするなどといった取り組みを展示し、ここ数年で進んだサステナブル視点での新しいアイデアやマテリアル開発を通じて見えてきた課題を来場者に共有している。

持続可能な社会・経済の実現のためには、資源の廃棄をできるだけ抑え循環させていくシステムが必要だ。こうしたサーキュラーエコノミーの実現には、製作から廃棄までの循環を考えた今までとは異なる製品やサービスのデザインが求められている。

Spiberの寄附付きのTシャツ
古材を活用した一輪挿しやトタンで作ったケース

展示物を紹介しよう。
「Brewed Protein™」(Spiber、山形県鶴岡市)は、植物由来の原料をもとに微生物が発酵する過程によりつくられたタンパク質素材であり、織生地やデニム、レザーなどのアパレル素材に加工している。天然資源を生かしているため、廃棄するにも環境負荷低減が期待される。微生物の栄養源には、米国やタイで生産されるサトウキビやトウモロコシなどを使用しているが、同社は「持続可能な調達方針」を策定し、サプライチェーン全体の持続可能性と透明性、追跡可能性、説明責任を明確にした。さらに第三者認証機関や農家を支援するNGO、外部の共同研究先とともに取り組みを進めている。

ReBuilding Center JAPAN(長野県諏訪市)は、解体が決まった建物や空き家となった建物から古材や古道具を引き取り、新たな建築建材としてリサイクル販売したり、市民を対象に古材を用いたDIYのワークショップなどを開催している。国内の古材を循環させることでごみや輸送コストを減らし、「一度は役目を終えたものや文化の本質的な価値を見つめ直し、資源として再び利用されていく世界」を目指している。さらに運営に関わる人をサポーターズとして募集。市民を巻き込んだ取り組みを行っている。

鈴木氏(左)と三宝氏
棚の下に「ディスプレー」されたごみ

展覧会をプロデュースした博展の鈴木亮介クリエイティブ局長は、「ひとつのレシピから多くの人が手を入れてさまざまな料理が完成されることに倣い、イベント名を『循環のレシピ』としました」と説明する。今回の展覧会のためにさまざまな企業から聞き取りした鈴木氏は、すでに各社の取り組みが完成された循環型デザインになっていると思っていたが、そうではなく、あらためて課題が多いことを認識し、解決にはさまざまな人の知恵が必要だと考えるようになったという。

展示会のディスプレー棚などは、ごみが出ないように建材そのままのサイズを生かして組み上げた。それでも建材を梱包していた緩衝材などのポリエチレン素材などがごみとして出てしまっている。会場入口右手の棚の下には、そのごみがディスプレーされている。「いろいろ工夫をしたつもりだが、それでもごみが出てしまう。いかに展示でごみを出さないかは自分たち主催者側の課題です」(鈴木氏)

こうしたさまざまな課題を提示して、多くの人に見てもらい共有して解決につなげ、日本の循環型社会を推進することが本展覧会の目的だ。丸の内・仲通りの彫刻を見に来て来場したという70代の夫婦は、「テーマはわからずに入りました。断捨離をして小さい家に移りましたがそれでもごみが出ます。こういう取り組みはいいことだと思う」と熱心に展示物を見ていた。

意匠デザインではなく、仕組みのデザインが必要

開催初日にはサステナブル・ブランド国際会議 2023 東京・丸の内(SB国際会議2023)のコンテンツの一つであるオンデマンドセッション「サーキュラープロダクトデザインの現在地」が配信され、出展企業や監修者、デザイナーなどがサーキュラーエコノミーを目指した製品やサービスのデザインについて議論した。

ファシリテーターを務めた鈴木氏は、サーキュラーエコノミーを実現するために不可欠な考え方として「廃棄物と汚染を生み出さない」「製品と原料を高い価値を保ったまま使い続ける」「自然システムを再生させる」を挙げた。これらはデザイン面からもたらされるという。

博展で空間デザインを担当する藤原慧茉氏は、「サステナブルな要素を取り入れるデザイン案件は2~3年前から増えてきたが、スキームがわからず意匠デザインで挑戦していた」と話した。その後、イベントで出たCO2排出量を算出してカーボンオフセットすることで、ようやく循環型システムの考え方が理解できたという。

展覧会の監修を務めたモノファクトリー社会基盤構築グループの中台明夫上席マネージャーは、「使い終わった後どうするかをプロダクトデザインからしなくてはいけない。意匠デザインではなく、仕組みのデザインが必要」と話した。ただここで問題になるのは、製品を使い終わり回収するときに、一般家庭では一般廃棄物、企業では産業廃棄物と取り扱いの区分が違うことだ。業者は、回収したが廃棄もリサイクルもできないといったことが起こり得る。中台さんは「行政や法律が壁となる可能性がある」と指摘した。

そのうえで「業界を超えて連携すれば解決できることも多い。ネットワークができるとリユースにもつながる。知的財産などの問題もあるができるだけ情報をオープンにして、循環の仕組みづくりをしていきたい」と意欲を示した。

グッドデザイン賞でも「循環型システム」が評価対象に

PANECO®は混ぜるもので色や質感が変化する

出展企業からはワークスタジオ(東京・新宿)デザイナーの吉本裕有城氏が登壇した。同社が開発・販売している、廃棄衣類繊維を原料としたリサイクルボード「PANECO®」は、加工しやすく素材として扱いやすい。さらに資材として役目を終えたのち回収し再度粉砕し成型することで、新たなPANECO®に生まれ変わることができるという。そうしたアップサイクル技術が高く評価され、2022年度グッドデザイン賞を受賞した。

吉本氏は「日本では衣料の廃棄がとても多いが、それでもPANECO®約50トン分しか製造できない。だが、服を作る側が廃棄を考慮して素材選びをするようになれば、再生素材が当たり前になる循環型社会になっていくのでは」と期待している。

グッドデザイン賞でも「循環型システム」はキーワードになっている。アワードを主催する公益財団法人日本デザイン振興会事業部の川口真沙美課長は「審査でもリサイクルまでの循環型システムがきちんと成立しているかが、評価対象とされている」と話す。また昨今の特徴として、島国の中でどう製品を循環させていくか、問題意識をもつ台湾や香港からの応募が増えていることを報告した。

なお、本セッション「サーキュラープロダクトデザインの現在地」は、2月14~15日開催のSB国際会議2023のオンデマンドセッションで視聴することができる。

【開催概要】Sustainable Brands OPEN SEMINAR & EXHIBITION
循環のレシピ サーキュラープロダクトデザインの現在地
会 期:2023年2月3日(金)~2月15日(水)
会 場:GOOD DESIGN Marunouchi
    東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F
参 加:入場無料
主 催:サステナブル・ブランド ジャパン(博展)
協 力:公益財団法人日本デザイン振興会
監 修:水野 大二郎 氏(京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授)、
    中台 明夫 氏(モノファクトリー)
特別協力:Material ConneXion Tokyo
プロデュース・企画デザイン・制作:HAKUTEN CREATIVE
https://www.sb-openseminarandexhibition2023.com/