サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)
Sponsored Contents

UCCが「コーヒーの力で世界をよりよくする」と宣言した理由

  • Twitter
  • Facebook
サステナブル・ブランド ジャパン編集局
2022年4月27日UCCホールディングス株式会社は「UCCサステナビリティ指針」を発表しました。
数値目標とともに具体的なサステナビリティ指針を発表した背景を、UCCホールディングス 執行役員 兼 UCC上島珈琲 取締役 副社長の里見陵氏に聞きました。

2022年4月27日UCCホールディングス株式会社は「UCCサステナビリティ指針」を発表しました。その主な内容は3つ。

2040年までにカーボンニュートラル&ネイチャーポジティブアプローチ
2030年までにUCC自社ブランドを100%サステナブルなコーヒー調達に
2030年までに健康・教育分野で社会に大きなインパクトを

数値目標とともに上記のようなサステナビリティ指針を発表した背景を、UCCホールディングス 執行役員 兼 UCC上島珈琲 取締役 副社長の里見陵氏に聞きました。

――今回、目標達成までの年数も明記したサステナビリティ指針を発表したのはなぜですか?

これまでも私たちはサステナビリティを意識した取り組みをしてきました。

例えば40年前から、ジャマイカ、ハワイの直営農園の運営をし、持続的なコーヒー産業の発展のため、そこで培ったノウハウを他の生産地に還元する等の取組みを実施してきました。尚、ジャマイカの直営農園は2008年に同国で初のレインフォレスト認証農園を受けています。

ただ2020年にコロナ禍に見舞われ、2、3年先の見通しが立てにくい状況に陥りました。

そんな中で10年、20年、もっと先を考えた時に地球環境や生産国の人たちのことを考えた指針を出すべきではないかという議論が始まったのです。そしてひとつが2021年10月に発表したパーパスとバリューを取りまとめること。それと歩調を合わせる形で今回のサステナビリティ指針を取りまとめました。

――競合他社もさまざまな取り組みを行っています。指針の中に「これはわが社ならでは」という点はありますか?

まずは、サステナビリティビジョンを「コーヒーの力で、世界にポジティブな変化を」と定め、昨年秋に制定したパーパス「よりよい世界のために、コーヒーの力を解き放つ」をサステナビリティ文脈で体現するビジョンを決めたことです。

このビジョンは1933年の創業以来、コーヒーに真摯に向きあってきた私たちの志を象徴するものです。このように、パーパスとサステナビリティとを紐づける事により、コーヒーの価値や可能性はさらに高まり、全てのコーヒーコミュニティに還元され好循環を生み出せるものと考えます。ですから、「コーヒーの力を解き放つ」という文脈をサステナビリティ指針にも盛り込もうと強く意識しました。

加えて、正直UCCでは取り組みが遅れていましたカーボンニュートラルに対する考え方を、ステークホルダーに対してクリアにしようと考えました。達成年度を国が掲げる2050年から10年前倒しの2040年とするとともに、新たに「ネイチャーポジティブアプローチ」の概念を加え、生産国で栽培から手掛ける私たちの独自性を発揮したいと考えました。

そして3つ目が100%サステナブルなコーヒー調達です。日本はまだまだサステナブルなコーヒーに対する意識が薄いと思います。日本のナンバー1プレーヤーとして、私たちのサステナブルなコーヒーを買っていただく意義をしっかりお客様に伝達していく必要があります。その中で自社ブランドのコーヒーの調達を100%、しかも2030年までにと目標を掲げたのは相当チャレンジングなことだと認識しています。

――コーヒーの持続可能な調達を数字で可視化するのは大変難しいことだと思います。100%という数字をどのように見える化するのですか?

サステナブルなコーヒー調達の基準や定義を明確にした上で、製品毎に適応し、数値を可視化していきます。全ての自社ブランド製品で100%適応ができれば目標達成、非常にシンプルです。

もう少し詳しく説明させて下さい。まず調達基準ですが、3つのサステナブル要素に配慮した原料であるということです。3つのサステナブル要素とは

① 持続可能な地球を目指すために(地球)
 ・生物多様性と生態系の保全
 ・農薬および有害な化学物資の適切な管理と使用
 ・水資源の保全

② コーヒーコミュニティの方々のよりよい暮らしのため(人)
 ・児童労働・強制労働の禁止
 ・適切な労働慣行の遵守
 ・人権の尊重

③ 農家の生計改善を支援し、安定的なサプライチェーンを維持するために(製品)
 ・事業の継続的改善の支援

そして上記の3つのサステナブル要素を担保する基盤としての、トレーサビリティです。

基準を明確にしたら、その基準を満たした原料であることを客観的に担保することが非常に重要です。我々はレインフォレストアライアンスやフェアトレード、その他トレーダー等のパートナーさまと協働していく方針です。それらパートナーさまは既にサステナブルなコーヒー調達を担保する仕組みやリソースをお持ちで、それらの既存プログラムが、我々の基準に合致していることを確認し、活用させていただくのです。それら既存プログラムを組み合わせ、製品毎に順次適応しサステナブルなコーヒー調達の割合を高めていくというわけです。

目標達成に向けて非常に重要なのは、消費者の方々を巻き込むことであると考えています。どの商品がどの程度、サステナブルなコーヒー原料を使用しているか、消費者のみなさまに分かりやすくご理解いただけるよう新たなコミュニケーションを考えています。

――第三者機関の監査以外に自社内では何か取り組みを行っていますか?

UCCにはコーヒー栽培・研究に特化した専門部署が存在しています。

「農事調査室」という部署なのですが、コロナ前にはスタッフは365日の半分以上生産地を飛び回り、直営農園や契約農園などに行ったりするほか、JICAと共同プロジェクトをするなどさまざまな生産地支援を行っています。

また生産地の実態調査もしているんです。こういうひとつひとつの取り組みがサステナビリティにつながっていくと考えています。

――100%サステナブルなコーヒー調達を含む今回の指針ですが、反応は何かありましたか?

とてもありました。特に社内の若い世代であればあるほど、10年、20年後もUCCで働いている可能性がある人たちがたくさんいるので、コーヒーの2050年問題にも関心が高い。

そしてこれまでなかったCO2削減やコーヒー調達などの明確な目標を営業に行ったお客様にアピールできるので、サステナビリティを求めている顧客の担当営業マンからは、かなりリアルなフィードバックがあがってきて、僕もテンションがあがりました(笑)。

――具体的にはどんな反応があったのですか?

大手CVSチェーンやスーパーマーケットチェーン、外食のお客さまのところに行くと「さすがUCCさん、満を持してチャレンジングで業界をリードするような目標を発表しましたね」などと言われます。そんな風におっしゃっていただくと若手の社員は自分の仕事に誇りを持つことができます。

また指針の発表と前後して、山梨県笛吹市に「UCC山梨焙煎所」の新設を決定しました。ここでは再生可能エネルギーを100%使って運営し、コーヒーの水素焙煎にチャレンジして行く予定です。指針だけ出してもそのリリースを持って、お客さまのところに行って説明するだけになってしまいます。具体的な取り組みをしていることでステークホルダーの皆さまにも関心を持っていただいているように思います。

それ以外に、大きな反応を感じているのは採用部門ですね。「こういう指針を出し、実際にこういう取り組みを行っていますよ」というのは現代の人材確保にとって大きな強みになるのではないでしょうか。

――サステナビリティという価値観はだいぶ浸透してきたとは言え、意識のある人とない人の間には大きな乖離があるように思います。社内浸透のためになにか工夫していることはありますか?

確かに興味がない人にとっては、今回の指針もあまり響かないかもしれません。だから、そんなに簡単に、短期間で社内浸透ができるとは思っていません。ただ、パーパス一つをとってみても、サステナビリティの専門用語は使わずにストーリー仕立てに作って、でもそこに書かれているのはサステナビリティの基本理念を伝えているなどの工夫はしています。また、新パーパス制定に伴い、UCCグループのコーポレートメッセージを「Good Coffee Smile」から「ひと粒と、世界に、愛を」に変えました。言葉やイラスト、ストーリーを駆使することで、伝わりやすくなるのではないでしょうか。

また、国内におよそ3,000人の社員がいるのですが6~7人に1人の割合でアンバサダーを選出して、サステナビリティを含む私たちが掲げているパーパス・バリューに合う行動ができているかを職場内で対話する取り組みもしているんですよ。社員1人ひとりがサステナビリティを自分事にしないと社内浸透は実現しません。社内で共有され、ボトムアップされて、また会社のサステナビリティに対する活動が活発になっていけば、と思っています。

(撮影:米田志津美)