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コミュニティ・コラム

ポストコロナへ、イベント業界のリジェネレーション ー循環型イベントの実現に向けてー

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Sustainable Event Professional Forum

新型コロナウイルスの大流行によって、これまでの事業運営を見直さざるを得ない状況となり、新しい方法での事業継続を模索した業界は少なくない。顔を直接合わせ、リアルでの接点をつくることを基本としてサービスを提供していたイベント業界もその一つだ。

人が「集まること」「移動すること」に対して、今までとは違う厳しい目が向けられるなか、イベント業界は持続可能性の先を見据えてリジェネレーション(再生)を前提とした仕組み作りを求められている。

今回は、イベントに関わるすべての人々がよりよく生きる世界を目指し、環境負荷を低減した「サステナブルなイベント」を共創するコミュニティづくりを推進するSustainable Event Professional Forum(サステナブル・イベント・プロフェッショナル・フォーラム)のメンバーである3者がイベント業界の未来について語る。

犬塚 圭介
株式会社セレスポ サステナブルイベント研究所所長
セレスポはイベントの制作会社としてセレモニー、スポーツイベント、プロモーションイベント等、全国規模の大型イベントから地域密着型のイベントまであらゆるタイプのイベントを全国47都道府県でお手伝いしています。

野上 慎介
ユタカ株式会社onefabrica事業部ファブリックグループ・リーダー
ユタカは装飾施工会社として30年以上、ホテルイベント/展示会を中心に多くのステージ、展示ブース作りを行ってきました。2018年には廃棄物が少なく、表現の自由度が高いファブリック施工(onefabrica)を開発・導入し、サステナブルな施工を推進しています。

白川 陽一
株式会社 博展 サステナビリティ推進室 兼プロダクトマネジメント部 部長
博展はイベントを中心に企業の体験型マーケティング活動を支援しています。また、イベントやメディアを通じてサステナビリティの考えを広めることを目指し、2015年より日本におけるサステナブル・コミュニティ活動を運営しています。

(インタビュアー:村松 加奈江 /ライター:大村 果歩)

目次:
ポストコロナに向けて改めて見直すイベントの意義
イベント業界を変えるキーワードはステークホルダーを巻き込んだコミュニティ形成
サステナブルなイベントを目指す「Sustainable Event Professional Forum」
Sustainable Event Professional Forum 2022 が目指すゴール

⑴ ポストコロナに向けて改めて見直すイベントの意義

――新型コロナウイルス感染症の流行で「イベントの在り方」について改めて考える機会が増えたのではないでしょうか?
この2年間でイベントにどのような変化があったとお考えですか?

犬塚:
イベント自体の意義は変化していないと考えています。何か目的があって、それを達成するための手段としてイベントを選択することは、コロナ前後も変化していません。

大きく変化したのは、業界自体がイベントの意義を考えるようになったことです。当たり前に開催していたイベントが開催できない期間に、イベントの目的やゴール、結果を振り返り、その本質に立ち返るきっかけになりました。

われわれは今後、イベントのステークホルダーに対する考え方を改めて捉えなおす必要があります。

これまでイベント開催におけるステークホルダーは、主催者 / 参加者 / 制作会社 / 運営スタッフなどが中心だと考えられていました。しかしコロナ禍において、感染予防の観点で、関係者の家族も含めて考える必要がでてきました。さらに、移動に関する考え方もシビアになっている今、特に開催される地域への影響も考えていく必要があります。

今までとは異なるステークホルダーに対し、新たなニーズへの対応が求められていますね。

野上:
参加者の属性もこの2年間で変化しました。オンラインという手法が急速に普及し、今までは来場できなかった地方や海外在住の方や子育て中の方など、幅広い多様な層へのアプローチが可能になりましたから。多様性の観点で、オンラインはイベントの可能性を広げましたね。

ポストコロナを迎える今、オンラインとオフラインという手法のシームレス化、サステナビリティへの対応の要求が高まったことは、イベント業界において新しい開発を生むチャンスだと思います。

白川:
私はオリンピックが世間のイベントに対するイメージを変えるきっかけになったと考えています。人が集まるという特性を持つイベントは、これまで以上に社会から厳しい目を向けられるようになりました。世間の目がイベントに集まる今だからこそ、サステナビリティへの取り組みも迅速に進めていかなければならないと危機感を持っていますね。将来にイベントというものを残していくためにも、クリアにしていくべき課題がたくさんあります。

犬塚:
コロナ禍で一般消費者の目がイベント開催に対して集まるようになった結果、イベントに対してもサステナビリティ促進へのニーズが高まってきたことは、とてもポジティブに捉えています。

厳しい意見は、イベント業界が変わるきっかけになるはず。求められるということは、伸びしろがある、チャンス到来ということですから、業界としての取り組みを社会に発信し、理解してもらえるように努めたいです。

⑵ イベント業界を変えるキーワードは、ステークホルダーを巻き込んだコミュニティ形成

――今後サステナブルなイベント業界を確立するために、必要なことは何だとお考えですか?

犬塚:
イベント単体の課題と社会課題を統合して考えることが、これから非常に重要になると考えています。社会課題との繋がりに基づく総合的な目線を持つことができれば、イベントに対する意識に変化が生まれるのではないでしょうか。

これを自社だけで完結するのは難しいと思います。イベント視点だけでなく、地域の視点から社会課題を見つけ、それに必要なステークホルダーを巻き込み、これまでのイベント業界にとらわれないコミュニティを形成できるかが重要です。

イベントに関わるステークホルダーがより拡大しているからこそ、やはり今はイベント業界を変えるチャンスですね。

白川:
イベントで排出されるゴミの問題などを解決する資源循環型のイベントを実施できれば、その方法を家庭ゴミにも転用できるかもしれない。イベントを社会問題の実証実験の場として捉えることができれば、より多くの人々を巻き込むことができ、社会への影響力も発揮できるのではないでしょうか。

野上:
業界問わずさまざまな企業や人と協力しあい、情報共有を行うことはやはり重要です。

ポストコロナの今は、業界に居なければ、知りえないイベントの裏側、イベントに使われている素材や作業に費やされている時間がどうであるかを発信・共有する良いタイミングだと思います。業界の問題をクライアントや制作会社を含め皆で考えなければいけない時代に突入していると感じます。

⑶ サステナブルなイベントを目指す「Sustainable Event Professional Forum」

――業界という枠組みを超えた企業・人々の共創が求められる今、改めてこのSustainable Event Professional Forumの目的を教えてください。

白川:
本フォーラムでは、“これからのイベント”について議論をし、一企業、一団体では実現困難なサステナビリティ課題に対して、組織の枠、企業の垣根を越えた共創の場をつくり、次なる一歩を踏み出していくことを目指しています。

野上:
一社ではなかなか成し遂げることができないことも、参加している企業同士で協力したら達成することができる。過去2回の開催では、聴講者として参加していたのですが、「今後のアクション」について同じ境遇の企業同士で、何か一緒にできることがないかと考えていました。

長らく携わってきたイベント業界をより魅力的にできるように、多くの企業に参画していただき、より良いイベント業界を目指していきたいです。

白川:
情報共有も大きな目的にしています。

これまで、イベント業界では“情報”を一社で囲う傾向がありましたが、本フォーラムを通じてざっくばらんに自社の取り組みや課題を発信することで、参加いただいた企業の方からも情報が集まってくるようになりました。

例えば、イベントで出るゴミによる環境負荷を減らせる会社を紹介いただいたり、逆にパートナー企業について紹介してもらえないかと相談をいただいたり。情報開示をすることで、新たな情報の広がり・つながりが生まれています。

犬塚:
協力し合うべき部分は手を取り合いながら、これまで通り競争すべき部分は競い合っていく、そんなイベント業界を目指したいです。

情報共有するプラットフォームはありつつ、そこで得た情報を自社でどう活用していくかで差別化を図る。サステナブルなイベントを目指すということは共通の目標を掲げつつ、それぞれが企業の個性を尖らせ、最終的にビジネスとして確立することを目指しています。

⑷ Sustainable Event Professional Forum 2022 の目指すゴール

――ありがとうございます。
最後に2022年2月に開催されるSustainable Event Professional Forumへの意気込みをお聞かせください。

白川:
次回で本フォーラムは3回目の開催になります。これまでは、業界への啓発と活動報告を中心に活動してきましたが、ここからは業界の枠を超えた新たなコミュニティを形成し、結果を残していきたいです。

そのためには、本フォーラム自体の魅力を高め、参加企業を増やしたいですね。今まで固定化されていたイベント業界における企業間の繋がりに、新しい風を吹かせ、志をともにする仲間を増やしていきたいです。

犬塚:
3回目になると、“責任”が生まれてきていると思います。言いっぱなし、やりっぱなしではなく、活動で表現することが求められます。

“守破離”の型にのっとり、3回目の次回はサステナブル・ブランド国際会議の枠を超え、社会への働きかけを行っていきます。

サステナブルなイベントを推進するコンソーシアムの設立という新しい取り組みにも挑戦します。

野上氏:
これまでのフォーラムでは、参加者にむけて情報を発信する、比較的一方通行のコミュニケーションでした。

次回は、イベントに関係する人たちも積極的に参加できる没入感のあるセッションを目指しており、参加者同士で議論をするワークショップを開催することも決定しています。

新しいチャレンジを通じて、われわれ3社が始めるコンソーシアムへの第一歩に繋がればと考えています。


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Sustainable Event Professional Forum 2022
「共創」で実現するサステナブルなイベント・MICE

グローバルMICEの潮流とイベントにおけるサステナビリティへの取り組みを共有する場であるSustainable Event Professional Forumは、MICE・イベント関係者・DMO認定法人の方限定の特別プログラムを「サステナブル・ブランド国際会議2022 横浜」内にて開催することが決定。

日時:2022年2月24日(木)15:30-19:00
会場:パシフィコ横浜ノース(サステナブル・ブランド国際会議2022 横浜会場内)
主催:株式会社セレスポ / 株式会社博展
企画協力:ユタカ株式会社
後援:公益財団法人横浜観光コンベンション・ビューロー(予定)
参加費(税込):19,250円(2月24日SB横浜1Day Passを含む)/ 27,500円(2月24-25日SB横浜All Event Passを含む)
※MICE・イベント関係者・DMO認定法人の方限定の特別価格
公式HP:https://www.sustainablebrands.jp/event/sb2022/special-professional.html
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