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エプソン販売

テクノロジーを生かした環境負荷の低減は「ものづくり企業のプライド」

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エプソン販売株式会社
エプソン販売スマートチャージMD部・子田 吉之部長

かつて「ものづくり大国・日本」の高度成長期を支えたメーカー群。大量生産・大量消費の時代を超えて、今でも新たな独自技術とものづくりへの情熱を持って創業の精神を保ち、サステナビリティを追求し続けている企業がある。環境技術と共創へと明確に舵を切ったエプソンだ。「オフィス内で再生紙をつくる機器」や「消費電力量を大幅に低減し、実用性を兼ね備えたインクジェットプリンター」といった製品を実現した画期的な技術とはどのように今の社会に根付き、どう価値を生み出しているのか。「技術を磨いてつながりを生かす」という姿勢の根幹にはものづくり企業の矜持が垣間見える。エプソン販売スマートチャージMD部の子田 吉之部長に真髄を聞いた。

*1 原油、金属などの枯渇性資源
*2 SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)のクライテリアに基づく科学的な知見と整合した温室効果ガスの削減目標

――エプソンの掲げるビジョンをまずはお聞かせいただけますか。

子田 吉之氏(以下、敬称略):環境ビジョン2050は、私たちエプソンが将来にわたって追求していくありたい姿です。「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」ということを明文化しました。2008年に策定し、今年3月には脱炭素と資源循環という大きな社会課題に対するエプソンの強い意志を示す具体的な達成目標を設定するなどの改訂を行いました。

Epson 25 Renewedは中期経営計画を含む長期ビジョンで、「『省・小・精の技術』とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する」ということを掲げています。

私たちの根本的な思いは、今までのやり方を抜本的に変える変革を起こさなければ変わらないということです。実現できるかどうかではなく、エプソンがものづくり企業としてやり遂げなければならないということを描いたのが環境ビジョン2050です。

――環境ビジョン2050には2050年に事実上のカーボンマイナス、地下資源消費ゼロという目標を設定されています。かなり野心的なように思います。

子田氏:もともとエプソンは国内で1992年、世界初のフロンガス全廃を行った企業なんです。これまでも環境に対する取り組みを積極的に行っていて、それをさらに加速させたいという目標です。

――具体的な目標設定をしたことで社内へのインパクトも大きかったのでは。

子田氏:会社としていま取り組んでいる社会課題の解決への行動が明確になり、従業員全体に意識が共有できたという実感があります。SDGsの認知拡大など、社会全体の中でサステナビリティに取り組む土壌ができてきている今、これまでのエプソンの実績に加えて今やっていること、将来への目標が明確になったことは大きなプラスです。

エプソンの社風として、ものづくり企業のプライドは従業員に根強くありますので、エプソンとしての独創的な技術をどう生かし、社会の中で共創していくか。Epson 25 Renewedでも共創はひとつのキーワードになっています。われわれのコアな技術をもとにパートナー企業などとどう組んで社会課題を解決していくかということが、進むべき道だと思っています。

ものづくりの姿勢、環境と技術の結びつき強く

――環境課題への意識はどのように育まれてきたのでしょうか。

子田氏:セイコーエプソンの前身はセイコーの時計をつくる長野県諏訪の工場でしたから、「諏訪湖を汚してはいけない」という創業以来の環境意識は土台としてありました。さらにエプソンのものづくりの根底にあるのは「省・小・精」の技術です。その技術を極めていくことで、品質を高め、コンパクトに、高効率に、ということを追い求めてきました。現在の大幅な省電力などの環境貢献技術は、その結果なんです。

オゾン層破壊物質であるフロンレスを宣言したのが1988年、国内でフロン全廃をしたのが1992年ですから、その時点では環境に対する取り組みは進んでいました。環境に対する取り組みは、昨今の風潮以前に脈々と育まれていたわけです。さらに、諏訪湖の「御神渡り(凍った湖面に亀裂が走る自然現象)」が温暖化の影響でここ数年見られなくなっているということもあり、いま環境問題に取り組まなければ次世代まで地球がもたないという危機感も強く持っています。

そういった背景もあり、技術と環境が深く結びついていることを社員は理解していますし、消費者、顧客への提案、ものづくりの中でも環境課題への取り組みの意識が自然とあると思っています。

――純粋に技術の面はどのように進化していますか。エプソンと言えばプリンター、プロジェクターという印象もあります。

EP-101

子田氏:エプソンのプリンター技術は、陸上競技のタイム計測に伴って、記録を印刷するところからスタートしています。その第一号が「EP-101」で、「EPSON」にはすべての商品はEPの息子(SON)であるという思いが込められています。

その後、パーソナルコンピューター用にドットインパクトプリンターを開発しました。かなりマニアックな話ですが、当時ドットインパクトプリンターのために開発したESC/Pというプリンター制御コード(コンピュータ言語)はその後、事実上世界標準になるほど普及したんです。さらにインクジェット方式やレーザー方式というようにプリンター技術は進化していますが、特にエプソンではインクジェット方式に関わる独自の技術に力を入れています。

インクジェットプリンターは家庭用のイメージが強く、ビジネスでは使われないという傾向が今でもあると思います。しかし技術の進歩によって、インクジェット方式のメリットを最大限に引き出し、オフィスや学校、病院などさまざまな場面で導入が進んでいます。

エプソン独自の環境技術

―――インクジェット方式の独自技術について具体的にお聞かせください。

子田氏:はい。例えば当社インクジェットプリンターのHeat-Free Technologyという技術があります。他社のインクジェット方式には熱で気泡を発生させてインクを噴出しているものが多いのですが、当社のHeat-Free Technologyは熱を使わずに機械的な動きでインクを噴出し、レーザープリンターに比べると消費電力量を大幅に抑えることができます。レーザープリンターの場合は熱を利用してトナーという粉末を紙に定着させ、消費電力が大きいんです。

Heat-Free Technologyは、家庭用のプリンターからオフィス用の複合機まで活用の場面が広いことがひとつのメリットになります。今は1分間に100枚※1の印刷速度を持ち、環境性能と実用に十分な印刷性能を兼ね備えた<LX>シリーズなどの製品ラインアップもあり、最近だと学校への導入も急速に進んでいます。※1 LX-10000FシリーズA4横片面。詳細はエプソンホームページをご確認ください。

また、PX-S380というA4のモノクロ機は病院への導入も増えています。Heat-Free Technologyによりレーザープリンターよりも大幅な省電力を実現しているため病院のBCP対策に有効なことが評価されています。インクジェット方式にはさまざまなメリットがあり、エプソンのインクジェットプリンターがスペースシャトル「ディスカバリー号」に乗って宇宙に行ったこともあるんです。

レーザープリンターに比べてインクジェット方式は廃棄物が非常に少ないんです。技術の進化によって効率化が進みカートリッジ1本で印刷できる量が増えていることに加え、カートリッジごと入れ替えるのではプラスチック廃棄量が増えてしまうため、インクをボトルから簡単に補充できる製品が増えています。

さらに紙だけでなく、布や看板、フィルムへの印刷もインクジェットで可能になっているので、活用できる場面はどんどん増えています。エプソンがつくったインクジェットの基幹部品を他社に提供し、他社で新たな製品を開発するということも行われています。

――活用の場面が広がることで、環境技術の真価である環境負荷低減の影響も広がるというわけですね。Heat-Free Technology以外の独自技術ではどのようなものがありますか。

子田氏:当社の乾式オフィス製紙機「PaperLab」が使用するDry Fiber Technolo­gyという技術もあります。衝撃を与えて紙を繊維化し、機器内の湿度を保つ以外の水を使わずに用途に合わせて再び繊維化する技術です。従来は紙を再生する場合、水を大量に使って元の紙を溶かす必要がありました。それに対して水の消費量を99%削減し※2、オフィス内の古紙を再生する製品「PaperLab」に活用しています。※2 PaperLab A-8000を1年間稼働した場合の環境効果(稼働条件:8時間/日、240日/年) 詳細はエプソンホームページをご確認ください。

Dry fiber Technologyは例えばコンシューマ向けのインクジェットプリンター「カラリオ」シリーズで採用しているインクを吸収するシート状のパットや、吸音材を製造する際など、商品や、エプソンの生産設備の中でも活用している技術です。

PaperLab(ペーパーラボ)

ものづくり矜持は「技術を磨き、共創で変革」

――これまでのお話の中でも他社との共創の事例が多く登場しています。Epson 25 Renewedのポイントでもある共創について、どのようなお考えで進められていますか。

子田氏:まず私たちの技術をどこで生かせるか、どのように使えば社会や環境への良い影響を最大化できるか、ということを考えています。技術そのものだとベンチャー企業と協働し、インクジェット方式を活用して基盤に直接、回路をプリントすることで製造工程の廃棄物を大きく減らすような協働など、共創のきっかけはやはり、社会課題への意識だと思います。

また製品を通じた共創ではやはりPaperLabが例に挙げられます。企業だけでなく自治体とも連携して、例えば長野県塩尻市とは次世代学習の取り組みを行ったり、北九州市では自治体だけでなく学校、福祉に取り組むNPOとも連携した地域の価値共創の取り組み「KAMIKURU」を展開しています。

――環境や社会へのインパクトをどのように測定、評価していますか。

LX-10000Fシリーズ

子田氏:わかりやすいところでは、オフィス用複合機の<LX>シリーズの場合、販売台数から削減した電力量などを算出しています。同シリーズでこれまでに削減した電力は約40万キロワット、1年間東京タワーを灯し続けた電力量に匹敵します。CO2排出量は約189トン削減し、杉の木は2万本が吸収する量になります。※3今後も製品を導入していただき環境負荷低減の効果を高めるよう、エプソンのスマートチャージという導入しやすい方式も展開しています。※3 エプソンのスマートチャージ対応機種<LX>シリーズの2021年4月までの販売台数に基づき算出した削減電力量。詳細はエプソンホームページをご確認ください。

一方で可視化が難しいインパクトとしては、地域の価値共創、学習といった社会的効果でしょうか。製品を通した環境への意識づけがどれくらいできているのか、製品を通じて地域の共創を生み出す取り組みも進めていますが、そこで地域の人や子どもたちが学習した効果、創出した価値をどう見える化するかが今後の課題でもあり、今、SROIという新たな手法を用いて測定しようとしているところです。

――SROIについては次回以降のインタビューで詳しくお聞かせいただきます。エプソンの技術は今後どのように進化していくのでしょうか。

子田氏:製品で言えばPaperLabの現行機はかなり大きいので、小型化を目指しています。より導入しやすくなり製品が広がることで環境への貢献がより進むと思っています。オフィス内やビル内で資源が循環して完結するという姿を目指しています。

また紙以外へのプリント技術によって環境貢献をする体制は、他社との共創をより強化することによって多くの場面で実現していけると思っています。

エプソンの経営理念は一番に「地球を友に」という言葉がきます。そして目標は「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」ということです。技術を磨き、つながりを生かして地球と社会により良い変革を起こす。それが、ものづくりをする企業としての矜持です。

エプソン販売株式会社
エプソン販売株式会社

エプソンは、1942年のセイコーエプソンの創業以来培ってきた「省・小・精の技術」をベースに、世界中でお客様の期待を超える商品・サービスをお届けするべく、創造と挑戦を重ねてきました。2016年には、エプソンが10年後にありたい姿と、向かうべき方向を示した長期ビジョン「Epson 25」を定め、2025年に向けてさまざまな活動を行ってきました。

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