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自治体とSDGs――必要なのはハードウェア、ソフトウェア、ハートウェア

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

一般財団法人建築環境・省エネルギー機構内の「自治体SDGs検討小員会」は『私たちのまちにとってのSDGs(持続可能な開発目標)-導入のためのガイドライン-』を発行している。「SDGs時代のまちづくり」について、同財団の理事長を務める村上周三氏に笹谷秀光・未来まちづくりフォーラム実行委員長が話を聞いた。(サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲)

「自治体とは一つの宇宙みたいなもの」

笹谷:ガイドラインのなかに、「目標11『住み続けられるまちづくりを』は具体的な空間をイメージしている点で他の目標とは異なる。目標11は都市SDGsとも呼ばれ、“都市はSystem of Systems”と呼ばれるほど多種多様なシステムから構成されており、システム間の連携や統合が強く求められる空間です」と書かれています。そう考えると、目標11はSDGsの実装がしやすい目標だと気づかされ、目から鱗でした。

村上:自治体というのは一つの宇宙みたいなものです。おっしゃるように、そこには食料、エネルギー、教育などあらゆるものが重層的にあるんですよね。ですから、そこにあるものをどうやってバランスをとるかということです。

SDGsが言っているのは「indivisible whole (分割的な全体)」です。全部はできないけれど、全体的な視点をもってくれということを強く言っているわけです。SDGsの目的である持続可能性は経済・社会・環境のどれが欠けてもいけません。その全体を把握して進める時に、自治体はあらゆる要素が入っていてSDGs実践の場として非常に適切だと考えています。

笹谷:ガイドラインの中に「地域再生に求められる2つの視点」という記述があります。優れた取り組みを行う自治体をトップランナーとして認定・支援をし、成功事例を他の自治体に幅広く発信し、パートナーシップを推進する――。山で例えると、ピーク(頂上)を高くすることで、裾野が底上げされるということです。

SDGsは、やれる人がやれるところから一刻も早く着手するという自発性を尊重しており、私はあの表現を非常に気に入っています。先生は、どういう風にお思いになっていらっしゃいますか。

村上:昔から、2008年に環境モデル都市、2011年に環境未来都市、総合特区制度などに取り組んできました。政府が音頭をとって検証し、見える化をすることでピークを高くするというものです。

学習というのは容易ですが、新しいものをつくるというイノベーションには創造性が必要になります。ピークを高くすれば裾野を広げるのは容易です。政府主導の制度はピークだけを検証しているのではなく、ピークを検証した結果の裾野の広がりを見る視点に立つものです。

SDGsが地域創生を加速させる

笹谷:政府がSDGsアワードを実施しています。自治体では、第1回目に北海道下川町がSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を、福岡県北九州市もSDGsパートナーシップ賞(特別賞)を受賞しました。第2回目では、鹿児島県大崎町が副本部長賞(内閣官房長官)を受賞しました。

ああいった検証制度はプラットフォームを構築したり、ベストプラクティスを水平展開するのに有効だと思います。どういう風にお考えになっていますか。

村上:見える化と検証制度を民間にどう広めるかを考え、プラットフォームをつくりました。全員がその情報を走りながら共有できる仕組みをつくりたいなと思って努力しているところです。

自治体行政には垂直的連携と水平的連携があります。垂直的連携とは、異なるガバナンスレベル、例えば個々人や小規模組織レベルでのガバナンス、基礎自治体レベル、都道府県レベ、国レベルでのガバナンスなど適切に役割分担をしながら協働していくことです。

しかし、SDGsというのは今までの地方自治体では処理しきれない、たくさんのノウハウが必要です。自治体が広域型企業と積極的に付き合って、水平的にノウハウを提供してまちづくりを活性化することをしていきたいです。

まち・ひと・しごと創生法は2020年から第2期が始まります。まち・ひと・しごと創生法には、もう少し具体化のキャッチフレーズが欲しかったと思っていました。そういう意味で、SDGsはまち・ひと・しごと創生法に、命と筋肉を吹き込んだというそんな感じがしています。

笹谷:そうですね。やはり、色んなものを投入しないといけないですね。課題先進国といっているぐらいですから。新たな課題がどんどん出てきて、世界でも類を見ない先進国特有の課題もあるわけです。創造性とイノベーションという、SDGsで特に企業にも期待されているパーツを深めていかないと解決していかないのではないかと思います。

村上:まち・ひと・しごと創生法で日本が世界に先駆けて枠組みをつくるというのは、東南アジアなどに対しても国際協力の動きになると思います。

まちづくりに必要なハートウェア

村上:日本社会は未だに「まちづくり」というと民よりも官主導の傾向があります。これはたぶん江戸時代からある伝統がまだ残っているという気がします。

アメリカなどでは、民が中心になってまちをつくるという市民社会がはるかに確立されていましたから。そういう意味で、民、市民社会が中心になって行うというのは大変いいことだと思います。実際に、下川町を見ているとめずらしくちゃんとした市民社会が息づいています。上からではなく、自分たちの考えでやっていて実態があります。北九州市もそうです。

申し上げたいのは、まちづくりというのは市民社会が中心になるのだということです。行政が多少引っ張るとしても、まちづくりというのは民間主導で行うものなのです。やっぱり市民社会がますます根付くような運動をしていただければと思います。

自治体や企業とお付き合いしていると、経営層と広報部門にはすぐに浸透しますが、事業部門にはなかなか浸透しないんですね。彼らはプロフィットセンターでこういうものはやっていられないとなるのですが、そこを根気強く、自治体も企業も浸透させるような活動をこれを通じてやっていただいたらと思います。

市民間のパートナーシップは社会の基盤です。その意識の浸透にSDGsの全体的な枠組みが活用できるのではないかという感じがしております。

最近、例えばレジリエンスといいまして、東北の災害復旧のように、ハードよりも社会システムの復旧の方が大変なわけです。まさに市民社会をどう構築していくか。いわゆる絆ですよね。そういうものの中核になればいいと思いますね。

笹谷:ハードウェア、ソフトウェア、3つ目のハートウェアが必要なんじゃないかと思うんです。心に刺さってやろうという気持ちにさせる何かがあればいいんじゃないかなと思ったりします。

村上:伝統的な社会には、寄り合いという協力体制がありますが、そういうものが人口減少のなかで壊れかかっています。もう一つは、ヨーロッパのように自分たちで市民革命を起こしたという伝統がないから、自分たちで発言してというのが弱いんですよね。

ハートウェアをもう少し強く、自分たちの力で新しい社会をつくったというような意識の刺激をSDGsでできたらいいと思うんですけどね

笹谷:私は企業がこういうことに参画する、協創力を発揮する上でキーワードとなるのは、本業の力をうまく生かすということと、稼ぐ力をつけて地域にいろんな意味でお金を落とす循環をつくり、地域の稼ぐところに貢献をする。3番目は、そこのところの相互の補完関係、互尊互恵だと考えています。

本日はありがとうございました。

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