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パタゴニア、ムール貝の缶詰で海洋環境の再生目指す

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

アウトドメーカーの「パタゴニア」は8月2日、持続可能な海洋環境の実現を目指し、有機養殖のムール貝を使った缶詰「ムール貝オリーブオイル漬」を発売した。ムール貝は海水の浄化能力が高く、栄養価も優れている。同社は2012年に食品事業部門「パタゴニア プロビジョンズ」を設立し、近年、食品事業を通した環境問題の解決に力を入れている。(サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲 )

「新しいジャケットは5年か10年に一度しか買わない人も、1日3度の食事をする。我々が本気で地球を守りたいのなら、それを始めるのは食べ物だ」――。パタゴニアの創設者、イヴォン・シュイナード氏は食品事業を立ち上げた理由をそう語っている。背景には、遺伝子組み換え種や化学肥料、農薬や大量の水の使用によって食品産業が環境にもたらす影響への危機感がある。

日本では2016年から食品事業を展開し、現在までにビールやスープなど6種類、16製品を店舗やオンラインショップで販売している。

このほど発売された缶詰「ムール貝オリーブオイル漬」は、欧州の有機養殖栽培規格に準じて育てられたスペイン・ガリシア州産のムール貝を使用している。

ムール貝などの二枚貝は、海中のプランクトンを食べるため餌や薬品を与える必要がない。また、沈殿物や有機物を摂取するため水質浄化能力が高いとされている。食物連鎖の下層に属す二枚貝は、成長までの期間も短いため、大型魚などと異なり水銀などの有毒素を摂取する危険性も低い。WWFによると、こうした特質を持つ二枚貝漁業を行うことは、周辺に生息する魚や他の生物にも影響を与え、多様な脊椎・無脊椎動物のすみかを生み出し、生物多様性を向上させるという。

パタゴニア プロビジョンズは、製品を通し、人間の手によって変えられた食物連鎖や生物多様性、自然環境を修復・再生するために「リジェネレイティブ(環境再生)型の農業・養殖業」 を実践することを目指しており、ムール貝のそうした特質に着目し、今回の製品化に漕ぎ着けた。

同製品にはスモーク、ソフリット、レモンハーブの3種類の味付けがある。缶詰に使われている野菜やスパイス、オリーブオイルはすべて有機栽培のもの。1缶あたり税込み993円で販売され、賞味期限は約4年間。保存食としても活用できる。

食品産業が環境問題の解決策になる

パタゴニアプロビジョンズが掲げるミッションは、パタゴニアの従来の事業と同じく「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」ことだ。

パタゴニア日本支社の松原聖恵・広報担当は、「これまで農業や水産養殖において『環境に負荷を与えない』ということは、『マイナスの影響を与えない』という意味だった。しかし、パタゴニアとしては、もっとアクティブに環境を再生または修復していくーー。つまり環境をプラスに変えていくことができると考えている。私たちは、食品が土壌や水や空気を健全にし、野生動物を回復するような方法で、食品が栽培、収穫、生産されることで、食品産業自体が『問題』ではなく『解決策の一部』になれると信じている」と話した。

国内での今後の食品事業の展開については、「中長期的には、食品専門流通業者への卸販売を検討し拡げていく考えだ」と説明した。

同社は、新製品の背景を伝える動画「海をクリーンにするごちそう:パタゴニア プロビジョンズ」を制作。スペイン・ガリシア州で同製品をつくる缶詰工場を取材し、ムール貝がどのように調達され加工されているのか。どのような思いで作られ、地域の雇用や経済にどのような影響を与えるのかなどを一つのストーリーにして伝えている。

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