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脱炭素特集

第一生命、東急不動産が“追加性”のあるPPAや新たな自社再エネ発電で「RE100」認定目指す

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東急不動産は再エネ事業を早い時期からスタートし、「RE100」認定を目指す(リエネ静岡神山太陽光発電所)

コーポレートPPA(電力購入契約)や自社の再生可能エネルギー発電所由来の電力を使うことにより、自社で使う電力の100%再エネ化を達成する企業が増えてきている。第一生命保険は、2022年度に事業活動で消費した電力を100%再エネ化したと7月21日に発表した。同社は2021年からオフサイトコーポレートPPAを導入すると共に、非化石証書の調達や省エネを進めることで、目標より1年早く達成した。東急不動産は自社が開発する再エネ発電所由来により、今年から事業所および保有施設の使用電力をすべて100%再エネ化した。どちらの企業も新しい発電設備による「追加性」を重視している。これは、追加性のある再エネが「RE100」認定の基準にも適合し、脱炭素にも寄与するためだ。国内でも「RE100」の要件をクリアした認定企業が生まれてきそうだ。 (環境ライター 箕輪弥生)

第一生命はPPAや省エネで100%再エネ電力を実現

第一生命は協力会社を介してオフサイトコーポレートPPAを導入し、「RE100」認定を目指す(クリーンエナジーコネクト)

企業が排出するCO2の大半が電力由来であることが多いため、電力の再エネ化が企業の脱炭素に最も効率的に寄与するケースが多い。そのため事業経営を再生可能エネルギーで行うための取り組みが加速している。

第一生命は、7月21日、2022年度に事業活動で消費した電力(2億3150万5000kWh)を100%再エネ化し、CO2排出量を年間約10万トン削減したと発表した。同社は、新規に建設する再エネの発電施設、いわゆる追加性のある電力の調達を重視し、2021年からオフサイトコーポレートPPAを導入した。

具体的には、クリーンエナジーコネクト(東京都品川区)が2MWの低圧太陽光発電所(全国22カ所)を設置し、小売電気事業者のオリックス(東京都港区)を介して、第一生命保険が保有する大規模オフィスビル3棟に、22年から約20年間にわたる電力供給を行う。(図参照)

同社はこのほかにも、電気需給契約の見直しや、非化石証書等の環境価値の活用、所有物件における LED 導入や省エネ効果の高い機器への切り替えなど、設備の改善による省エネにも同時に取り組み、再エネ100%での事業経営という目標を1年前倒しで達成した。

同社は、現状の非化石証書での再エネ調達についても、今後はPPAなどの追加性のある再エネへ切り替えを進める方針だ。

第一生命が活用したコーポレートPPAは再エネの電力を長期契約で購入することにより、継続的にCO2の排出量を削減し、化石燃料の価格変動の影響を受けずに電力の調達コストを安定させるため、国内外で企業が積極的に導入している。

同社は、2019年から企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟しているが、「RE100」に加盟する世界の企業の電力調達方法では、2021 年の時点で調達量の 35%をコーポレート PPA が占めている。

また「RE100」の加盟企業が、実際に「RE100」の認定を受けるにはさまざまな技術要件があり、昨年10月に脱炭素に効果的な再エネの電力を拡大するために再エネの種類や調達方法、条件などが改定された。

再エネの調達方法では、1.自家発電、2.コーポレートPPAなどの直接調達、3.小売事業者からの購入などによる電力供給契約、4.トラッキング付非化石証書などのエネルギー属性証書などがある。

そのうち、3の電力供給契約や4のエネルギー属性証書については、調達条件として運転開始から15年以内が条件として追加された。これは新たに開発された追加性のある再エネが、脱炭素に寄与するという認識に基づいたものである。

1の自家発電や、2の直接調達に関しては開始年数の制限はないことから、今後は自家発電やコーポレートPPAの導入がさらに加速すると予想される。

自社の再エネ発電事業により「RE100」認定目指す--東急不動産

東急不動産が所有するリエネ銭函風力発電所(北海道小樽市)

東急不動産は今年初めに事業に使用する電力を100%再エネに切り替えた。オフィスビルや商業施設など同社の事業にかかわる対象の全244施設で使う電力使用量は2022年で約3億 kWh だった。これによりCO2の排出量を年間約15.6万トン削減する。

同社は2014年から「ReENE(リエネ)」の事業ブランド名で展開する再エネ事業を積極的に進め、22年末時点で太陽光 71カ所、風力 10カ所、バイオマス 5カ所の発電所を開発し、発電所の設備容量は合計で 1.3GWを超える。同社はこの自社発電所由来の電力を活用し再エネ100%を実現している。

「RE100」に加盟する同社は、自社の再エネ発電所の「トラッキング付非化石証書」を活用し、事業所で使用する電力と組み合わせる方法を採用している。これは、発電所の属性情報を紐づけし、再生可能エネルギーが由来する発電所の追跡が可能となる証書で、「RE100」の認定を受けるためにも利用が可能だ。

「RE100」に加盟する日本企業は現在81社(2023年7月末)あるが、「RE100」の認定を受けている企業はまだ少ない。2020年に城南信用金庫が「RE100」に認定され、これに東急不動産、第一生命が続くものと想定される。尚、「RE100」に認定されるためには、前述の技術要件を満たし、1年間その基準を満たし続ける必要がある。

東急不動産は、保有する施設が再エネ100%になったことで「環境貢献できるオフィスの価値が認められ、外資系企業をはじめ、物件の競争力向上に効果を発揮している」(同社広報)と営業上のメリットについても言及する。

同社は自社で開発した再エネ設備を自社で使うだけでなく、他社にも供給する事業を始めている。今年4月からはソーラーシェアリングなどで発電した約4MWの再エネ電力を短期PPAサービスにより、高島屋に提供を始めた。

同社は、2025年度までに再エネ事業への総投資額を約3000億円まで拡大して、顧客拡大と脱炭素を両立する事業として成長させる意向だ。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/