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洗剤を使わず水循環、IoTを活用した運営でコインランドリー・ビジネスを変革する「wash-plus」の発想とは

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スマホで個人認証をして、決済・割引サービス、空き状況の確認、洗濯の終了通知などサービスを付加したスマートランドリーを開発する「wash+」

「wash-plus」(千葉県・浦安市)は、店舗運営や料金設定にIoTを活用した「スマートランドリー」を導入し、直営店に加え、星野リゾートや丸井にも採用されるなど店舗数を増やしている。スマホの専用アプリにより予約から決済までを行うだけでなく、気象情報とランドリー利用実績を連動させてサービスの需要に応じて価格を変動させる仕組みで、電力ピーク時のランドリー利用を減らす利用者の「ピークシフト」も実施する。今後は洗濯後の排水をろ過、殺菌して再利用する水循環システムも展開し、大幅な節水につなげることで水資源やインフラ設備の乏しい海外にも進出する考えだ。先進的な発想でコインランドリー・ビジネスを変える高梨 健太郎代表に話を聞いた。(環境ライター箕輪弥生)

独自の発想で業態を開発するwash-plusの高梨 健太郎代表

wash-plusは2013年に高梨代表が立ち上げたベンチャービジネスだ。3歳児の13.2%がアトピー性皮膚炎に罹っているという数字に衝撃を受けたことがきっかけで、アトピーなどアレルギーを持つ人でも安心して使える洗濯をと研究を重ね、洗剤を使わずにアルカリイオン電解水で洗うという世界でも類を見ない洗浄方法によるコインランドリーを開発した。

この方法だと、化学物質を全く含まない洗濯ができ、すすぎが少なくて済むため3割の節水となる。洗浄効果は一般の洗剤を使った場合と相違なく、高pHのアルカリイオン電解水で洗濯するため、洗濯物を除菌できるという。

これだけでも十分差別化されたビジネスだが、wash-plusはこれだけでは終わらない。次に高梨代表が着目したのはコインランドリーの事業性だ。「これまでコインランドリーは自動販売機を置くような使われ方をしてきた。それを変えようと思いました」。コインランドリーといえば24時間開いているところが多いのに対して、その稼働率は全国平均で8.6%と、1割に満たない低い利用率で推移しているのが現状であり、そこに改善の余地ありと判断したのだ。

「どんな時間に行っても同じ価格、同じサービスというのはおかしい。町の八百屋さんでも野菜が売れ残りそうだったら夕方値引きをしますよね」

もっともコインランドリーはその名の通りコインを基本にしたビジネスだ。値上げをしようとしても100円単位なので10%~20%と大きな変動になってしまう。利用頻度によるサービス提供も難しい。そのため、決済をデジタル化することを考え、スマートフォンの専用アプリで洗濯機を遠隔操作したり、料金を決済したりできる「スマートランドリー」システムを構築した。

IoT化することで、さまざまなサービスが可能になった。例えば、キャッシュレス決済に対応し、両替機がいらなくなり、事前予約や洗濯終了連絡ができ、利用頻度によるステータス機能を導入して固定客を増やすことにもつながった。

例えば、洗濯が終わって3分以内に洗濯物を回収した人にはステータスをランクアップするポイントを2倍にしたところ、放置時間が全国平均で26.5分だったのが、16分に圧縮されたという。これも具体的なIoT化の成果である。

ランドリーのIoT化は、政府の節電要請に対応するデマンドレスポンスも可能にした。今年の6月30日から9月30日まで政府の節電要請に対応し、20時~朝6時までの料金を3割安くしたところ、その時間帯の利用が前年同期比で6%上昇した。来年の冬も同様に節電要請に対応したピークシフトを実施する予定だ。

資料提供:wash-plus

今後はこれをさらに進め、気象庁の天候データとランドリー利用実績データを掛け合わせて需要と供給のバランスに応じてリアルタイムに価格を設定するダイナミックプライシングを導入し、「これまで利用されていないかった時間帯での利用を増やし、平均稼働率を上げたい」という。

節電要請では利用者の行動変容によるピークシフトが確認できたので、AIの精度を確認したのち、ダイナミックプライシングを導入する予定だ。

水循環で9割節水

コミュニケーションロボットを導入した直営の猫実(ねこざね)店(浦安市)

高梨代表が考える次の開発は、水循環をテーマとした「Water-Cycle計画」だ。洗いと、すすぎの水を循環させて再利用することで、8~9割の節水を可能にする。

洗う工程には高いpHのアルカリイオン電解水を使うため殺菌性が非常に高く、すすぎ水は中性(pH7程度)で雑菌が繁殖する可能性があるため、紫外線LED等で殺菌する。

洗剤のいらない洗濯方法だからこそできる方法で、これによって排水溝や排水管が不要になり、海外の水不足の地域や排水管などのインフラ設備がないところでも設置できる。
精密濾過でマイクロプラスチックも除去するという。

「日本ではどうしても洗濯イコール洗剤を使うという認識だが、海外でのニーズは高いはずだ」。現在、浦安店で実証実験を行っており、いくつかの課題を解決できれば実用化し、海外での展開も視野に入れる。

こういったこれまでにない取り組みによって、直営店20店舗、FC(フランチャイズ)20店舗に拡大し、星野リゾートや丸井、セーブオン、大阪ガスなどが同社のシステムを導入し、独自のランドリー施設を展開している。

特に星野リゾートは、観光地での排水の問題を解決する、洗剤を使わない仕組みに賛同し、世界遺産に認定された西表島のリゾートをはじめ、洗濯機をホテル内に置く場合はすべてこのシステムを導入している。

さらに、「B to C だけでなくB to B への展開も大きな可能性があることがわかってきた」ため、石油などの費用が高騰して経営が圧迫されているドライクリーニング店や、排水を課題にする船舶での利用などにも挑戦する計画だ。

「今後は“洗濯”だけでなく“洗浄”へと事業領域を広げ、SDGsに貢献するビジネスをしていきたい」

洗剤を使わない、水を循環させるといった、社会課題に挑戦した、これまでにない環境重視の発想とシステムのデジタル化が、ビジネス領域を大きく広げようとしている。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/