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脱炭素特集

燃料高騰でも安定して再エネを調達できる「コーポレートPPA」に企業が熱視線

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花王がオフサイト型PPAで電力を調達するため池を活用した鉾立池太陽光発電所 (奈良県)

ロシアによるウクライナ侵攻で燃料価格が高騰し、新電力の事業停止や撤退が相次ぐなど企業の電力調達に暗雲が立ち込める中、安定した価格で再生可能エネルギー由来の電力を調達することのできる「コーポレートPPA」が注目されている。これは、新設の再エネ発電設備を対象に電力を長期契約で購入するもので、再エネの電力を長期に安定した価格で調達でき、脱炭素にも寄与する。FIT電気は市場価格に連動するが、PPAはその影響もなく価格変動リスクが少ないため、花王やセブン&アイ・ホールディングス、イオンなど「RE100」を目指す企業が積極的に導入し利用が拡大している。(環境ライター 箕輪弥生)

ロシアのウクライナ侵攻を背景に、石炭や天然ガス、石油の価格が高騰し、電力の市場価格が高止まりを続けている。今年3月の市場価格は、前年と比較して約4倍となっている。

これにより電力の小売り事業を行う「新電力」が事業を停止したり、撤退するケースが相次いでいる。もちろん、これは大手電力会社にも大きな影響を与え、新たな契約受付を停止するケースも増え、契約先が見つからない企業が増えるという異常事態が起きている。

一方、今年3月には東京と東北電力管内に政府が「電力需給ひっ迫警報」を出すなど、冬から春にかけての供給ひっ迫や停電のリスクも明らかになった。このことも、電力卸市場価格が高騰する要因となっている。

そもそも日本のエネルギー自給率は11%と低く、海外からの化石燃料に頼っているという危うさがある。今回のような国際的な有事があれば、それは即、エネルギー価格の変動につながってしまう。燃料コストがかからず、自然の恵みを使う再生可能エネルギーの拡大は安全保障上からも、脱炭素の観点からも必須だ。

しかし、化石燃料を使っていないにもかかわらず、再エネ由来のFIT電力を電力会社から購入する場合は、市場価格と連動するため価格の変動リスクを伴う。そこで今注目されているのが変動リスクを受けにくい「コーポレートPPA」(電力購入契約)だ。

「コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)」は企業(電力需要家)が発電事業者と直接、長期間(通常15〜20年)の電力購入契約を結ぶことで、新たに建設した自然エネルギーの発電設備の電力を固定価格で購入できる。

太陽光設備を第三者の「PPA事業者」が保有し、企業は設置された太陽光で発電した電力を使用(購入)する契約のため、需要家は設備導入の初期費用や太陽光発電設備の保守点検費用の負担がない。

コーポレートPPAには、大きく分けて企業の敷地や屋根などに発電設備を設置する、発電設備と需要地点が同じ「オンサイトPPA」と、企業の敷地から離れた場所にある発電設備から、送配電ネットワークを経由して企業に電力を供給する「オフサイトPPA」がある。

コーポレートPPAの活用は世界各国でも増えているが、日本でも事業活動を再エネ100%で行うことを目指す「RE100」加盟企業のうち、28%(2020年)が導入し2015年の3.3%から利用が大きく伸びている。

たとえば、RE100を目指すセブン&アイ・ホールディングスは2021年からオフサイトPPAにより、セブンイレブン40店舗およびアリオ亀有の店舗運営に再エネを導入した。

同様にイオンも、非化石証書を使った再エネ電力調達から、順次PPAモデルを活用した再エネ調達へ切り替えていく予定だ。

花王は発電事業者のジェネックス(愛知・碧南)、みんなパワー(東京・世田谷)及び小売電気事業者のアップデーター(旧みんな電力、東京・世田谷)とPPA契約を昨年9月に結び、4カ所の発電所からの再エネ電力の供給を行う。この契約により、本社ビルで使用する電気の約3割を担う。

花王購買部門の大河内秀記部長は「自家消費はいずれ限界がくると考えていた。オフサイトPPAは長期で再エネの安定供給ができ、追加性があることが魅力だ」と話す。

一方で「長期契約になるのでオフィスの移転などの変化に対応する契約条件を考慮する必要があった」と契約する上での課題も指摘した。

企業にコーポレートPPAの導入を行うアップデーターの大石英司代表は「燃料価格の高騰で脱炭素がピンチに陥っている。価格が市場連動しないPPAなどの再エネ由来の電力を増やすと同時に、需要家が電力の仕組みづくりにも声をあげていくことが重要だ」と話す。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/