住宅向け太陽光発電は売電から自家需要の最大化へ
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住宅向けの太陽光発電システムは、FIT価格の低下をとらえ、売電を主としたものから、蓄電池などを活用した自家需要に重きを置く傾向が明確化してきた。2050年カーボンニュートラルに向けて、住宅の脱炭素化は必須であり、今年8月に国土交通省などの有識者検討会では2030年に新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を設置する方針が示された。しかし、FITでの売電価格が消費者への訴求力に欠けるようになってきたため、新電力からは蓄電池付き太陽光発電プランが続々発表されている。Looop(東京・台東)は太陽光発電システムに加えて新型蓄電池を導入することにより、家庭で発電した再エネを夜間にも使うほか、給湯など熱需要にも活用して自家消費率を最大化する新サービスを10月14日からスタートした。ボーダレス・ジャパン(東京・新宿)も同日、蓄電池と太陽光発電を組み合わせた新プランを発表した。どちらもリース契約で初期投資を抑えているのが特徴だ。(環境ライター 箕輪弥生)
日本のCO2排出量のうち、住まい(家庭部門)からのCO2排出量は16%に当たる(国立環境研究所)。脱炭素のためには、省エネや断熱が必要なことはもちろんだが、住宅でエネルギーを生み出す仕組みを付加することが重要だ。しかし、そのポテンシャルは大きいものの、現在、太陽光発電設備を付帯する戸建ては全体の9%(太陽光発電協会調べ)に留まっている。
さらに、2021年の売電価格は2012年の42円/kWhから19円(10kW未満の設備)まで徐々に下がり、2030年には7円程度になるのではと推測されている。
経済産業省 資源エネルギー庁
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一方で、国土交通省などの有識者検討会では2030年に新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を設置する方針が示され、東京都も新築の戸建てやマンションを対象に太陽光設備の義務化を検討している。
そのため、今後はユーザーに設備のコストメリットを訴求することが難しくなるため、発電した電気をなるべく余すことなく使い、家庭で使う光熱費を削減しつつ、家庭からのCO2排出量を減らすという自家消費が注目される。
そこで、独立系電力小売りのLooopは10月14日、住宅の脱炭素を解決するサービスとして、太陽光発電システムに加え、蓄電池を導入することによって、家庭で発電した再生可能エネルギーを夜間にも使い、自家消費率を最大化するプラン「とくするソーラー 蓄電池付きプラン」を発表した。
同社は、太陽光発電と新型蓄電池「エネブロック」の製品開発からシステム開発、施工、電力小売りまでを自社で行うことで、ユーザーに設備の導入費用を上回る経済メリットを生み出すとしている。
太陽光発電、蓄電池、給湯器でライフラインを確保するLooopのプラン図
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また、電気とガスのいずれでも給湯が可能なハイブリッド給湯器を設置し、余剰電気での給湯も可能とすることで、熱需要への利用を可能にしたことも特徴のひとつだ。
新型蓄電池「エネブロック」はDVDデッキほどのコンパクトな大きさで、屋根裏やクローゼット内など置き場所を選ばず、住宅環境に合わせて容量を増減できる。
最小蓄電容量が2.4kWhで、太陽光発電設備の容量に合わせて増減できる蓄電池「エネブロック」
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同社の中村創一郎代表は、「ユーザーのコストメリット、災害対策、住宅の脱炭素化の3つを解決するサービスだ」と説明する。
再エネ100%由来の電力を提供する「ハチドリ電力」(ボーダレス・ジャパン)も同日、月々定額の太陽光発電パネルリースサービス「ハチドリソーラー」を発表した。太陽光と蓄電池をセットで導入できる「ソーラー+蓄電プラン」、電気自動車を蓄電池として利用して太陽光、住まい、電気自動車をつなぐ「ソーラー+V2Hプラン」など3つのプランからなる。
同社は、「環境負荷を最小限に抑えながら自然エネルギーを増やすため、自宅の屋根を活用するという方法を選んだ」と説明する。
両社のプランは太陽光発電、蓄電池どちらも15年リース契約で、リース期間満了後はユーザーに無償譲渡される。