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脱炭素特集

テナントも脱炭素へ――東急不動産、ヒューリックなど不動産大手が保有施設の電力の再エネ化急ぐ

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東京・丸ノ内 (Moarave)

不動産の大手企業で、自社で使う電力だけでなく、オフィスビルなど所有不動産を再生エネルギーに切り替える動きが急ピッチで進んでいる。東急不動産は全国に保有している再エネ発電所を活用し、2025年にはオフィス、商業施設、ホテルなど保有する全施設で100%再生可能エネルギーに切り替える。ヒューリックは、同社が保有する非FIT再エネ施設からの電力を中心に、2024年の自社のRE100達成、2030年の全保有建物のCO2排出量ネットゼロの達成をはかる。三井不動産も首都圏で所有するすべての施設で2030年度までに、三菱地所は今年度から丸の内エリアなど19棟において、使用する全ての電力を再生可能エネルギー由来の電力に切り替える。テナントの再エネ化を急ぐ背景には、入居する企業の脱炭素化を支援し、コロナ禍で空室率が上昇したオフィスビルの差別化を図ろうとする狙いがあるとみられる。(環境ライター 箕輪弥生)

追加性を重視し、再エネ転換の目標達成を前倒しする東急不動産、ヒューリック

不動産業で最初に「RE100」に加盟した東急不動産は、2014年から再生可能エネルギー発電事業を開始し、8月末時点で開発中も含め67事業、容量1197MWを展開している。9月1日からは再エネ事業をさらに進めるための新会社リエネ(東京・渋谷)を設立し、事業として強化する意向だ。

この再エネ発電所からの電力を活用し、「RE100」の達成目標を当初の達成目標の2050年から2025年にする。まず今年度に約7%、2022年度に約60%の施設の電力を再生可能エネルギーに切り替え、2025年にはオフィス、商業施設、ホテル及びリゾート施設など同社が保有する全施設に100%再生可能エネルギーを提供する計画だ。

同社のスキームは「トラッキング付きFIT非化石証書」を利用し、電力会社との協業でテナントへの電力供給のコストアップを抑える。同社は再エネを事業として拡大すると共に、入居する企業の脱炭素化を支援する。

東急不動産再エネ電力調達の仕組み (東急不動産)

ヒューリックも目標の前倒しを発表した。2025年の「RE100」の達成を2024年に、2050年の全保有建物CO2排出量ネットゼロの達成を2030年にと計画を見直す。同社の大きな特徴は、非化石証書の購入や特定の電力会社との再エネ契約といった方法ではなく、自社で非FITの発電施設を所有し、その電力を利用していることだ。

2020年から開発し、保有する太陽光発電設備や小水力発電設備はすべて非FITで展開し、2024年にはグループ全体で使用する約6000万kWhの電力を自然エネルギー100%で供給できる見込みだ。

ヒューリックは発電事業者のアドバンス(東京・千代田)が開発した太陽光発電所を取得して管理・運営し、発電した電力はグループ内の小売電気事業者である「ヒューリックプロパティソリューション」に売却する。アドバンスは年間に40~50MW程度の設備容量の再エネ発電所を開発する能力があり、ヒューリックが必要な再エネ電力を確保できる見通しがたった。

ヒューリック再エネ電力調達の仕組み(ヒューリック)

つまり、同社は企業が発電事業者と長期の契約を結んで自然エネルギーの電力を調達する「コーポレートPPA(電力購入契約)」を自社グループで完結する仕組みを構築している。

このように東急不動産、ヒューリック共に、新たに再エネの発電所を追加することによって脱炭素に貢献する「追加性」を重視している。

三井不動産、三菱地所は「FIT非化石証書」付き再エネ電力を主に活用

2022年度末までに使用電力を再エネに転換する三井不動産の「日本橋室町三井タワー」

三井不動産は、2030年度までに、首都圏で所有するオフィスビル、商業施設、ホテル、物流施設、賃貸住宅などすべての施設について、共用部に使用する電力、約6億kWh相当のグリーン化を推進する。

昨年末に東京電力エナジーパートナーとの間で「使用電力のグリーン化に関する包括協定」を結び、主にトラッキング付非化石証書を活用した再エネ電力を利用する。

また、テナントからのグリーン電力の要望に対応し、卒FIT住宅用太陽光発電由来の環境価値が付いた電力の提供も行う。

同社の施設は現時点で約120施設あり、そのうち「東京ミッドタウン」や「日本橋室町三井タワー」など基幹的な25施設に先行して2022年度末までに使用電力のグリーン化を実現し、最終的には2030年までに年間換算約3億kWhの使用電力の実質再エネ転換をはかる。

一方、三菱地所グループは、2021年度から順次、丸の内エリアの18棟と横浜ランドマークタワーの計19棟において、使用する全ての電力を再生可能エネルギー由来の電力に切り替える。

電力は、再エネにより発電され、一般送電網を通じて需要家に託送される「生グリーン電力」と、トラッキング付FIT非化石証書を活用した再エネ電力を導入する。同社は共用部分だけでなく、ビルで使用する電力の全量を再エネ電力とするため、対象ビルのテナントは自社で再エネ電力を利用していることを打ち出せるのが特徴だ。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、テレワークが定着するなどオフィス市況は特に下降傾向にある。その中で優良なテナントを誘致するには、省エネや電力のグリーン化などの脱炭素への支援がより重要になってきている。

また同時にそうした環境配慮がされたビルは不動産価値にも影響を与える。そのため、今後は電力のグリーン化、省エネなどの脱炭素をはかるサステナビリティの推進が、不動産価値を左右する時代になってきたと言えよう。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/