サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
脱炭素特集

ソニーグループ、注目の「自己託送制度」を利用した再エネ調達を強化

  • Twitter
  • Facebook
グループ敷地外からの自己託送の実施はソニーとして初めての取り組みだ

自己託送とは、自社と関係がある遠隔地にある発電所で発電された電気を、自社設備へ送電する仕組みだ。ソニーグループは自己託送による事業所間の再生可能エネルギーの融通に加え、4月からは30km離れたグループの敷地外にある牛舎に設置した太陽光発電設備で発電した電力を同社の事業所に託送している。同社は今後もこのスキームを活用した再エネ調達を強化する意向だ。資源エネルギー庁も自己託送を利用した再エネの電力供給を後押しする方針で、要件緩和を検討している。再エネ調達の負担が大きな課題になる中で、グループ企業外からの自己託送制度による再エネ調達に需要家からも期待が寄せられている。 (環境ライター 箕輪弥生)

牛舎で発電した再エネ電気を事業所で利用

牛舎の屋根で発電した電気を使うソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ幸田サイト

ソニーは4月からグループ外の敷地で発電された電力を自社の事業所に全量供給して利用する自己託送を始めた。

敷地外の牛舎(愛知県東海市)の屋根に設置した約400kWの太陽光発電設備で発電した電力を、中部電力の送配電ネットワークを介し、約30km離れたソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ幸田サイトへ供給する。

具体的には、再エネ発電施設の開発や運営を行うFD(愛知県刈谷市)が太陽光発電設備を建設し、この発電設備に係る事業を譲渡する。同時にソニーと15年間のエネルギーサービス契約を締結することで、FDは発電設備の保守、管理、そして電力供給を行う。FDがカバーできない発電予測や電力需給管理の部分を、電力の需給調整などを行うデジタルグリッド(東京都千代田区)が請け負う。

託送するには電力の需要と供給を30分単位で一致させる「同時同量」が必須となるため、デジタルグリッドはAIを使った発電予測や電力の需給調整を行い、それを広域機関(OCCTO)に申請するまでを行う。

オフサイト発電所からの自己託送の仕組み(資料:ソニー)

同社が自己託送制度を利用するのはこれが最初ではない。昨年2月からソニー・ミュージックソリューションズの物流倉庫であるJARED大井川センター(静岡県焼津市)の建屋屋上に約1.7MWの太陽光発電設備を設置し、大井川センターで使われなかった余剰電力を、中部電力の送配電ネットワークを介して同社の製造工場である静岡プロダクションセンター(静岡県榛原郡吉田町)へ供給している。

自己託送する発電量は天候や倉庫側の電力使用量などによるが、これまでの結果として約200万kWhの発電量のうち、約半分を託送しているという。

ソニーグループHQ総務部EHSグループの井上哲シニアマネジャーは「自社グループで発電した再エネ電力を余すことなく使うために自己託送を始めた」と話す。

同社は欧州や中国ではすでに再エネだけで事業経営を行う「RE100」を実現しており、日本でのRE100に向けて、太陽光発電設備の設置や自己託送、電力会社からの再エネの購入、再エネ証書購入などのさまざまな手法を組み合わせて再エネ導入を拡大する意向だ。

条件緩和に期待がかかる自己託送制度

自己託送制度ができるのは非FITの高圧と特別高圧の発電所で、自家消費と同じ扱いになるためRE100の電気として認められる。また、電線使用量(託送料金)がかかるものの、電気使用量に応じて課金される再エネ発電促進賦課金や燃料調整費が課金されないため、現状では電気料金の削減につながる。

これまで基本的に自己託送は発電する事業者と供給先の事業者とが同じ、もしくはグループなどの密接な関係にある事業者に認められていたが、需要家の要望もあり、オフサイトからの再エネ調達について経産省は条件を緩和する方向で進んでいる。ソニーのケースは発電に関わる事業をFDから譲渡されていることで、発電する事業者と供給先の事業者とが同じとみなされた。

自己託送が注目される背景には日本の再エネ証書の価格が中国や欧州に比べて非常に高い水準にあるなど、再エネ調達のコスト高が課題となっていることがある。また、世界では特定の需要場所に他の場所にある太陽光発電所から電気を供給する再エネモデルも一般的だ。

国内でも自己託送が再エネの電力を調達する手段として認知されはじめ、自己託送をサポートし、サービスメニューに加える企業も増えてきている。脱炭素を実現する手法として、需要家が使いやすい、公平性も鑑みた自己託送制度の整備が待たれる。

  • Twitter
  • Facebook
箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/