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世界で広がるB Corp認証:米先進企業オールバーズに聞く、認証取得のメリットとは

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B Corp認証が世界で広がっている。B Corp認証は、環境や社会へのパフォーマンス、透明性、説明責任、持続可能性において優れた会社に与えられる認証制度だ。米国の非営利団体B Labが運営し、厳しい評価基準を満たしている営利企業のみが認証を受けることができる。ESG投資への関心の高まりやコロナ危機もあり、欧米を中心に認証を取得する企業が増えている。いわば、環境や社会に配慮した「良い企業」の証だが、日本で同認証を取得している企業は6社と少ない。国内ではまだ認知度が低いとされているが、一方でなぜ今、世界で広がりを見せているのか。同認証先進国である米国のAllbirds(オールバーズ)に、認証を取得した理由とメリットについて話を聞いた。(島 恵美)

グローバルからローカルイシューまで、新しい経営を目指すオールバーズ

快適なのに、デザインが洗練されていて、しかも自然にも優しい。高機能なランニングシューズは石油由来の素材でないと作れない、という常識を打ち破り、オールバーズは天然素材のハイパフォーマンス・シューズを次々と生み出している。

2016年にサンフランシスコで誕生した同社は、通気性や撥水性といった機能性を損なわず、メリノウールやユーカリ、サトウキビなどの天然素材を使ったシューズの製造から販売まで手がける。高い機能性や、洗練されたデザインが人気となり、2016年の創業からわずか5年で世界40カ国以上に展開するまでに成長した。同社の製品は2020年11月に発表された米タイム誌のTHE BEST INVENTIONS OF 2020にも選ばれている。

オールバーズのスニーカーはすべて天然素材でできている。それぞれの製品ごとに製造から廃棄までの工程でCO2の排出量を計算し、将来的にはゼロになることを目指している

第一に「コンフォート(快適性)」を理念に掲げる同社のスニーカーを支えるのは、天然素材から独自開発した素材だ。靴のデザインと通気性などの機能面の決め手となるアッパーには、メリノウールやユーカリを使用。また、長時間歩いても疲れないクッション性抜群のソールは、石油由来ではなく、サトウキビ由来の油から作られている。さらに、この独自技術をオープンソースとして公開し、他の企業が活用できるようにしている。すでに100社以上からオールバーズの技術を使いたい、といった問い合わせがきているという。

蓑輪氏

「多くの企業が当社の技術を使うようになることで、素材自体の需要が増えます。そうなれば、研究開発が進み、コストが下がります」と同社マーケティング ディレクターの蓑輪光浩氏は話す。「当社の技術が途上国にも広まれば、そうした国でも、地域の天然素材から安価で環境負荷の少ない靴の生産が可能になるかもしれません」と蓑輪氏が考えるように、オールバーズは1社だけではなく、天然素材を活用した「サステナブルなものづくり」が、世界に広がっていくことを目指している。

スニーカーとしての快適性の追求と、徹底して環境に配慮した革新的な製品づくりが注目を浴びる同社だが、環境だけでなく、地域社会といった「社会性」も重視し、B Corp認証を取得している。

昨年1月に日本1号店としてオープンした東京・原宿店でも、地域社会との共生を目指し、近隣のアーティストや障がい者とのコラボレーションによる、店舗づくりを行っている。また、同10月には、原宿・表参道でごみ拾い活動を展開するNPO法人greenbird(グリーンバード)とともに、クリーンアップ活動を行うなど、地域の団体とのコラボレーションを進めている。

フラワーアート・ユニットPLANTICA(プランティカ)によるエントランスのオブジェ。展示会等の装飾で使用されずに廃棄される造花を再利用する
店内の装飾は近隣のフラワーショップ、ROLANS(ローランズ)に委託。花を通じたジョブトレーニングの一環で、季節ごとのアレンジを障がい者たちが考え、行う

B Corpは企業の健康状態のバロメーター

こうした環境や社会への配慮という、数値では評価しにくい活動を客観的に評価するため、オールバーズは創業した2016年からB Corp認証を取得している。

B Corp認証を取得する企業は、B Labが提供する「Bインパクト評価」と呼ばれるアセスメントを実施しなければならない。アセスメントはガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、消費者の5つ分野で実施し、結果は数値化される。200点中80点をとると認証を受けられるが、実際には5%程度の企業しか審査を通過できない厳しい評価だ。

オールバーズでは毎年、B Corp認証のスコアが社内に共有され、前年との差分を比較・分析している。同社のスコアは2020年1月時点で89.4点で、環境分野が28.6点と最も高い。ついで従業員が22.9点、コミュニティ19.6点となっている。同社では項目ごとに、評価が高かった項目と、低評価の項目の分析を行い、翌年以降のアクションにつなげているという。

「B Corp認証をとらない理由が見つからない」

ところで、B Corp認証を維持することで、マネジメント面など現場の負担の増加や、投資家からの反対などはないのだろうか。

「B Corpをとっていることで生じるネガティブなことは、会社にとっても従業員にとっても何も見当たりません。当社では創設者の一人であるジョーイ・ズウィリンジャーが自ら社内に向けて『B Corpをとらない理由が見つからない』と言うように、B Corpにはあるべき企業の姿が示されていると考えます。企業の透明性、説明責任、社会課題への向き合い方、法的責任、どれをとっても、当然取り組むべきことばかりではないでしょうか」と蓑輪氏は言う。

ズウィリンジャー氏

「幸い、当社にはこうした考えに賛同してくださる投資家がいるので、長期的な目線で取り組むことができます。一社ではなく、パートナー企業や投資家、同業者など、より多くの人たちと共に取り組むことで社会を変えることができるのではないでしょうか」(蓑輪氏)

B Corp認証を活用することで、人権や気候変動などの社会的リスク要因に対処することができる。その一方で、株主や社会などのステークホルダーを巻き込み、長期的成長の土台を作り、企業の攻めと守りの両面で、自社の取り組みは正しい方向性に進んでいるのか、また他社と比べて十分なのかをモニタリングすることができる。

日本のB Corp認証は6社にとどまる

一方で日本企業としてB Corp認証を取得している企業はダノン・ジャパン(東京・目黒)、泪橋ラボ(東京・台東)、日産通信(東京・江東)、フリージア(埼玉・児玉郡)、石井造園(神奈川・横浜市)、シルクウェーブ産業(群馬・桐生市)の6社にとどまる。大きな要因としては、Bインパクト評価を英語で受けなければならないことだ。だが、それ以上に高いハードルが「株主中心」から「ステークホルダー中心」への転換だ。これは「株主だけでなく、社会、環境、地域コミュニティといったすべてのステークホルダーを重視する」という考え方だ。しかし、株式会社であれば「株主が最優先ではない」とは言いづらい。日本ではまだ、株主を含む出資者と創業者と経営者が同一の「オーナー企業」でないと、手を上げることが難しいというのが現状だ。

短期的な株主の目だけを見てビジネスをする時代は終わった

それでもコロナ危機を経験し、ビジネスを取り巻く世界の価値観は大きな転換点を迎えている。「欧州のアパレルメーカーなどと話をすると、欧州ではサステナブルでないブランドは死んでいくという強い危機感を持っています」と蓑輪氏が話すように、環境や人権を無視する企業はかつてなく厳しい目にさらされている。

また、米国やフランスでは、脱株主至上主義に向けた法整備も進んでいる。米国の「Benefit Corporation(ベネフィットコーポレーション)」やフランスの「Entreprise à Mission (エンタープライズ・ア・ミッション)」といった新しい企業形態が各国で法的に認められるようになった。これらの企業は従来の一般的な株式会社と異なり、株主の利益だけでなく、労働者、地域社会、環境へのプラスの利益を追求することが求められる。こうした企業に移行することにより、取締役や創業者は、「公共の利益になるが、短期的な利益を損なう可能性のある決定」をすることで株主から訴えられるリスクから守られる。

「株主や投資家の目だけを見てビジネスを推進する時代は終わりました。もうそういうモデルは通用しない」(蓑輪氏)というように、企業自身が何をすべきか、何を目指すべきかの再定義が求められている。こうした環境の中、企業が進むべき道しるべとして、また、自社の取り組みを客観的に社会に証明するツールとして、B Corp認証の役割がますます重要になってくるのではないだろうか。

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島 恵美 (しま・えみ)

ESGビジネスライター。IT企業でサステナビリティ担当を15年経験。企業の内側から環境・社会(CSR)・コーポレートガバナンスの社内変革・体制構築を一通り経験。企業の立場から実効性のあるESGについて考えています。モットーは「明日、ビジネスに役立つヒント」をお届けすること。2017年から2年間パリで生活。2児を子育て中のワーキングマザー。