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テスラ&パワーウォールのリアルユーザーに聞く(後編)「テスラのエネルギーシステムはここがユニーク」

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家庭での電力使用量には余裕のある大容量のバッテリー「パワーウォール」(右)とEVに充電するためのウォールコネクター(左) (写真提供:Yoko Glogowsky 以下、同)

「持続可能なエネルギーで世界の移行を加速すること」を目指す米テスラは、電気自動車(以下:EV)だけでなく、発電と蓄電も重視する。その要となるテスラのパワーウォール(蓄電池)は太陽光発電システムとセットで自立型の電力供給システムを構築する。ソーラーから家、蓄電池へといったエネルギーフローは視覚化され携帯電話でいつでも確認できる。米国の中で最も環境政策に力を入れるカリフォルニア州で実際にそのシステムを自宅に構築したユーザーに、システムの稼働状況や州の支援策について話を聞いた。(環境ライター箕輪弥生)

スマートフォンで家のエネルギーフローを管理

米国カリフォルニア州に住むグロゴウスキ夫妻はEV「テスラModel 3」を購入し、昨年9月に自宅の屋根にソーラーパネル、「パワーウォール」と呼ばれる蓄電池を設置した。「化石燃料を使わない電力供給を実現し、停電の際の電源にもなると考えたから」と夫妻は話す。

グロゴウスキ夫妻はパナソニックのソーラーパネル5.6KWを自宅屋上に設置した

「パワーウォール」は13.5kWhと家庭用としては十分な容量をもち、パワコンを内蔵する。さらに停電などの際には系統との接続を遮断し、自動で蓄電池からの電力供給に切り替える機能がある。

テスラのエネルギーシステム 写真左からテスラウォールコネクター、エナジーゲイトウエイ(バックアップゲイトウェイ)、サブパネル、コンバインボックス、下パワーウォール

また、大きな特徴は充放電の制御および通信機能などを担う「バックアップゲイトウエイ」を取り付けることによって、それらをスマートフォンで管理できる。

「iPhoneで、テスラパワーウォール、ホーム、グリッド(系統電力)の3つのステーションでのエネルギーの流れを常に視覚的に確認できます。例えば、晴れの日は、ソーラーがフルに稼働し、すべての電力をソーラーでまかなっているなど、そのときどきのパワーフロウを随時確認できます」(ブロウスキ夫妻:以下同)

電力の流れをリアルタイムにiPhoneで確認したり、パワーウォールを操作できる(左:昼間、右:夜の電気の流れ)

「ソーラーからのパワー(kW)は3つのステーションへ必要に応じて流れます。まずHOME(家の中での使用)へ流れ、さらにパワーウォールへ流れます。さらに余ったパワーは系統へ流れます。貯金のようなもので、電力会社はそれをクレジットとして記録していて、後から還元してくれます」

パワーウォールにはいくつかの運転モードがあり、グロゴウスキ夫妻の場合、太陽光発電の余剰電力を蓄電し、消費電力に対して太陽光発電の電力が足りない場合に放電する「自家消費モード」で利用していると推測される。

バッテリーに関しては、テスラは予測されるEV需要の増加に応じて、ネバダ州に世界最大のバッテリー工場「ギガファクトリー」を建設している。Model 3のバッテリーパックやパワーウォールなどもここで生産されている。

低価格で高性能の蓄電池を販売できる背景には(日本でのパワーウォール販売価格99万円)、生産のスケールメリットや1カ所に工場をまとめて製造過程を最適化していることがある。

完成すると、ギガファクトリーは再生可能エネルギーですべて稼働する (Tesla HPより)

EV、ソーラーシステムに積極的な優遇策

「テスラモデル3」。スーパーチャージャーでは270 km走行分を30分で充電する

EV購入とソーラーパネルや蓄電池の設置には州や電力会社、そしてカーメーカーからもさまざまな優遇策が実施されている。EVへの移行を早めたいバイデン新政権も今後新たな政策を打ち出すことが予想される。

カリフォルニア州バークレーに住むグロゴウスキ夫妻もEVとソーラーユニットの設置によりさまざまな優遇策を利用した。

「最初のテスラModel 3は2019年度内に購入、そのときは、連邦税の合計納税額の26%を免除してくれました。2台目のテスラModel 3(2021仕様)は、カリフォルニア州から1500ドル(約15万6700円)のキャッシュバックがありました」

「この他、電力会社からEV1台につき、800ドル(約8万3600円)のキャッシュバック、さらにパワーウォール設置により2300ドル(約24万円)が支払われました。またテスラからの無料チャージサービスなどもあります。ただし、これらの支援策は年度によって変わります」

このような支援策について夫妻は満足すると共に驚きを隠せない。

「テスラと電力会社とソーラーの施工会社、そして州と市が、合理性の高い連携プロジェクトを組んでいることで、ユーザーがさまざまな特典を無理なく得られるということが驚きでした」

「将来的にはどの家の屋根にもソーラーパネルが連なり、どの家のガレージにもバッテリーが整備されるということになるのではないでしょうか」

バークレーの近隣の戸建てにもソーラーパネルが目立つ。EVはソーラーシステム導入のフックにもなっている

日本国内でも2030年半ばまでに、東京都は2030年までにガソリン車の全廃を打ち出しているが、一方で電力不足や化石燃料由来の電力についても危惧されている。テスラが提案するような自然エネルギーによる発電とEVを統合する仕組みが、国や自治体、メーカーの支援により市民が手の届く価格で提供されることが待たれる。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/