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テスラ&パワーウォールのリアルユーザーに聞く(前編) 「テスラはこれまでの車の概念を超えたEVだ」

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これからのモビリティのあり方を先取りする「2021年テスラモデル3 (ロングレンジ)」(写真提供:Yoko Glogowsky 以下、同)

バイデン米新政権が誕生し、パリ協定への即時復帰、脱炭素化に向けた動きの中でバイデン新大統領は電気自動車(以下:EV)を対策の要として重視する。世界では昨年、米テスラがEV約50万台を販売し、時価総額もトヨタ自動車を抜いて自動車メーカーとして世界首位になった。テスラは「サステナブルエナジー」を社のミッションにあげ、EVとパワーウォール(蓄電池)をコアとした独自のエネルギーシステムを提案する。テスラとエネルギーシステムの独自性とは何なのか。実際にそのシステムを自宅に構築した米国カリフォルニア州に住むユーザーにテスラの導入を決めた理由や乗り心地を聞いた。(環境ライター箕輪弥生)

システムが自動的にアップデートされるコンピューターのような車

テスラは、日産リーフのように車体のバッテリーではなく、「パワーウォール」を介してホームエネルギーマネージメント(HEMS)を構築する

カリフォルニア州は米国の中でも先駆的な環境政策を進めており、2035年までにガソリン車の新車販売を終わらせ、すべての車をEVなどの排ガスゼロのZEV(ゼロエミッション・ビークル)にすることを義務付ける方針を打ち出している。同時にカリフォルニア州は国内で最もEV率が高く、テスラの販売数も伸びている。

このカリフォルニア州の北部、バークレーに住むマイケル・グロゴウスキさんと容子さん夫妻は、それぞれに「テスラモデル3」(ロングレンジモデル)を購入した。テスラに決める前に、ご夫妻は徹底的にインターネットで比較リサーチをした。テスラは宣伝広告をしないが、数多くのテスラのオーナーが自らの体験談や情報を公開していて、これらの情報は非常に役立ったという。

「テスラモデル3」の購入を決定した理由についてご夫妻に聞いてみると以下のような答えが返ってきた。

1 )EVは排気ガスゼロで大気汚染の原因にならない。グロゴウスキ夫妻はソーラーで発電した電気をEVのメイン電源としているので自然エネルギーが電源の主となるためCO2排出も少ない。

「原子力発電や石炭火力発電による電力発電をできるだけ避けたいと思っていました。テスラを購入した以上は、ソーラーとテスラパワーウォールなどのパワーチャージ・システムを使い、できる限り自宅の電力を自然エネルギーでまかないたいと考えました。また、停電などの際のバックアップとして機能させたいという点もありました」(グロゴウスキさん:以下、同)

グロゴウスキ夫妻の自宅屋上に設置されたソーラーパネル由来の電気がテスラの主電源となる

2 )EV利用による優先通行や駐車などの利便性
カリフォルニア州ではEV購入者は優先レーンの通行許可が得られ、EV専用の駐車スペースを設けるなどの利便性を付与している。

「EVはフリーウェイの専用レーン(カー・プール・レーン*)を同乗人数や時間帯にかかわらず利用できるというメリットがあります。これにより、ラッシュ時などは最大1時間ぐらいの時間を短縮できるのです」

*バスや2人以上が同乗する自動車、EVなどが通行できる優先レーン

3 )現在の時点で、最も安全な車のひとつであること。

「ビルトインされたビデオカメラが車を取り巻く状況をリアルタイムで録画。例えば、誰かが知らない間に車を損傷した場合でも録画されているため、完璧な証拠となります」

「前の車との車間を車1台分または2台分に保つように設定すると、自動的にその車間を保つようにスピード調節する “クルーズコントロール”があり、前を走る車との車間を自動的に調節するため、安全性において高い信頼性を持てます」

4 )車両システムの改善がインターネット環境で配信され、自動的に行われる。

「テスラはコンピューターのようにソフトウエアで管理コントロールされ、そのソフトウエアのアップデートやシステムの改良などがWi-Fiを通じて自動的に行われ、常に新しいシステムで乗ることができます」

5 )燃料(電気)のチャージにストレスがない

バイデン大統領は、EV普及を最優先課題に据え、今後、充電施設を55万カ所に新設すると公約している。テスラも急速充電ができる「スーパーチャージャーステーション」を全米に拡大するなど公共の場でのEV充電インフラが整いつつある。

自宅でのEV充電については、テスラのシステムの場合、太陽光発電で発電した電気を家庭の分電盤を通してEVへ充電する。なお、テスラ・パワーウォール(蓄電池)とEVのバッテリーを直接つないで給電することはできない。

「自宅にテスラウォールコネクターを設置すると、自宅でチャージできるため、ガソリンスタンドはもとより、チャージステーションなどへ行く必要もなく大変便利です」

「ロングレンジタイプを選んだため、1回のチャージで320マイル(515km)の走行が可能で、ほとんどの目的地へ充電することなく往復できます」

テスラ ウォールコネクターを設置すると自宅で高速充電が行える

自動的に充電ステーションへ誘導

では、実際購入してテスラを利用してみての乗り心地や先進性、メリットをグロゴウスキ夫妻はどのように感じているのだろうか。

運転席まわりはミニマムなデザイン

まずデザインだが、テスラは運転席にあるモニターを介してほとんどの操作をこなすため、インパネにはスイッチ類がほとんどない。

「内装インテリアが、極力シンプルでミニマイズされています。それでいて機能性に富んでいて、視覚的に非常にわかりやすい。ドライバーができるだけ安全に運転に集中できるよう、操作上の手間が最小限になるように、かつ最大限の効果があるように設計されていると思います」

「運転席には、15インチのタッチパネルスクリーンとハンドルの左右のレバーしかありません。運転操作は右レバーの上下で、前進、バック、パーキングの3つの操作のみです」

ナビゲーションやエアコンからオーディオシステムからパワーモードの選定や回生ブレーキの効き具合まですべてこのスクリーンで行う

運転もアクセルペダルを緩めた時に回生ブレーキで減速できるので、ほとんどひとつのペダルアクションで事足りる。

「最も感嘆したのは、ワンペダル運転で非常に快適なこと、ほとんどブレーキを使わなくて運転できます。つまりアクセルの反応が抜群に繊細で、運転中のアクセルとの一体感が魅力です」

内燃機関を持たないため、フロントにもトランクがあり収納スペースも大きく、もちろんオイルチェンジなども必要ない。

「トランスミッションのスパークプラグ、ラジエーター、スターター、オルタネーター、排ガス有害成分を低減する装置、マフラー、排気管、ガソリンタンクなども必要ありません。その分トランクにも十分なスペースがあり、フロントにもトランクがあります」

ガソリン車とは全く異なる仕組みは「フロントトランク」に象徴される

航続可能距離も長く(テスラ公称580km)、バッテリーの充電状況や航続可能距離の確認をスマートフォンで行うほか、自動的に充電ステーションへ誘導するシステムが完備している。

「目的地までのチャージが足りない場合は、テスラ自身が自動的にチャージの必要を判断、最寄りのスーパーチャージャーまで確実にナビゲートしてくれます。つまり、うっかり途中でパワー切れというような心配がありません」

「iPhoneを車のロック、ロック解除に使います。その他、ソフトウエアのアップデートのお知らせ、今テスラ自体がどういう状態なのか、充電状況やソーラーパネルの稼働状況が、iPhoneまたはiPadで視覚的に確認できます」

iPhoneはHEMSのごとく、ソーラーやパワーウォールの充放電状況を視覚的に見せる

テスラモデル3には前述した先行車追従型の「クルーズコントロール」と、操舵をクルマにまかせる「オートパイロット」機能がある。どちらも360度250mまで先を視認できる8個のカメラ、12個の超音波センサーによってデータを解析する。また、将来的に完全自動運転に対応するために必要なハードウエアが新しいテスラにはすべて搭載されている。

「前の車や歩行者、障害物、あるいは他の車が異常に接近してきた場合など、それらとの安全な距離が保てないと判断されるスピードの場合、警戒音を発して注意を促してくれます」

燃料コストも大きく削減したという。マイケル・グロゴウスキさんはテスラ以前にトヨタのレクサスSUVに乗っていたが、電気代は以前の燃料費の4分の1になったという。

「これまでガソリン代として平均毎月230ドル(約2万4000円)を使っていましたが、現在は運転量にもよりますが、月平均50~70ドル(約5200〜7300円)となりました」

このように、テスラは今までの車の概念を変える電動車としてさまざまな機能をアップデートしている。加速はスポーツカーを超える走る楽しみを実現しつつ、EVとしての利便性や安全性を最大化し、自動運転などの次の時代に備えたハードウエアを備えている。またこれは後編で紹介する発電、蓄電システムと連動することで完成する。

「従来の自動車の設計概念を超えたところでスタートしている車ですから、従来の車としての先入観があてはまらないところにテスラの凄さがあるのではないでしょうか。ただ、iPhoneやスクリーンパネルでの操作などに慣れていない人は、最初は戸惑うかもしれません」

グロゴウスキ夫妻も改めてテスラについてこう話す。そして、それは未来のモビリティを考える上でも多くの示唆に富んでいるようだ。

テスラ&パワーウォールのリアルユーザーに聞く(後編) 「テスラのエネルギーシステムはここがユニーク」 明日1月29日、公開

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/