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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

「働き方改革」を刷新――11社横断プロジェクトの狙い

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イトーキやシマノ、スノーピークなど11企業・ブランドは3月末、働き手視点に立った新しい働き方のソリューションコンテンツを提供する企業横断プロジェクト「FROM PLAYERS(フロムプレイヤーズ)」を設立した。「働き方」の範囲を、業務時間帯だけでなく通勤から業務後までと幅広く捉え、働く人が心身ともに健康で、高い生産性を発揮できることを目指すものだ。「働き方改革にムーブメントを起こしたい」と話す、同プロジェクト事務局の八木佳子・イトーキ商品開発本部ソリューション開発統括部 Ud&Ecoソリューション開発部 部長に話を聞いた。(オルタナ編集部=小松 遥香)

「FROM PLAYERS」に参画するのは、イトーキ、オフィスポ、Campus for H、クラフトボス、シマノ、スノーピークビジネスソリューションズ、セノー、タニタヘルスリンク、東京西川、ユニバーサル園芸社、ルネサンス。同プロジェクトでは、4月末まで、新しい働き方の提案を効果検証する「フィールドテスト」に参加するトライアル企業を募集している。

ーー11企業・ブランドが集まった経緯を教えてください。

話し合いを始めたのは、去年の夏からです。みんなで集まったらもっと面白いことができるのではないかと思ったことがきっかけです。

「働き方を本当に変えたい」と考える人が必要とするものがどのようなものかを考えました。働くということは、業務中だけのことではなく、そのために通勤することも業務後の時間をどう過ごすのかということも含みます。

「FROM PLAYERS」事務局の八木さん

しかし、11企業・ブランドがそれぞれ持つ商品・ソリューションは「働き方」という全体の中のワンシーンや1つのアイテムに限られています。イトーキであれば、提案できるのはオフィスの中の家具、スノーピークさんであれば屋外やオフィスの中の共有スペースで使う商品です。

本当に必要とされる提案をするためには、これまでよりも広く働くことを捉え、ソリューションを考える必要があります。そこで、今回の11企業・ブランドが集まり、連携することを決めました。

今後は、各企業・ブランドが持っているものを組み合わせ、この11企業・ブランドが集まらないとできないソリューションを提案していきたいです。「FROM PLAYERS」の事務局はイトーキに置いていますが、参加する企業・ブランドは横並びで活動しています。

「働き方=プレイスタイル」という考え方

――FROM PLAYERSが目指す「働き方」とは何でしょうか。

「はたらく人ひとりひとりが、より良いコンディションで、最高のビジネスパフォーマンスを発揮できる状態をつくる」ことです。

「最高のビジネスパフォーマンスを発揮すること」を目指す背景には、1995年を境に日本の生産年齢人口が減少し続ける中で、人材や生産性が企業の成長においてこれまで以上に重要になってきていることがあります。

しかし、日本人1人当たりの生産性は諸外国に比べて低いといわれています。「1人あたり名目国内総生産(GDP)」を見ると、日本は2000年に世界2位だったにも関わらず、2017年末に発表された最新の結果(2016年のもの)ではOECD加盟国35カ国の中で18位でした。

また2014年3月に、「FROM PLAYERS」の参画企業が「日本人のパフォーマンス発揮度」調査を行った際、「仕事に関する自分の能力を100としたときに、直近1カ月であなたは、どれぐらいご自身の能力を発揮できたと思いますか」という質問に、調査対象者4500人が答えた平均値は約69%でした。残り約30%の能力を発揮できていないことが分かっています。

ですから、より良いコンディションで最高のパフォーマンスを発揮できる新しい働き方を生み出していきたいと思っています。

――「『WORK』から『PLAY』へ」というコンセプトを掲げています。どういう意味でしょうか。

「WORK」は、「It doesn’t work」というように機械やロボットにも置き換えられる単語です。ですから、私たちは、働き手がより主体的に、生き生きと遊ぶように楽しく働く「PLAY」を目指すべきではないかと考えています。スポーツ選手も「プレイする」と言いますよね。最高のパフォーマンスを発揮するために、スポーツ選手は自分のコンディションを整えます。働く人も同じです。

「FROM PLAYERS」では「ワークスタイル」ではなく「プレイスタイル」と言うようにしています。「プレイスタイル」とは、ワークの垣根を越えライフも含めた働き方の考え方です。

「FROM PLAYERS」は、働き手「PLAYERS」の視点に立って、「いいはたらく」とは何かを考えるという意味です。ロゴマークも、ビジネスの象徴であるネクタイを180度ひっくり返すことで、発見の象徴であるエクスクラメーションマークに見立てています。「どんな働く現場にも、見方を変えるだけでイノベーティブな発見がある」という理念を表現しています。

360度提案でフィールドテストを実施

―4月末までフィールドテストに参加するトライアル企業を募集しています。どのようにフィールドテストを実施されるのかを教えてください。

フィールドテストには、5-10社のトライアル企業に参加いただきたいと考えています。

実施方法は、まずトライアル企業の方々に現在のプレイスタイル(働き方)を聞き取ります。そして、トライアル企業と「FROM PLAYERS」のメンバーでワークショップを行い、どういうプレイスタイルを目指すのかを書いていただきます。

次に、11の企業・ブランドの知見や事業領域を連携させ、環境や制度、教育などさまざまな視点「360度視点」で、最高のパフォーマンスを発揮できるソリューションを提案し、実証実験を行います。

例えば、通勤については、仕事への活力が沸かないという場合、自転車通勤を提案するということも一つの方法です。実際に、朝、身体を動かすことでポジティブな気持ちで仕事ができるという検証をシマノさんがされています。また自転車で帰宅することが、自宅での時間を充実させることにつながったという検証結果も出ています。

逆に、朝から疲れてヘトヘトだという場合は、通勤時にきちんと寝るためのソリューションを提案します。ワークもライフも上手くいくための通勤時間の提案を行います。

他にも、通勤をゲームにすることもできます。歩いたり、本を読むとポイントが貯まるようにし、特典をもらえるようにすることも可能です。チームで競うこともできます。

会議ですと、ノンアルコールビールを飲みながら会議することを提案することもあります。私たちも試しましたが、ノンアルコールビールを飲みながら会議をすると空気が和み、意見が出やすくなります。

テントの中で会議することも良いと思います。これはオフィス家具屋としては残念なぐらい良い雰囲気になります。オフィス用じゃないからこそ、オフィスとは違う雰囲気を生むことができます。

スポーツ会議というものもあります。座らずに立ったままで仕事をすることは集中力を高めると言いますが、机もなくしてしまい、その代わりにボールを蹴り合いながら会議します。

トライアルが終わったら、本当に意図していた働き方が実現できたのか、パフォーマンスが変わったのかを検証します。さらに変えるとすればこういうところではないかと言った提案をします。PDCAを1回まわしてみるというのがフィールドテストです。

――フィールドテストはどのぐらいの時間をかけて行う予定でしょうか。また「FROM PLAYERS」や参画企業・ブランドがフィールドテストを通して目指すものは何でしょうか。

期間は3-6カ月を予定しています。すぐに結果が出るものもあれば、結果が出るまでに時間がかかるものもあります。秋口には、すべてのフィールドテストが終わっていなくても、それまでの結果を公表する予定です。

世の中にフィールドテストの結果を還元し、さらに次の提案をしていきたいです。「プレイスタイル」を提案するセミナーなどを行い、官庁とも連携して、新しい働き方が日本社会に定着するようにしていきたいと思います。

ビジネスとしてどういう形になるかは分かりませんが、フィールドテストを通して、より新しく、まだ各社が持っていない商品やソリューションの開発ができたらいいと考えています。

何より、多くの人に「それはいいね」と賛同してもらえるような新しい働き方のスタイルを発信していきたいです。私たちだけではなく、フィールドテストに参加する企業の方、この先「FROM PLAYERS」が協働する方々と一緒に、これからの新しい働き方をつくっていきたいです。

――ワークとライフが溶け合うような働き方を提案していくということでしょうか。1980年代以降に生まれた世代「ミレニアル世代」もそうした価値観を持つと聞きます。

そうですね。ワークとライフを分けてバランスをとるのではなく、ワークもライフもどちらも上手くいくよう、全てのことを考えて働き方をデザインすることを目指しています。

ミレニアル世代は、充実した状態で良いパフォーマンスを発揮したいと考える方が多いと言われます。きちんと美味しいものを食べ、よく寝ないと、楽しく働けないし成果も出ないということも直感的に分かっています。

アメリカのシリコンバレーの企業では、そういうミレニアル世代などの若くて優秀な人材を獲得するためにも、ライフのサポートを充実させる企業が多いです。会社の中にレストランがあり、クリーニングも出すことができ、会社に来てもライフが損なわれないような仕組みがあります。

管理者や経営者目線の働き方ではなく、「働き手視点」の新しい働き方を実現することがより良い社会の実現につながると思っています。

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小松 遥香

オルタナ編集部 。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。