サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

高級ブランドが相次ぎサステナビリティ・シフト加速

  • Twitter
  • Facebook
今月14日、「ファーフリー」を宣言したフルラのSNS


高級ファッションブランドのサステナビリティ・シフトが加速しそうだ。今月14日にイタリアのフルラ、15日には同ヴェルサーチが相次いで製品に動物の毛皮を使わない「ファーフリー」を宣言した。4月には、グッチやサンローランを傘下に収める仏ケリングが「ファッションとサステナビリティ」をテーマに6週間の無料オンラインコースをロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(LCF)と共同で開講する。(オルタナ編集部=小松 遥香)

フルラは14日、自社のSNSに「責任」と書いた画像を掲載し、環境と動物への配慮を理由に毛皮の使用を中止すると発表した。毛皮を使用しない商品は、今年11月から店頭に並ぶ。

ヴェルサーチは15日、クリエイティブ・ディレクターのドナテラ・ヴェルサーチ氏が、英エコノミストのカルチャー誌「1843」で「毛皮の使用はやめる。ファッションのために動物を殺したくない。正しいこととは思わない」と発言した。

ファッション業界では2016年にアルマーニ、17年にグッチやジミーチューなどが「ファーフリー」を宣言した。それ以降、今年2月のニューヨークコレクションで、トム フォードとマイケル・コースも同様に宣言し、脱毛皮の動きは加速している。

ケリングCEO、サステナビリティ・シフトはビジネスチャンス

こうした高級ブランドのサステナビリティ・シフトは「ファーフリー」だけにとどまらない。ケリングは4月9日、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(LCF)と共同で「ファッション&サステナビリティ:変化する世界のラグジュアリー・ファッションを学ぶ」と題した無料のオンラインコースを英国発の大規模公開オンライン講座「FutureLearn」で開講する。インターネットに接続できる環境であれば、世界中が可能だ。

講座概要には、「ファッションをさらにサステナブルにするにはどうすべきか」との問いが掲げられている。自らファッション産業を、「世界で最も汚染された産業の一つである」とし、ファッションにはこれを変える力があると説明。

第1回目の講座は、「ファッションにおいてサステナビリティが重要な理由」、続けて「変化する世界に合わせたサステナビリティのコンテキスト化」、「ラグジュアリー・ファッションのためのサステナビリティ」など全6回の講座が1週間に1回、6週間にわたって行われる。

ケリングのフランソワ=アンリ・ピノーCEOは、「ケリングでは、ラグジュアリー・ファッション業界のサステナビリティとイノベーションへの転換は、資源に限りのあるこの世界において必要なことというだけでなく、絶好のビジネスチャンスであるとも考えています」と述べている。

ファッション産業の課題

約2.5兆円の経済規模を持ち、世界の6人に1人が同産業に関わっているファッション産業は、サステナビリティ・シフトをせざるを得ない転換点を迎えている。世界の中産階級の人口増加により、ファッション産業が抱える環境負荷や貧困問題はさらに深刻化すると予想されるからだ。

UNECE(国際連合欧州経済委員会)によると、同産業が消費する水の量は全産業の中で第2位であり、世界の廃水の20%が同産業から排出されている。コットン製のシャツ1枚を製造するのに約2700リットルの水を消費するという。この量は、一人の人間が飲む2.5年分の飲料に匹敵する。

世界の二酸化炭素の排出量の10%を占めるのもファッション業界だ。コットン生産のために使用する殺虫剤の量は世界の24%。移り変わりの早い業界ゆえに、85%の衣服は廃棄され、その量は1年で210憶トンに上る。サプライチェーンの労働力の8割は女性であり、児童労働に依存する産業でもある。

カルバン・クラインが1994年、動物愛護を理由に「ファーフリー」を宣言してから24年が経つ。昨年8月には、米ファッション誌「マリー・クレール」が初めて「サステナビリティ特集号」を発売した。米・サンフランシスコ市が、今月21日に来年から毛皮製品の販売を同市で禁止すると決めたことも「ファーフリー」を加速させるだろう。高級ファッションブランドのサステナビリティ・シフトが鮮明になったことで、日本を含め世界のファッション業界の潮目が大きく変わりそうだ。

  • Twitter
  • Facebook
小松 遥香

オルタナ編集部 。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。