サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

家庭用蓄電池の開発に拍車、市場規模は2020年に5倍へ

  • Twitter
  • Facebook
電力小売りと組み合わせたプランが好評の「Looopでんち」

家庭で手軽に電気を蓄える家庭用蓄電池の開発・発売が熱気を帯びつつある。2019年から順次、電力の余剰買い取りが終了する住宅が増えていくことが背景にあり、市場は向こう5年間で5倍になるとの調査報告もある。電力小売も行うLooop(東京・文京)は90万円を切る蓄電池を今年7月から本格発売。東芝ライテック(神奈川・横須賀)も太陽光発電と直流のまま連携できる家庭用蓄電池を7月から、オムロンは大容量で急速充放電ができる小型蓄電池を10月に発売予定だ。さらに米テスラも日本で新型の家庭用小型蓄電池の予約販売を始め、注目を集めている。(箕輪 弥生)

電気は「売る」から「貯めて使う」へ?

住宅の太陽光発電システムをめぐる環境はめまぐるしく変化しつつある。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)が今年4月に改正され、太陽光発電による売電価格の減額が進む一方で、パネルや設置費用も価格ダウンし、発電コストが系統からの電力料金と同等、もしくはそれ以下になる「グリッドパリティ」に達したという見方もある。

さらに2019年には、太陽光発電による余剰電力の買取期間が終了する住宅が50万軒前後にのぼると見られ、その後も毎年10万軒単位の世帯がFIT切れを迎える。そのため、これらの世帯では電気を「売る」から「貯めて使う」に関心が移るのではと考えられている。その需要を取り込むと考えられているのが家庭用の蓄電池だ。

シード・プランニング(東京・文京)は、国内の蓄電システムの市場動向に関する調査を今年4月に発表した。それによると住宅用蓄電池の市場規模が2020 年度には約1,700 億円に、販売台数は約5倍に膨らむと分析する。中でも戸建て住宅用蓄電システムが市場成長を牽引すると予測している。

その市場拡大には、前述の「2019年問題」に加え、エネルギー消費量の収支がゼロとなるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を国が後押ししていることや、蓄電システムの価格低下などの要因をあげる。

相次ぐ家庭用蓄電池の新製品導入

オムロンの「住・産共用フレキシブル蓄電システム」は9.8kwhタイプをシリーズ追加

拡大する需要をとらえようと、家庭用蓄電池メーカーも相次いで新商品を投入している。

東芝ライテックは、家庭用蓄電システム「eneGoon(エネグーン)」の新製品として、太陽光発電と直流連携できる複合型パワーコンディショナを採用した「ハイブリッドタイプ屋外モデル5.0kWh」など2タイプを7月から発売した。

パナソニック株式会社 エコソリューションズ社は、10月から住宅用の「創蓄連携システム」の新製品「パワーコンディショナR蓄電池取付可能タイプ」を導入する。

オムロンも同様に10月から小規模産業施設や戸建住宅に向けに9.8kWhの大容量で急速充放電ができるタイプを追加した。どちらも、既に太陽光発電システムを導入されている住宅などにも後付で設置ができることを特徴とする。オムロン環境事業本部 鈴木純子広報担当は、「2019年以降に拡大が想定される余剰買取制度の買取期間終了後の自家消費ニーズに対応した」と説明する。

電力小売りや AI と連動した蓄電池も

太陽光発電システム事業や電力小売事業を手がけるLooopは、電池容量を4.0 kWhに抑えて90万円を切る「Looopでんち」を7月から本格販売している。200万円前後と高単価な蓄電池が多い中で、同社は1000軒を超える太陽光発電を設置する家庭の消費量などの実態を分析し、4.0 kWhを最適値としてコストダウンをはかった。

さらに事前に天候を予測し、各世帯の電力需要、太陽光パネルでの発電量などを学習させるAI(人工知能)を活用することで、売買電を最適化し全自動で運転を行う。たとえば、翌日が雨予報の場合は、事前に夜間など電力が安い時間帯に多めに蓄電するなど、AIを搭載したサーバーからの遠隔操作により、リアルタイムで効率的な充放電を行う。

蓄電池に関心を持つ層は、「売電期間が終了した10年後からをどうするかを心配する個人層とZEHを推進するハウスメーカーや工務店の2つの層が目立つ」と同社蓄電池事業部 堤教晃部長は分析する。

同社は蓄電池の販売に加え今年9月から蓄電池や太陽光発電装置と共に同社の電力小売メニュー「Looopでんき」を導入することで電力価格を割り引くプログラムを始めた。太陽光発電を設置する家庭が同社の提供する電力を契約し、同社の蓄電池を利用すると電気料金が最大で34%安くなる。「電気代を安くできるのも、AIを導入し仕入れ値を抑えられるから」と堤部長は説明する。

同社では約6万件以上の電力小売を扱うが、「割引プログラムには1週間で200件以上の問い合わせがあり予想以上の反応だ」(堤部長)という。

パナと共同で世界最大の電池生産工場を建設するテスラ

予約が多く、納品開始時期は未定のテスラ「パワーウォール2」@Tesla

価格を抑えた家庭用蓄電池では、米国テスラが販売する家庭用蓄電池「パワーウォール」も関心を集める。同社は2015年から家庭用蓄電池を販売し始め、現在2代目となる「パワーウォール2」の予約販売を始めている。売電を行う機能はないものの、13.5kwhで61.7万という価格は注目に値する。電気自動車を製造販売する同社はパナソニックと共同で、米国ネバダ州にリチウムイオン電池の生産工場「ギガファクトリー」を建設し、今年1月から稼働を始めた。完成時は敷地面積約60万平方メートルという世界最大の工場となると見られ、大量生産による更なる価格低下を目指している。

  • Twitter
  • Facebook
箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/