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地方創生とは「自ら稼ぐ力を身につけること」――楽天

今年5月に創業20周年を迎えた楽天は、企業理念に「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」を掲げている。国内ECシェア25%強を占める主力事業の「楽天市場」を活用した地域活性化に力を入れ、11道府県13市2町の26自治体と包括連携協定を結んだ。ECカンパニー地域活性課の塩沢友孝・シニアマネージャーと柘植正基・ヴァイスマネージャーは「地域が稼ぐ力を身につけ、住民を巻き込んだ地方創生」を目指している。(松島 香織)

――地方創生に力を入れていらっしゃいますが、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という企業理念が元々あったのですね。

塩沢友孝シニアマネージャー(以下、塩沢):地方の中小企業に対して、インターネット通販という方法で、販路を全国や全世界に広げていく支援をする。それが「楽天市場」の役割です。地域活性化に関しては、eコマースを通じて「稼ぐ力」を身につけてもらい、日本を元気にしたい。これが楽天のミッションです。地域活性課は2013年に新設された部署で、地域という切り口で取り組んでいます。

楽天市場には、自治体の市長から一目置かれているような経営者がいて、自治体の補助金等を利用せず売上を伸ばしています。そういう元気な企業を増やすことと、地域の企業と自治体をつなぐ役割が当社にはあります。

「日本を元気にすることが楽天のミッション」と話す塩沢シニアマネージャー

――地域活性課を新設してから、事業としての手応えはありましたか。

柘植正基ヴァイスマネージャー(以下、柘植):地域活性化事業は2009年頃から始めました。事業者から、月に何千件という楽天市場への出店についての問い合わせがあったのですが、地域ではネット活用が進んでいない。そこで事業のポテンシャルに気付いたのですが、私たちから個人へのアプローチはできません。

そのため、自治体に対してECの魅力や可能性について広めていきました。しかしEC化だけでは自治体の課題解決にならないと気づきました。当時は楽天市場に出店してもらうことが目標でしたが、その地域の魅力を発信してもらうにはどうしたよいか、雇用をどうするか、次世代育成はどうするのか等、次々と課題が出てきました。

塩沢:現在、当社は26の自治体と包括連携を結んでいます。本質的な地域課題に向き合うことは簡単なことではなく、いくつかの段階を踏みながら進んでいきます。各自治体との包括連携協定の中身は、森林の保護や被災時の物資輸送試験、耕作放棄地の活用、高校生に向けたeコマースの講演会や事業者向けの授業等、幅広いです。それは我々の役割であり、存在意義です。

誇りをもって自治体に正しいことを伝えたい

――7月に主催された「地方創生ECサミット」には2日間で67団体91名が参加し、活発な事例報告や交流がありました。参加者から、楽天の取り組みは高い評価を受けています。

塩沢:ありがたいことに、関わった自治体から口コミで他の自治体の話をいただくケースが増えてきました。地域活性課として本当にやりたいことをやるには、人手が足りないくらいです。

柘植:サミットに参加した自治体から、もっと詳しい説明を聞きたいという要望を数多くいただきました。企業理念の「エンパワーメント」を実感しています。

私たちは誇りをもって自治体と向き合っているので、自治体が出した企画を簡単に「良い」と言いません。根本的な解決にならないことにははっきり「良くない」と言います。正しいことを正しく伝えていきたい。その姿勢を評価していただいたのではないでしょうか。

「本気だからこそ評価していただいているのでは」と話す柘植ヴァイスマネージャー

塩沢:主体は自治体で、私たちは支援する側です。「どうしたいのか」という思いが一番重要です。その思いに共感してこそ、上手くいきます。

柘植:本気で話したからこそ、変わってくれた自治体がありました。改めて本気でやるべきだと確信できました。お会いする自治体の多くは、課題をしっかり認識し、どうなりたいか具体的に考えています。さらに現状のやり方では難しく、「自分の部署だけでは解決できない」と気付いています。

塩沢:地方創生は、商工課だけではできません。観光課等も必要です。そういう部署を横断できる「縦割り」を壊す人が必要になってくるわけです。

柘植:若い職員が増え、新しい発想を持った人が増えてきたように感じます。そういう人がいる自治体は、今までのやり方では変わらないと危機感をもって積極的に動いています。

塩沢:包括連携を結んだ岩手県矢巾町もキーマンからのボトムアップでした。岐阜県飛騨市は都竹(つづく)市長自らが「過疎先進地」と言っています。空き家なども課題が山積していますが「飛騨を利用してほしい。ここでさまざまなサービスを試して上手くいけば、他でも上手くいくはず」だと言っていただきました。まさに自治体との共創です。

「楽天が来てうちの地域は変わった」と言われたら本望

――地方創生に真剣に向き合い行動している自治体と、そうでない自治体と二極化が始まっているように思います。

塩沢:まさにその通りです。一生懸命話しても分かって下さらないところもある。でも実は分かってくれる人が、隣の課にいたかもしれない。会えていないのは、こちらの責任です。

柘植:最近は地方創生の必要性を理解している人を見つけやすくなりました。地方創生課ができ、キーマンがいるからです。2回目に伺うと、違う課の人が同席したりします。

この一年でドローンの活用やママ割(月齢を利用したママ向けのサービス)など、住民サービスの提供が増えてきました。地域活性は、住民を巻き込んで商業支援することが究極のかたちだと考えています。個人的には、住民に「楽天が来てうちの地域は変わった」と言ってもらえたら本望です。

Amazon、ヤフー、楽天が連携したエポックメイキング

――7月に福島県産の農林水産品を楽天とAmazon、ヤフーの3モールで販売を開始しましたが、3社連携は今までになかったことです。

塩沢:この3社が揃うのはエポックメイキング。社会的な意義があるからこそ、企業間の枠組みを超えて連携が可能になりました。当社だけで地域課題の解決ができるわけではありません。他社との連携も必要です。競合ではなくて、お互いの強みを生かしていきたいです。

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松島 香織 (まつしま・かおり)

株式会社オルタナ 特約記者。
企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。